相続でも良くある、私道持分の登記がもれていた場合の対応方法

不動産登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

売買や相続等を原因として不動産を取得した場合、後々のトラブルを防ぐ為、全ての不動産について、その登記も変更するのが通常です。

(不動産の権利は売買や相続等で移転しますが、登記は勝手に変わらないので、別途登記申請を行う必要があります。)

ところが、全ての不動産の登記申請を行ったと思ったら、登記申請をし忘れすれて、何十年も経過している事が現実にあるのです。

今回は、そのような何十年も登記申請を放置した場合、どのようにすれば良いかと言うお話しです。

【事例】
Q:先月亡くなった父の自宅の相続手続きで問題が発生しました。

自宅の相続手続きの為に法務局で登記事項証明書を取得したところ、自宅の目の前の私道について、父の持分の登記がもれていたのが分かったのです。

当時の自宅の売買契約書には、私道も売買の対象となっていましたので、単純に登記がもれていただけだと思います。

しかし、当時の売主は既に亡くなっており、またその相続人もどこにいるのかが分かりません。

不動産屋に確認したところ、「今後売却をする事等を考えた場合、私道持分の無い住宅はまず売れない」と言われ、大変困っています。

私道持分を登記する何か良い方法はないでしょうか?

A:登記手続きを行う為の裁判をするか、他の住民の持分を少し買い取る等の方法があります。

1.私道とは?

私道とは、個人または団体が所有している土地を道路として使用している区域のことです。

国や地方公共団体が管理する道路である公道(公衆用道路)に対する概念です。

図で解説していきましょう。


大きな土地を分譲し販売する際に、その中央部分を道路(私道)とする事があります。

建築基準法では、「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない。」 と言う規定があるのがその理由です。

この私道、通常はそこの住民が通行等で利用する為、当然ながら売買の対象となります。

その為、上記の図のような住宅であれば、住民(AからF)が私道の持分を6分の1ずつ取得し、登記もされます。

しかし、昔(昭和の時代)は不動産の売買について結構いい加減なところもあり、私道の持分の登記がもれている事が良くあります。

私道持分が無ければ、他の住民に私道を利用する権利を対抗する事が出来ず、また自宅の売却が困難になる事もありますので、早急な対応が求められます。

2.もれていた私道持分の登記を行うには?

① 裁判による方法

登記がもれていたと言う事は、恐らく今でも私道には当時の売主の持分があるはずです。

そこで、当時の売主の相続人に対し登記訴訟を提起して、その判決書を元に私道の持分登記を行うと言う方法が考えられます。

売買のような登記手続きは、本来売主と買主が共同して行うものですが、

「被告は原告に対し、昭和〇〇年〇月〇日売買を原因とする(売主の名前)持分全部移転登記をせよ」

と言うような主文の判決書を登記申請の添付書類とする事により、買主単独で登記申請を行う事が可能となります。

なお事例のようにどんなに調べても相手がどこにいるか分からない場合、「公示送達」と言う特殊な方法で裁判を行う事が可能です。

【メリット】
・証拠さえあれば、比較的短期間で訴訟が終了し、そのまま登記を行う事が出来る。

【デメリット】
・手続を自分で行わず、弁護士や司法書士に依頼するとお金がかかってしまう(ただし、司法書士に訴状等を作成してもらい裁判は自分で行えば、費用の節約にはなる)。

② 他の住人から持分を少し買い取る方法

私道に関して少しでも持分があれば、その私道を利用する権利を対抗する事が出来ます。

その為、他の住民の方から私道持分を少し買い取ると言う方法も考えられます。

【メリット】
・金額の折り合いさえあれば、裁判より早く問題が解決する。

【デメリット】
・金額の折り合いがつかない場合があり、近隣住人との交渉が困難になる事がある。

3.まとめ

おそらく今までは事実上その私道を利用出来ていたのですが、登記を行っていない限り、その権利を他の住民のような第三者に対抗する事は出来ません。

その為、上記に挙げた方法を用いて、出来るだけ速やかに私道持分の登記を行うようにしましょう。

当事務所では登記に関連する裁判手続きも行っております。

私道持分の登記についてお困り、お悩みの場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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