相続手続きをしなかったら?様々なデメリットをご紹介します

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、相続手続きを行おうかどうか、迷っている方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q.半年前に父が亡くなりました。相続人は配偶者である母と、私を含めて子供が3人です。

相続手続きを行おうと思っているのですが、3人の子供とも、遠方に住んでいるため、中々話し合う機会がありません。

遺産は自宅と、数百万円程の預貯金のみですので、手続きを行わなくても今のところ特に問題はありません。
そのため、取りあえずこのまま何もしないでいようと思うのですが、何か問題はありますでしょうか?

A.相続手続きを行わない場合、様々なデメリットがありますので、早めの手続きを行う事をお勧めします。

 

1.相続手続きは今後もできるとは限らない

相続手続き、つまり遺産分割協議と遺産の名義変更を行う事について、「後でやっても良いのだから、別に今やる必要は無いですよね?」とご質問を受ける事があるのですが、「今できるのであれば、今のうちにやった方が良い」と良く回答をさせて頂いております。

理由は「今後もできるとは限らない」からです。具体的には下記のとおりです。

① 相続人が認知症になる事だってある

相続人が認知症等により、意思能力・判断能力が低下した場合、そのままでは遺産分割協議を行う事はできません。

認知症等になった相続人の為に後見制度を利用し、成年後見人が被後見人を代理して遺産分割協議を行う必要があります。

後見申立てにはお金と時間がかかりますので、その間に財産を処分する必要性が生じても迅速に対応する事は難しくなります。

さらに、成年後見人の仕事は、遺産分割協議が終了しても終わりません。

相続人(成年被後見人)が亡くなるまで成年後見人の仕事は継続しますし、弁護士や司法書士のような専門職が成年後見人である場合は、その間の報酬(月額3~5万円)も発生します。

② 相続人がねずみ算式に増える事だってある

遺産分割協議を行う前に相続人が亡くなると、その相続人が遺産分割協議を行う地位を相続するのですが、その相続人が亡くなると次の相続人へ・・・と言ったように、相続人がどんどん増えていく事も良くあります。

その結果として、一度も会った事がない、どこにいるのかが分からない親戚が相続人となる事もあり得ます。

相続人が増えすぎた結果、遺産分割協議がまとまらず遺産である不動産を売却する事ができない、と言ったデメリットが発生します。

 

2.相続手続きを行わない場合の具体的なデメリット

① 預金が使えなくなる可能性がある。

預金とは金融機関に対する債権のことです。

この債権には権利を行使しないと消滅してしまう「消滅時効」が法律上定められています(10年。場合によっては5年のケースも)。

その為、ご家族の方が亡くなり口座が凍結されて10年が経過すると、預金を引き出す事ができなくなる可能性があります。

ただし、10年を経過していても払い戻しに応じる金融機関がほとんどなのですが、このような長期間に渡って利用されていない休眠口座を、国等が財源として利用する事も検討されています。

その為、今後は相続財産であってもきちんと相続手続きを行わなければ、預金を引き出す事ができなくなるかもしれません。

② 相続登記ができなくなる可能性がある。

不動産の相続手続き(相続登記)に法律上必要とされる書類(遺産分割協議書等)を揃える事ができなかったら、相続登記を行う事ができなくなります。

その結果として、不動産を売却したくてもできなくなってしまうと言う最悪な状態になる事もあります。

なお、「必要な書類が無くても裏技的なモノでなんとかなるんじゃないのか?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、法律上必要な書類を揃える事ができず、結果として相続登記ができないのであれば、どんなに頑張っても、法務局に土下座してお願いしてもどうにもなりません。ダメなものはダメなのです。

③ 亡くなった方の借金を払わなくてはいけない(相続放棄、限定承認ができない)

相続放棄や限定承認には期限があります(自分のために相続の開始があった事を知った時から三ヶ月です)。

その為、相続手続きを何も行わず、三ヶ月を経過した後に被相続人の借金が判明した場合、相続放棄や限定承認ができず、相続人がその借金を背負わなくてはいけなくなります。

数十万円であれば良いかもしれませんが、この金額が数百万円や数千万円だった場合、支払っていくのは非常に難しいでしょう。

なお、例外的にこの三ヶ月が経過しても家庭裁判所から相続放棄が認められる事がありますが、あくまでそれは例外的な対応です。

さらに、相続放棄が仮に認められたとしても、債権者からその相続放棄の無効を訴えられる可能性もあります。

④ 申告・納税した相続税の修正ができない

相続税の申告・納税の必要がある場合、相続手続きを行わなくても期限内(被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内)に法定相続分で相続したとみなして、相続税の申告・納税を行う必要があります。

その後に相続手続きを行い、遺産分割協議が成立すれば、実際に相続した分にあわせて、既に納税した相続税を修正する事になります。

しかし、相続手続きを行わなければ当然に相続税の修正を行う事ができず、また相続税が軽減される特例も使用する事ができなくなります。

結局、本来必要ではなかった税金を納税する可能性がでてきます。

3.まとめ

相続手続きを行わないデメリットを簡単にまとめてみましたが、上記以外にもまだまだ沢山あります。

少しの手間と時間とお金を惜しんだ結果、手続きが不可能になったと言う最悪な事態を回避するために、相続手続きは早めに行う事をお勧めします。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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