相続登記を省略して贈与できるか?


こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、相続登記を省略したい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
私は10人兄弟の長男です。

先月、私の兄弟の四男が亡くなりました。四男には妻も子供もおらず、相続人は我々兄弟だけです。

四男は、ある不動産の持分10分の1を取得していました。

残りの10分の9は、四男の友人名義となっています。

私はこの四男の持分10分の1を、この友人に贈与したいと考えているのですが、相続登記を行わず、贈与を行う事は可能でしょうか?

理由は、我々兄弟の中に、四男以外に既に亡くなっている者もおり、その子供達が何人いるのか分からない状態です。

また、生きている兄弟についても疎遠になっている者もおり、とても遺産分割協議ができない状態となっているので、何とか相続登記を省略したいと考えております。

それが難しいようであれば、面倒なので、このまま放置したいのですが、それで問題は無いでしょうか?

【回答】
結論から先に申し上げますと、相続登記を省略する事はできません。

法定相続分で相続登記するか、もしくは遺産分割協議、その登記を行い、贈与による持分の全部移転登記を行う必要があります。

 

1.登記を省略できない理由

不動産登記の目的の一つとして、不動産ごとの権利変動の過程の情報を一般公開する事が挙げられます。

物権(物に対する権利の事です。所有権や抵当権等)の変動について正しく示すことにより、その不動産について調査が可能となり、その結果、安心して不動産取引を行う事ができます。

この趣旨から、物権変動の過程の登記は省略する事は原則できません。

その為、今回の事例では、贈与による持分の移転登記を行う前提として、相続登記を行う必要があります。

 

2.相続人の確定方法

本事例は相続登記を省略できませんので、原則通り相続人を確定して、遺産分割協議を行う必要があります。

なお、本事例では兄弟の中で亡くなっている者がおり、その子供が何人いるのか不明、さらに疎遠になっている兄弟がどこに住んでいるのかが分からないと言ったケースです。

このような「どこにいるのかが分からない相続人」に対して連絡を取る方法は下記のとおりです。

①被相続人の死亡時から出生まで遡って全ての戸籍、除籍(改製原戸籍)謄本を取得する。
②被相続人の戸籍の中に出現した兄弟の中で、亡くなった者や連絡が取れない者の最新の戸籍を取得する。
③上記の該当者の最新の戸籍を取得できたら、戸籍の附票を取得する。
④上記の戸籍の附票には、住民票上の住所が記載されているので、その住所宛てに事情を記載した書面を郵送する。

上記を行い、相続人全員と連絡を取り、遺産分割協議を行うのが一般的な流れです。

しかし、兄弟である被相続人の戸籍を取得する事は、他人の戸籍を取得する事となります。

この他人の戸籍を取得する事(第三者請求と言います)に関しましては、請求者と請求する戸籍に係る方との関係、請求の理由や目的を具体的かつ明確にする必要があります。

この要件をクリアーできなければ、戸籍が交付されない場合があります。

 

3.相続登記を行わず、このまま放置しても良いか?

相続税の納付は別として、相続登記を放置したからと言って、法律上の制裁はありません。

ただし、今回の事例は、現状でさえ相続登記を行うのに非常に困難な状態であり、これを放置すると残された者はもっと大変な状況に陥ります。

(持分の10分の9を取得している友人が亡くなった場合、権利関係がさらに複雑となり、相続登記が不可能な状態になります。)その為、早目の相続登記をお勧めします。

 

4.まとめ

本事例のように、相続人が何人いるのか、どこにいるのか分からないケースは戸籍を集めるだけでも非常に手間がかかります。

相続人の居場所が判明したとしても面識が無い方に対して、どんなに事情を細かく記載した、丁寧な文章の書面を郵送しても、新たな紛争に発展する可能性もゼロではありません。

司法書士は相続登記のご依頼を承った場合、相続人の方全員の戸籍を取得する事が可能です。

また、疎遠になっている相続人や全く面識が無い相続人の方に事情を説明した文書を郵送し、遺産分割協議のご協力についてお願いし、調整する事も可能です。

相続人の中に疎遠の方や全く面識が無い方がいらっしゃる等、お困りの場合はお気軽に当事務所へご相談下さい。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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