
こんにちは。司法書士の甲斐です。
「相続対策を相談するのは税理士」
試しにインターネットで「相続対策」と検索すると、多くの税理事務所のホームページが表示されます。
それほど、一般の方のイメージとしても、相続対策=相続「税」対策=税理士と言えるのではないでしょうか?
(本当は相続対策=相続「税」対策ではないのですが・・・。)

税理士は税金のエキスパートであり、相続に関する税金「相続税」に関する相談についても独占業務となっています。
とは言え、
「税金の専門家ではある事は分かるけれど、相談をする事で具体的にどのようなメリットがあるのかが分からない。」
と思っている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、税理士に相続税対策を相談するメリットや、相談をする際の大切な注意点をお話ししていきたいと思います。
1.相続税対策を税理士に相談するメリット
① 相続税の具体的な金額が分かる
税金に関する相談は税理士の独占業務です。
その為、各ご家庭の相続税の金額の具体的な数字を計算する事ができます。
これは、
「相続税がいくらかかるか分からない。」
と、ご不安な方にとっては、とても心強いでしょう。
また、各種特例を見落とす事なく相続税の計算をしてくれますので、余計な税金を支払わなくても済むと言う点も重要です。
さらに、相続税以外でも相続時精算課税制度を利用した生前贈与についても相談・具体的な計算が可能です。
② 土地の適切な評価を行う事ができる
この点も非常に頼りになります。
土地は相続税上、路線価と言う数値を元に計算するのですが、税理士は路線価+各土地の個別事情を考慮し、相続税上適切な評価額を算出する事が可能です。
この作業は一般の方には難しいので、税理士の強みと言えるでしょう。
2.相続対策を税理士に相談する場合のデメリット・注意点
① 相続税の実務に精通していない税理士がいる
実は、税理士と言えど、相続税の実務に精通していない税理士がいます。
どういう事かと言いますと、1年間の相続税の申告件数を全税理士人数で割ると約1.4になります。
つまり、税理士1人あたり年間1.4件しか相続税の申告をしていない事になります。
② 税理士試験には民法が出題されない
相続や遺産分割協議においては、「民法」の規定を基本として行う必要があります。
ところが、税理士試験には民法は出題されていないのです。


え!税理士試験って民法出ないんですか?相続対策=税理士と思っていたので、とっても意外ですね。


アパート経営者や中小企業の社長は顧問税理士との繋がりが強いですから、その流れで相続対策=税理士と言うイメージが強いのでしょう。


ただし、相続の基本はあくまで民法であり、その本質を理解している必要があります。税理士試験に民法がないので、税理士が税金以外の部分でどこまで相談者に適切なアドバイスができるのか、正直微妙なところがあります。
要するに、相続税上適切な遺産分割のアドバイスは出来るかもしれませんが、その他の要素(民法の条文や判例等)を抑える事が出来るのか?と言う点です。
民法は相続を考える上で基本中の基本の法律であり、非常に重要な法律です。
その本質が理解されず「税金」のみの視点で遺産分割協議を語るのは、避けるべきです。
例え、
「このように遺産を分けた方が節税効果が高いですよ。」
とアドバイスされても、その分け方には税金面以外の問題がある可能性がありますので、他の専門家へも相談をした方が良いでしょう。
③ 相続税が課税されないと、出来る事が限られてくる
相続税は非課税枠を超えない限り、申告も納税も必要がありません。
その為、そもそもが発生するぐらいの遺産がない場合、税理士が相談者に出来る事が限られてきます(他の士業の紹介等)。
3.まとめ
繰り返しになりますが、相続税の申告件数は税理士の合計人数と比較して、まだまだ少ない状態で、相続税の実務経験が非常に少ない税理士もいます。
「税金の事だからどんな税理でも良いよね。」
とテキトーな税理士に相談しますと不適切なアドバイスを受け、後々不利益を被る事になります。
税理士に相談する前に、相続税の実績がどれくらい有るのかは、しっかりと確認する必要があるでしょう。