相続税が安くなる各種控除制度

相続・家族信託の専門家

こんにちは。司法書士の甲斐です。

平成27年から相続税の基礎控除額が大幅に減額され、また税率も最大で55%になる改正がされました。

これによって課税対象者は今までの1.5倍になると言われており、

「自分の遺産にも莫大な相続税が発生するのではないか?」
「税率が55%なのだから、遺産の半分以上を税金として持っていかれるのではないか?」

と心配されている方も多いかと思います。

しかし、実際には、資産家でもないごく普通の家庭であれば、相続税がかかる可能性は低いですし、仮に相続税の納付義務が発生したとしても、その金額は数十万~数百万です。

その理由は、実は相続税には様々な控除制度があり、相当の資産家ではない限りは、相続税はかからない様になっているからです。

今回は様々な相続税の控除制度を解説したいと思います。

※この情報は平成28年8月現在の法令を元に作成しております。

1.相続税の計算方法

相続税の様々な控除制度の解説の前に、そもそも相続税の計算はどうやって行われるのかを、簡単にですが記載してみたいと思います(参考:国税庁ホームページ)

【事例】
夫が亡くなり、相続人は妻と子供の二人のみ。
○相続財産
・自宅(土地・建物)4,000万円
・預貯金 3,000万円
○負債 なし
○葬儀費用 200万円

遺産分割協議で、自宅を妻が、預貯金を子供が相続するとした場合の相続税です。

① 正味の遺産額を計算する

正味の遺産額は、遺産の総額から控除できるものを控除した後の金額です。本事例で当てはめますと、
7,000万円(遺産総額)-200万円(負債+葬儀費用)=6,800万円(正味の遺産額)

② 相続税の総額を決める

次に相続税の総額を算出します。まずは課税する遺産の総額を算出します。計算方法は、正味の遺産額ー相続税の基礎控除額です。

6,800万円(正味の遺産額)-4,200万円(基礎控除額)=2,600万円(課税遺産総額)

※基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の人数 × 600万円)平成27以後の相続

次に各相続人が法定相続分で取得したものとして相続税の総額を算出します。

妻:2,600万円(課税遺産総額)×2分の1=1,300万円
子:2,600万円(課税遺産総額)×2分の1=1,300万円

この額に相続税の税率をかけます(相続税の税率は国税庁ホームページ等を参照して下さい)。

妻:1,300万円×15%ー50万円=145万円
子:1,300万円×15%ー50万円=145万円
よって、相続税の総額は290万円となります。

③ 各相続人の税額を計算する

上記の相続税の総額を計算した後に、実際に各相続人が支払う税額を計算します。その計算式は下記のとおりです。

相続税の総額 × それぞれが相続する金額 ÷ 正味の遺産額

これを今回の事例に当てはまますと、

妻:290万円 × 4,000万円 ÷ 6,800万円 = 170.5万円
子:290万円 × 3,000万円 ÷ 6,800万円=127.9万円

これが、各相続人が納付すべき相続税の金額なのですが、上述したとおり相続税には様々な控除制度があり、この金額からさらに安くなる、場合によっては相続税がゼロになる事もあるのです。

2.相続税の各種控除制度

① 配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により取得した正味の遺産額が、1億6,000万円若しくは配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかからないという制度です。

この制度の趣旨は、遺産と言うのは夫婦が協力して築き上げたものであるから、その半分は配偶者のものである、という趣旨です。

なお、法律上の配偶者である事が必要な為、いわゆる内縁関係の配偶者にはこの制度の適用はできません。

② 小規模宅地等の特例

被相続人と同居していた家族が、被相続人名義の自宅を相続した場合、その土地(330㎡以内)の評価額を80%まで下げる事ができる制度です。

簡単に言えば、自宅の土地に1億円の価値があったとしても、相続税の計算上、2,000万円としてみなされる制度です。

注意点は、あくまで「同居していた」事が前提です。そして被相続人の子供が自宅を取得した場合、相続税の申告期限までその土地を所有し、かつ自宅に居住している事が必要になります。

③ 相続時精算課税制度による贈与税額控除

相続時精算課税制度を利用した贈与は2,500万円まで非課税となり、2,500万円を超える部分については、一律20%の税率で贈与税が課せられます。

この制度を利用して贈与税を支払った場合は、相続税額から贈与税額を控除する事ができます。

④ 未成年者の税額控除

相続人が未成年者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引く制度です。

具体的な控除額は、
(20歳 ー 相続開始時の年齢)× 10万円となります。

⑤ 障がい者の税額控除

相続人が85歳未満の障害者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引く制度です。

具体的な控除額は、
(85歳 ー 相続開始時の年齢) × 10万円となります。

なお、1級または2級の特別障がい者の場合は、10万円の部分が20万円に増額されます。

その他にも、様々な控除制度があります。

3.まとめ -相続税対策は焦らない-

以上の各種控除を本事例に当てはめた場合、妻の納付額はゼロになり、子は各種の控除制度が利用できなくても127万円です。

実際には小規模宅地等の特例が利用できる場合、事例よりもはるかに課税総額が少なくなり、相続税がゼロになる可能性もあります。

その為、TVや雑誌等で「今まで関係がなかった人にも相続がかかる」と煽り、相続税対策の特集として、アパート経営や投資用マンションの購入を進めている場合がありますが、上述したとおり、ごく普通の家庭では相続税がかからないケースが大半ですので、良く情報を集めて相続税対策は行うようにして下さい。

なお、基礎控除以外の各種控除制度を利用して結果的に相続税の納付義務がなくなったとしても、相続税の申告は必要ですので、ご注意下さい。

この場合、必ず税務署や税理士にご相談するようにして下さい(なお、税務署側からは親切に控除制度の説明はしませんので、皆様の方から、『この控除制度を利用したい』と伝える様にして下さい)。

もし親しい税理士がいない場合、当事務所で信頼できる税理士をご紹介できる場合がございますので、相続一般的なご相談と併せてお気軽にお問い合わせください。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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