前妻との子供に相続させたくない場合

遺言

こんにちは。司法書士の甲斐です。

「前妻との子供と、もう何十年も会っていない。自分は再婚をした為、出来れば前妻との子供に自分の財産を相続させたくない。」

バツイチ男性の方にとってみれば、これは永遠のテーマだと思います。

「前妻との子供に相続をさせたくはない」

あなたにとってみれば、今のご家庭が大切でしょう(でなければ再婚なんてしませんよね?)。

そうであるならば、前妻との子供に一銭も渡したくはない、そう思うお気持ち、非常に良く分かります。

では、相続において実際に前妻との子供に一切の財産を残さないと言う事は可能なのでしょうか?

残念ながら、前妻との子供には「遺留分」がありますので、今の法律ではそのような事は出来ません。

とは言っても、今のご家庭に少しでも多く財産を残されたいと思うお気持ちも強いと思います。

今回はその為の、後々のトラブルを未然に防ぐ方法を解説していきたいと思います。

1.遺留分とは?

遺留分とは、民法第1028条に規定された、兄弟姉妹以外の相続人が持っている、最低限度の相続分です。

その割合は、前妻との子供の場合、その子供の法定相続分×2分の1です。

例えば、相続人が今の妻、妻との子、前妻との子の3人の場合、前妻との子供の相続分は4分の1であり、遺留分は4分の1×2分の1で8分の1となります。

遺留分は遺言によっても侵害する事が出来ません。

その為、「全ての財産を今の妻とその子供に相続させる」と言った趣旨の遺言を残したとしても、前妻との子供は、自己の遺留分を主張する事が出来ます。

しかし、遺留分はあくまで権利者である前妻との子供が主張する事が大前提です。

遺留分権利者が遺留分を主張しない限り、こちから遺留分がある事を説明する必要はありませんし、遺留分に相当する金銭を支払う義務もありません。

その為、相続対策の為に遺留分を配慮した遺言にするべきか否か?と言った点が、もめない相続の為の一つのターニングポイントになります。

2.遺留分に対する考え方

① 遺留分に配慮しない遺言の場合

「遺留分はあくまでその権利者が主張するもの。遺留分を主張された時に、遺留分相当額の金銭を支払えば良いのだから、遺留分に配慮した遺言を残す必要はない。」と言う考え方です。

確かに、この考え方は説得力があります。

主張されるか分からない権利を今から心配しても仕方が無い。

権利を主張された時に対応すれば良い、と言う考え方です。

遺留分を主張出来る事について時効がありますし(民法第1042条)、前妻との子供が遺留分を主張しなければ、今のご家族に多くの財産を残す事は可能です。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)

民法第1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

一見合理的な考え方なのですが、この考え方に重要な問題が含まれている事にお気づきでしょうか?

それは、相続手続きを行うのは、亡くなったあなたではなく、あくまで相続人であるご家族であると言う点です。

つまり、前妻との子供から遺留分の主張をされた場合に対応するのは、あなたのご家族です。

残されたご家族は、きっと良い思いはしないでしょう。

また、「前妻との子供からいつ遺留分の請求をされるかが分からない」と言ったストレスを抱えて、あなたのご家族は日常生活を送らなくてはいけません。

それは非常に問題だとは思いませんか?

② 遺留分に配慮した遺言の場合

それでは、遺留分に配慮した遺言ではどうでしょうか?

つまり、遺言の中で遺留分に相当する金銭等を、前妻との子供に相続させる旨をあらかじめ明記し、さらに遺言執行者を指名しておくのです。

そうすれば、遺言執行者が前妻との子供に連絡を取り遺言を執行してくれます。

また、遺留分に相当する遺産を残す事で、相続トラブルになる事を未然に防ぐ事が出来て、残された家族に迷惑をかける事はありません。

デメリットとしては、

・前妻との子供が主張していないにも関わらず、遺留分に相当する財産を渡してしまう。

・遺留分を金額で指定した場合で自己の財産が大きく増減したら、遺留分も変化するのでその際は遺言を訂正する必要がある。

・専門家を遺言執行者とした場合、その報酬が発生する。
(だいたい、執行する遺産の1%と言うのが多いです。)

と言う事が考えられます。

このようにデメリットがあるのですが、「残された家族を困らせない」と言う点を重要視するのであれば、遺留分に配慮した遺言にすべきなのではないでしょうか?

3.まとめ

遺留分に配慮した遺言にすべきか否か、非常に悩ましい事であり、答えはありません。

しかし、相続対策は何度も申し上げるとおり、「残される家族の為にどうすれば良いか?」と言った視点が重要です。

どのような判断を行うにせよ、ぜひこの視点は忘れないようにして下さい。

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この記事を書いた専門家

横浜市泉区の司法書士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から、自分らしい人生を送る為の認知症対策、相続対策をご提案します。元俳優/福岡県北九州市出身/梅ヶ枝餅、かしわめし弁当が大好き/趣味は講談/

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横浜相続困りごと相談室(司法書士甲斐智也事務所)
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