議論が進んでいる相続登記の義務化について解説します

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こんにちは。司法書士/2級FP技能士の甲斐です。

ふとインターネットを見ていましたら、このようなニュースが流れてきました。

相続登記を義務化へ 罰則検討、手続きは簡素化
法務省の法制審議会(法相の諮問機関)が年内にまとめる所有者不明土地対策の原案が分かった。不動産を相続する人が誰なのかをはっきりさせるため、被相続人が亡くなった際に相続登記の申請を義務付ける。手続きを

相続登記の義務化は今までも議論されており、いよいよ本格的に始動しつつあるのですが、その内容については実際の議論の内容(法務省の法制審議会の資料)を良く見てみないと、正直なところは分かりません。

報道ではどうしてもザックリとした説明になってしまいますので、今回は法制審議会の資料を参考に、相続登記の義務化等について、より具体的で分かりやすいお話をします。

※今回のお話はまだ法制審議会で議論中のお話しであり、確定した内容ではありませんのでご注意下さい。

1.相続登記について

① 相続登記の義務化

現在の法律では、不動産の所有者に相続が発生したとしても相続登記の申請は義務とされていません。

しかしその結果、日本全国で所有者が不明な土地が九州の面積を超えており社会問題となっています。

この問題を解決する為に、相続登記の申請を義務化する内容で議論が進んでいます。

具体的には下記のような内容で調整がされています。

① 不動産の所有者が死亡し、その不動産を相続により取得した相続人は、原則として一定の期間内に相続登記を申請しなくてはならない。
② 不動産の所有者が死亡し、その不動産を遺言により取得した相続人等は、原則としてその不動産の取得の事実を知った日から一定の期間内に、相続登記や遺贈による所有権移転登記を申請しなくてはならない。

なお、上記の登記申請義務を違反した場合、つまり、登記申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのに所定の期間内にその申請をしなかった時は、一定の額の過料に処する旨の規律を設ける事が検討されています。

過料・・・行政上、軽い禁令をおかしたものに支払わせる金銭の事。いわゆる「刑事罰」では無いので前科にはなりません。

② 相続登記の簡略化

上記の相続登記の義務化と併せて、相続登記申請手続きの簡略化も検討されています。

⑴ 遺贈による所有権移転登記手続きの簡略化

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、被相続人が遺言の中で「(不動産)を〇〇に遺贈する」等と記載した場合の登記申請手続きの事だと思って下さい。

「相続させる」のではなく、「遺言により贈与」の意思表示の事です。

この場合の登記申請手続きは相続人全員を義務者、不動産を取得する者(受遺者)を権利者として共同で手続きを行う必要があります。

(遺言執行者がいれば、遺言執行者と受遺者の共同申請です。)

このように、通常の相続では不動産を取得した相続人が単独で申請できるのですが、「遺贈」の場合は共同申請となり手続きが煩雑になります。

しかし、受遺者が相続人である場合、実質的には「相続させる遺言」と同じであり、このような場合でも共同申請を貫くのは不合理です。

その為、相続人が受遺者である場合に限って、遺贈による所有権の移転の登記申請は、登記権利者である受遺者が単独で申請することができるように検討されています。

⑵ 法定相続分で相続登記がされた後の登記手続きの簡略化

不動産の所有者に相続が発生した場合、一般的には遺産分割協議後(もしくは遺産分割調停等)、相続登記申請が行われます。

しかし、様々な事情から先に法定相続分による登記申請を行い、その後遺産分割協議等が終わった時に、不動産を相続する事になった者へ名義を変える為の登記手続きが行われる場合もあります。

この場合の手続きは、不動産を取得しなかった相続人を義務者、不動産を取得した者を権利者とし、遺産分割協議等を原因とする共同申請で行う必要があります。

これも相続人が遺贈で不動産を取得した場合と同様に不合理な結果となりますので、不動産を取得した登記権利者が単独で申請することができるよう検討されています。

2.土地所有権の放棄について

土地所有権の放棄の手続きは、相続による所有者不明土地の発生を抑制するための施策の一つです。

適切な管理が難しくなった土地の所有者が土地を手放し、管理能力のある公的機関に帰属させる仕組みとして、土地所有権の放棄を可能とする制度を創設することが検討されています。

土地の所有者に相続が発生した場合、相続人は法律上、相続放棄を行う事でその土地を相続しない事が可能になります。

では相続放棄以外の場合で土地の所有権を放棄できるのでしょうか?
(つまり、一度土地を取得した後での土地所有権の放棄です。)

実は法律(民法)上、不動産の所有権放棄についての規定はなく、最高裁判例もないことから、所有権の放棄が出来るかどうかは明らかではありません。

その為、管理不全土地の発生を予防し、所有者不明土地の発生を抑制する事を目的として、民法以外の法律において、別途土地の所有権放棄に関する規律を設けることが検討されています。

具体的には、土地の所有者は下記に掲げるような要件を全て満たすときは、土地の所有権を放棄することができるとする様、議論が進んでいます。

① 土地の権利の帰属に争いがなく筆界が特定されていること。
② 土地について第三者の使用収益権や担保権が設定されておらず,所有者以外に土地を
占有する者がいないこと。
③ 現状のままで土地を管理することが容易な状態であること。
④ 土地所有者が審査手数料及び土地の管理に係る一定の費用を負担すること。
⑤ 土地所有者が,相当な努力が払われたと認められる方法により土地の譲渡等をしよう
としてもなお譲渡等をすることができないこと。

なお建物に関しては所有権放棄の規定は設けないようになっています。

建物は放置すると老朽化し、その状態を維持するためには定期的なメンテナンスが必要となり、土地以上に管理コストがかかる場合が多い事から、権利帰属先の負担が大きい為です。

3.遺産分割協議に関する事

民法における遺産分割に関する規定も見直しがされています。

主なポイントとしては、遺産分割協議の期間制限です。

現状の法律では、遺産分割の期限はありません。

被相続人が亡くなってから何年後でも遺産分割協議は可能なのですが、それが所有者不明土地の原因の一つとなっています。

(※ただし、相続税の申告・納税は期限があります。)

その為、遺産分割協議や遺産分割調停の申し立てに期限を定め、その期限を越えた場合は、

・特別受益又は寄与分の主張を行う事が出来ない。
・上記の期間が経過した場合、各相続人は法定相続分に従って遺産を取得する(つまり、各遺産が完全に相続人の共有状態になる)。その共有状態を解消する為には、共有物分割の手続きを行う必要がある。
(遺産分割手続きによると言う案もあり。)

このような議論が行われています。

なお、今回参考にしました法制審議会の資料は下記から閲覧する事が可能です。

法務省:法制審議会民法・不動産登記法部会第10回会議(令和元年11月19日開催)

4.まとめ

相続法が改正されて間もないのですが、相続登記に関する議論も着々と進んでおり、そう遠くない未来、相続登記が義務化される可能性があるでしょう。

その時になって慌てないよう、今から想像力を働かせて対策を講じる事が大切になってきます。

「面倒な事は後回しにする」のではなく、積極的に面倒な事に向き合って行く姿勢が重要であると言えます。

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この記事を書いた専門家

司法書士/2級FP技能士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から相続対策をご提案します。
福岡県出身/元俳優(某球団のマスコットの中に入っていた事も)/温泉が大好き

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