相続登記をしない場合の様々なデメリットとは?

相続登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、不動産を相続により取得したけれど、相続登記を行っていない方向けの記事です。

【事例】
Q:私は横浜に住んでいるのですが、自宅を数年前に父から相続しました。

相続による名義変更は行っていないのですが、固定資産税の納税通知書も毎年私名義で届いておりますし、名義を変えない事による不都合を特に感じていません。

その為、相続登記は行わないつもりでいますが、何か問題になる事はあるのでしょうか?

A:相続登記を行わない事によるデメリットは沢山あります。

相続登記を先延ばしにすればするほど、その手続きが困難になり、費用も通常の相続登記と比べて数倍に跳ね上がります。

1.相続登記は法律上の義務があるのか?

被相続人が亡くなり相続が開始し、相続人間で遺産分割協議が調えば、後は各遺産について名義変更を行います。

預貯金について銀行から書類を取り寄せて相続手続きを行った方がいらっしゃるかもしれませんが、不動産に関しても、相続による所有者の名義変更の手続きが存在します。

これを「相続登記」と呼ぶのですが、この相続登記、法律上の義務はあるのでしょうか?

つまり、不動産の所有者が亡くなった場合、必ずその名義を変更しなくてはいけないと言う法律です。

実は、法律上、相続登記は義務付けられていません。

その為、自宅を相続した相続人がそのまま自宅に住み続けた場合、特に不便さを感じないので、そのまま相続登記を行わない事が多々あります。

法務局の職員や弁護士でさえ、「相続登記なんてやらなくても全然問題ないんですよ」と言ってしまう事があります。

しかし、相続登記を行わない事によるデメリットは、下記のとおり沢山有るのです。

2.相続登記を行わないデメリット

かつて「家」と言うのは先祖代々長男が相続して守るべきものとされていました。

しかし現代では、各家族がそれぞれ独立して生活をしており、先祖代々の家を相続して守っていくと言う感覚が無くなってきています。

そうなれば最終的に被相続人が住んでいた自宅は誰も住まなくなり、売却等の処分を考えなくてはいけない時が来るかもしれません。

その時に、自宅の名義が被相続人のままであれば、売却を行う前提として相続登記を行う必要があるのですが、ここで大問題が発生する場合があるのです。

大問題その1 気がつけば相続人がすごい人数になっていた

自宅を相続した相続人も当然にいつかは亡くなります。

相続人が亡くなった場合、その相続人が自宅を相続した相続人の地位を引き継ぐ事になります。

簡単に言ってしまえば、相続登記を行わず放置していると、相続登記に必要な遺産分割協議書に実印を押してもらう人数が、気がつけば何十人になってしまう事があるのです。

私の事務所に良くご相談があるケースで言えば、相続人が最低でも7人、最高で25人と言うケースがありました。

ここまで相続人の人数が増えますと、当然面識が全く無い相続人がいますし、そのような状況で、円滑に遺産分割協議を行う事はほぼ不可能であり、結果として裁判を行ってようやく相続登記が出来る、と言う時間も手間もかかる状況になります。

なお、このような複雑な権利関係の相続登記の場合、当然司法書士報酬も通常金額と言うわけにはいきません。

状況によっては数倍の報酬をお願いする事があります。

大問題その2 相続人が認知症になった

相続人が亡くならなくても遺産分割協議が出来なくなる場合もあります。

被相続人が亡くなった時は元気だった相続人が、相続登記の為に遺産分割協議を行おうとした所、相続人の一人が認知症になり、そのままでは遺産分割協議が不可能なる事もあります。

遺産分割協議の為に、後見の申立てを行って家庭裁判所から成年後見人を選任してもらって・・・と言った手間と時間がかかってきます。

大問題その3 気が変わったと他の相続人が言い出した

口約束で「自宅は相続しても良いよ」と言っていた相続人が、突然自分の相続分を主張してくる場合があります。

こうなってしまえば任意の話し合いは不可能で、遺産分割調停や審判に頼らざるをえません。

大問題その4 勝手に抵当権を設定された

実は相続登記は法定相続分であれば、相続人の一人が単独で行う事ができます。

この制度を利用すると、ある相続人が法定相続分で登記をして、自己の持分に抵当権を設定すると言う事も可能なのです。

持分に抵当権が設定された場合、その後の債権者との交渉に、非常に労力がかかる事になります。

大問題その5 火災保険等に加入できない

保険会社によっては、自宅の火災保険加入の条件として、きちんと相続登記が行われている事を挙げている会社があります。

相続登記を行っておらず、上記のような相続登記を困難とさせる事情が生じた場合、保険に加入する事が難しいかも知れません。

3.まとめ -ご自分の財産にはきちんと責任を持ちましょう-

預貯金の場合は相続手続をきちんと行う相続人がほとんどなのですが、不動産の場合はそのまま放置すると言うのは非常に不思議な現象です。

しかし、相続登記を行わないデメリットは上述したとおり沢山あります。

手続きに何も問題がない、手間も時間もかからない今すぐに相続登記を行う事をお勧めします。

なお、当事務所は相続登記に関しまして全国どこの法務局でもオンラインで申請出来る環境が整っています。

神奈川県以外の方でも、相続登記にお困り、お悩みの場合は当事務所にお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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町田・横浜FP司法書士事務所
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