相続等、不動産の登記申請が難しい理由。登記原因証明情報とは?

相続登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

ご自身で何らかの登記申請を行うとした際に法務局に相談を行った時に、

「登記原因証明情報を添付して下さいね。」

と言われた事はありませんか?

一般の方には聞きなれない言葉ですので「一体何の事?」と思われるかもしれませんが、相続等の登記申請を行う場合、登記原因証明情報は基本的な事であり、また非常に重要なものになります。

今回は、その登記において基本中の基本である、「登記原因証明情報」についてお話したいと思います。

1.登記原因証明情報とは?

「登記原因証明情報」とは、

不動産の登記の原因となった事実

又は

法律行為(法律上の権利の発生や変更・消滅などの権利変動を目的とする行為)と、これに基づき現実に権利変動が生じたことを証明する情報
の事を言います。
不動産登記法上、権利に関する登記において、基本的には登記原因証明情報を提供する必要があります。の事を言います。

(登記原因証明情報の提供)

不動産登記法第61条
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

不動産の名義が変更される原因は売買、贈与、相続等様々あります。

また、所有者の住所変更、抵当権設定等、名義変更以外の登記原因も様々あり、法務局がどのような原因(理由)で登記を行うべきかを把握するため、登記申請には基本的に登記原因証明情報の添付が必要とされています。

と、パッと見て非常に難しいような印象を受けますが、あくまで何らかの登記を行う場合、その原因となった事が必ずあります。

その登記の原因となる証明書を登記申請には添付して下さいね、と言うだけのお話です。

それでは具体的に、登記原因証明情報の具体例、種類を見て行きましょう。

2.登記原因証明情報の具体例

① 不動産売買による所有権移転登記

売買を原因として不動産の所有権移転登記を行う場合に、添付する登記原因証明情報は売買契約書等の売主・買主間の契約書等です。

しかし、不動産の売買契約書は登記申請以外で使用する事もあり紛失すると大変な事になる場合があります。

その為、司法書士が登記申請を代理する場合、別途登記原因証明情報を作成する事が一般的です。

【売買による所有権移転登記の登記原因証明情報の例】

登記原因証明情報

1.登記申請情報の要項
(1)登記の目的  所有権移転
(2)登記の原因  平成〇年〇月〇日 売買
(3)当事者
権利者(甲) 山 田 太 郎
義務者(乙) 鈴 木 二 郎
(4)不動産の表示
・横浜市泉区和泉本町123番4の土地 宅地 123㎡
・同所123番地4 家屋番号123番4の建物

2.登記の原因となる事実又は法律行為
(1)売買契約
乙は、甲に対し、平成×年×月×日、本件不動産を売却した。
(2)所有権移転時期の特約
前項の売買契約には、本件不動産の所有権は、甲が売買代金全額を支払い、乙がこれを受領した時に、乙から甲に移転する旨の所有権移転時期に関する特約が付されている。
(3)代金の支払い
甲は乙に対し、平成〇年〇月〇日、売買代金全額を支払い、乙はこれを受領した。
(4)所有権の移転
よって、本件不動産の所有権は、同日、乙から甲に移転した。

平成〇年〇月〇日 横浜地方法務局 〇〇出張所 御中

上記の登記原因のとおり相違はありません。

売 主
(住 所) 横浜市泉区和泉本町123番地4

(氏 名) 鈴 木 二 郎  ㊞

当職は、司法書士法に基づき、上記当事者の依頼を受け、不動産登記法所定の登記原因証明情報を作成し、司法書士法施行規則第28条の規定により記名押印する。

東京都町田市森野二丁目1番8号
司法書士  甲 斐  智 也  ㊞
(登録番号  東京司法書士会 第8274号)

・売買による所有権移転登記を申請する場合の登記原因証明情報は、不動産登記法上、不動産の売主名義で作成すれば大丈夫です。

しかし、司法書士事務所によっては事務所の方針として、買主名義の登記原因証明情報を作成し、署名押印をお願いしている場合があります。

・売買契約書は原本還付が出来るのですが、上記の登記原因証明情報は登記申請の為だけに作成する書類です。

その為、上記の登記原因証明情報は原本還付を請求する事はできません。

・不動産の売買契約書を登記原因証明情報として登記申請の添付書類としても構いません。その場合は、所有権移転の時期にご注意下さい。

所有権移転の時期を売買契約の時ではなく、売買代金全額を支払った時期とする場合、その売買代金全額を支払った事を証明する資料の添付が別途必要になります。
(具体的には売買代金の領収書等がこれに該当します。)

② 相続による所有権移転登記

相続・遺産分割協議

相続人が一人の場合や、遺産分割協議で不動産を相続する相続人を決めた場合、相続登記を行う為の登記原因証明情報は遺産分割協議や遺産分割協議証明書になります。

不動産を含めた全ての遺産を含めた遺産分割協議書を使用しても構いませんし、不動産だけが書かれた遺産分割協議書を作成しても大丈夫です。

【相続による所有権移転登記の登記原因証明情報の例】

遺産分割協議書

下記の者の死亡により開始した相続につき共同相続人全員は、その相続財産について次のとおり遺産分割の協議を行い確定した。
なお、被相続人 山田一郎 には、私共の他に相続人は存在しない。

被相続人の氏名   山 田 一 郎
本  籍  地 神奈川県横浜市泉区和泉本町123番地
死 亡 年 月 日   平成〇年〇月〇日

第1  相続財産中、次の不動産については次の者の所有とする。

山田 二郎

所    在  横浜市泉区和泉本町
地    番  123番4
地    目  宅地
地    籍  123㎡

所    在     横浜市泉区和泉本町123番地4
家  屋  番  号      123番4
種    類     居宅
構    造     木造スレート葺2階建
床  面   積      1階   52.99㎡
2階   52.99㎡

第2 本協議書に記載のない遺産及び後日遺産が発見された場合は、当該遺産について、相続人間で改めて協議し、分割を行うものとする。

以上の協議を証するため、この協議書を作成し各自署名押印する。

平成〇年〇月〇日

相続人

住  所 横浜市泉区和泉本町123番地4

氏  名 山 田 二 郎  実印

相続人

住  所 横浜市泉区戸塚台二丁目2番2号

氏  名 山 田 花 子  実印

遺言

遺言による所有権移転登記を行う場合、遺言書を添付して相続登記を行います(遺言のコピーを添付すると、遺言原本は登記完了後返却してもらえます)。

なお、遺言による所有権移転登記は有効な遺言が存在する事が大前提です。

その為、売買による所有権移転登記のように別途登記原因証明情報を作成して登記申請を行う事はできません。

登記申請には必ず遺言の原本を添付する必要があります。

また、遺言が自筆証書遺言の場合、相続登記を行う前提として家庭裁判所での検認の手続きが必要になります。

3.まとめ

その他、贈与による所有権移転登記、不動産所有者の住所変更登記を行う場合、借り入れを行い抵当権設定登記を行う場合等、登記申請を行う場合、基本的に登記原因証明情報を添付する必要があります。

どの登記申請にどのような登記原因証明情報を添付するかは、法令によって細かく決まっております。

また、その時の関係者の方や法律関係の状況により、複雑な登記原因証明情報を作成しなくてはいけない場合もございます。

このような登記申請の事でお困り、お悩みの場合はお気軽にご相談下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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