
こんにちは。司法書士の甲斐です。
被相続人が亡くなり相続が開始すると、色々な手続きが必要となりますが、その中で一番大変なのが被相続人の財産を誰が取得するかを話し合う「遺産分割協議」です。
この遺産分割協議をきちんとまとめる事が出来れば、後は各財産を遺産分割協議のとおり名義変更するだけなのですが、ここでちょっと考えて頂きたいのです。
そもそも、「相続財産」とは何なのでしょうか?不動産や預貯金は相続財産となるイメージはあると思うのですが、それ以外の財産はどうでしょうか?
さらに、相続財産の中に、遺産分割協議の対象とならない財産があるのをご存知でしょうか?
この「相続財産」「遺産分割対象財産」をしっかりと理解していないと、せっかくまとまった話が全く意味がない事になります。
今回はこの「相続財産」「遺産分割対象財産」について解説していきたいと思います。
1.相続財産
⑴ 遺産分割の対象である財産
まずは相続財産でかつ、当然に遺産分割の対象となる財産です。
・不動産
・不動産賃借権(公営住宅の使用権は除く。最一小判平成2.10.18)
・現金、預貯金
・株式
・公社債
・投資信託(投資信託の内容によっては、可分債権となり遺産分割の対象とならないと言う説もあります。ただし、その場合でも相続人全員の合意があれば遺産分割の対象とする事は可能です。)
・ゴルフ会員権(例外あり)
・知的財産権
・一般の動産類
⑵ 遺産分割の対象ではない財産
原則、遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員の合意で遺産分割対象財産とする事が出来る財産です。
・可分債権(文字通り「分ける事が出来る」債権です。貸金や不法行為に基づく損害賠償請求権等)
・被相続人の借金(ただし、遺産分割の対象としても、それを債権者に対抗する事は出来ません。別途債権者の合意が必要です。)
2.相続財産ではない財産
⑴ 原則、遺産分割の対象ではない財産
原則、遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員の合意で遺産分割対象財産とする事が出来る財産です。
・代償財産(遺産から転化した財産です。例:遺産である建物が火災により消滅した場合の、火災保険の請求権)
・遺産から生じる果実・収益(例:遺産分割協議までに生じた、投資用不動産の家賃収入)
・遺産の管理費用、葬儀費用
⑵ 相続人の合意でも、遺産分割の対象に出来ない財産
各相続人の固有の財産となります。
・遺族給付(遺族年金等)
・生命保険
・祭祀財産、遺骨
3.預貯金の取り扱いの判例変更
判例上、預貯金(普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権)は金融機関に対する可分債権のため、相続人全員の合意がなければ遺産分割の対象とならないとされていました。
しかし、判例変更により(最大決平成28.12.19)遺産分割の対象となりました。
※ただし、あくまで預貯金だけです。他の可分債権は今までと同様に、相続人全員の同意がなければ、遺産分割の対象とはなりません。
4.まとめ
以上、被相続人が残した財産が相続財産なのか、遺産分割の対象となる財産なのかはキチンと理解していないと、せっかく行った遺産分割協議が無効になる可能性があります。
十分ご注意の上、もし該当の財産が相続財産なのか、遺産分割対象の財産なのかが分からない場合は、お近くの専門家にご相談する事をお勧めします。