相続税対策における生前贈与とは?

相続対策・認知症対策

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、相続税対策の一つである生前贈与についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

※平成28年12月22日現在の法律をもとに記載しています。

1.贈与とは?

贈与とは、当事者の一方が、自分の財産を無償で相手方に与える意思表示を行い、相手方が承諾する事で成立する法律行為です(民法第549条)つまり、

「これ、タダであげるよ」「ありがとう。いただくよ」と、これだけで成立します。

書面の作成は贈与契約の要件とはされていないのですが、書面によらない贈与はいつでも撤回ができますので(民法第550条)、お互いの意思を明確にする為には、きちんと贈与契約書を作成した方が良いでしょう。

2.贈与契約書のサンプル

 

贈 与 契 約 書

贈与者 鈴木 一郎(以下「甲」と言う。)は、受贈者 田中 太郎(以下「乙」と言う。)と下記条項により贈与契約を締結した。

第1条 甲は、現金100万円を乙に贈与し、乙はこれを受諾した。

第2条 甲は、第1条に基づき贈与した現金を、平成〇〇年〇月〇日までに、乙が指定する銀行預金口座に振り込むものとする。

上記契約が成立した証として、この贈与契約書を2通作成し、甲乙が署名押印の上、甲乙双方が各1通を保有するものとする。

平成〇〇年〇月〇日

(甲) 住 所 横浜市泉区中田中央南一丁目2番3号

    氏 名 鈴木 一郎 ㊞

(乙) 住 所 横浜市泉区中田弥生町54321番地

    氏 名 田中 太郎 ㊞

⑴ 財産をあげる方を「贈与者」、財産をもらう方を「受贈者」と表記します。
⑵ どのような財産を贈与するのか、財産の特定をきちんと行います。
⑶ 印鑑は法律上のきまりはありませんが、実印の方が良いでしょう。

3.生前贈与が相続税対策として利用されている理由

生前に行われる贈与、「生前贈与」は、相続税対策としてもっともポピュラーに利用されています。

相続税は正味の相続財産に対して課税されるのですが、事前(生前)に自己の財産を推定相続人に贈与しておくと、結果として相続が発生した際の財産が少なくなるので利用されているのがその理由です。

この生前贈与は大きくわけて2種類の制度があります。

① 暦年課税制度

いわゆる普通の贈与です。

1月1日から12月31日の1年間に、個人から贈与を受けた財産の合計額が、贈与税の基礎控除額110万円を超える場合には、その超える部分の価格に対して10%から55%の税率で贈与税がかかります。

例えば、自己の財産3,000万円を推定相続人3人に100万円づつ合計300万円を、10年間かけて贈与すると贈与税が全く発生せず、かつ相続時の財産を3,000万円減少させる事ができるのです。

なお、基礎控除の額が少ないので、全く贈与税を発生させないようにするには、それなりの年月が必要になります。

② 相続時精算課税制度

親から子への生前贈与による財産の移転を後押しし、子どもの世代に消費をしてもらい景気を活性化させると言う目的で創設されたのが、相続時精算課税制度です。

この制度を利用する場合、税務署へ届け出る必要がありますが、60歳以上の親又は祖父母から20歳以上の子または孫への贈与について、累計2,500万円までは贈与税がかかりません。

2,500万円を超える部分については、一律20%の税率で贈与税がかかります。

そして相続が発生した時には、この制度を受けて贈与を受けた金額については、例え何年前の贈与であっても、相続財産に含めて相続税を計算します。

なお、贈与税を支払っている場合は、相続税から差し引きます。

文字通り、贈与の時には2,500万円まで課税しないが、「相続時」に「精算」する制度です。

【相続時精算課税制度の注意点】
・贈与の時に贈与税がかからなくても、相続の時に相続税がかかります。原則として相続税の節税にはなりません。

・受贈者ごと、かつ贈与者ごとに相続時精算課税制度を利用するかしないかについて選択する事ができます。ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦課税制度には戻れません。

・贈与時の価格で相続時の相続税を計算しますので、価格が変動する財産について、贈与時より相続時に価格が下がってしまった場合でも、贈与時の高い価格で相続税を計算しなてくはいけません(逆のパターンもあります)。

・孫への相続時精算課税制度による贈与は、相続税の2割加算の対象になります。

4.贈与税の特例

① 贈与税の配偶者控除

婚姻期間20年以上の配偶者にマイホームを贈与した場合に、2,000万円まで贈与税を非課税とする制度です。

さらに、この制度による贈与については、相続税の対象とはなりません(通常の贈与は、相続開始前3年以内のものについて、相続税の対象となります)。

② 住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度

20歳以上の子や孫がマイホームを購入したり、自宅をリフォームする場合に、父母や祖父母がその資金を支援することができる制度です。

床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅が対象となる住宅です。

また、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下の方がこの制度を利用できます。

非課税となる部分は、マイホーム購入の契約をした時期によって変わりますが、省エネ・耐震住宅は1,200万円~800万円、それ以外の住宅は700万円~300万円となります。

③ 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度

祖父母から30歳未満の孫へ教育資金を一括で贈与した場合には、孫1人につき1,500万円まで非課税とする制度です。

なお、上記①~③の適用を受けるためには、贈与税の申告を行う必要があります。

5.生前贈与の注意点

注意点はただ一つ、「贈与の証拠をきちんと残しておく」事です。

家族間の贈与ですので、口約束であったり、あげたつもり、もらったつもりになりがちですが、税務署からあらぬ誤解をうけないためにも、きちんと贈与契約書を残すようにしましょう。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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