相続セミナーの危険な罠

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、巷にあふれかえっている相続セミナーについてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

最近は終活ブーム、相続ブームと言う事で、相続に関連するセミナーがあちらこちらで開催されています。

主催者を見てみますと、弁護士、司法書士、税理士、行政書士と言った「士業」、不動産会社や信託銀行、果ては相続診断士、相続コーディネーター、遺産相続コンシェルジュ、相続カウンセラー等、何をするのかが良く分からない、聞きなれない民間資格まで多種多様です。

良い意味でも悪い意味でも、いわゆる「相続ビジネス」になってしまった相続の世界ですが、その結果として非常に悪質な業者も参入し、様々な問題が発生している事実があります。

今回は、その相続セミナーについて、注意すべきポイントを解説していきたいと思います。

 

1.相続セミナーとは?

一口に相続セミナーと言っても、その内容は大きくわけて2つに分かれます。

① 遺言セミナー

「遺言は相続において紛争を未然に防ぐ事ができるので、是非遺言を書きましょう」と言う事を伝え、実際に遺言作成の文案を受任する為に開催されるセミナーです。

セミナーの内容は、遺言の基本知識や、遺言を書いた方が良いケース、実際に遺言が無かった為に紛争になった事例等、非常に幅広い内容となっています。

特に実際に遺言が無く紛争になった具体的事例に関するセミナーは、一度受講する事をお勧めします。「こんな事で相続人がもめるのか?」と新たな発見が得られるかも知れません。

主催者は基本的に弁護士、司法書士、税理士、行政書士と言った士業がメインです。

② 相続税対策セミナー

最近増えているのが、この相続税対策セミナーです。

「平成27年の相続税法改正で、今まで相続税が発生しなかった家庭が、今後相続税が発生するようになる。だからしっかりと相続税対策をしましょう。」と言う事を伝えます。

実際に相続税対策の事件を受任する為に開催され、その手段として、様々な方法が提唱されるのですが、特にアパート経営が推奨されるケースが多いです。

主催者は税理士、ファイナンシャルプランナー、不動産会社、住宅コンサルタントと言った肩書を持つ人がメインです。

基本は二部構成になっており、一部は税理士による相続税の基本知識、相続税の算出方法等で、二部がメインとなるアパート経営による相続税対策の説明です。

両セミナーに関して言える事は、最終的には仕事に繋げる事を目的としています。

そこで相談者の方が抱えている様々な問題が解決できるのであれば、何ら問題が無いのですが、最近は得に相続税対策セミナーにおいて、非常に質が悪い業者が参入しており、一般の方に様々な悪影響をもたらしているのです。

 

2.なぜ、相続税対策セミナーがブームなのか?

これは上述した平成27年の相続税法改正が理由の一つです。

相続税には基礎控除額と言うのがあり、この基礎控除額の範囲内であれば、相続税が発生しません。

この基礎控除額が、今までは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったのですが、相続税法改正により「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられたのです。

この為、「今後相続税の課税対象者は全国でも従来の倍近くの6~7%、東京圏では20%に急増する」と言う試算がなされました。

つまり、今まで一部のお金持ちの話であった相続税の課税対象者が、中間層のサラリーマンにまで及ぶと謳われるようになり、「相続税対策の為に、アパートを建て、賃貸経営を始めましょう」と言ったセミナーの開催が加速していったのです。

 

3.相続税対策におけるアパート経営の何が問題か?

危険な相続税対策(不動産編)でも詳細な記事を載せているのですが、まず、セミナーの内容そのものには嘘はありません。

相続税対策としてアパート経営は有効な手段の一つになり得るのですが、それは、きちんと収益性がある物件である事が大前提です。

しかし、セミナー主催者側はアパート経営におけるメリットのみしか伝えず、様々なデメリットを伝えません。

結果として何億もの借金をしてアパート建てたけれど収益性が全くない、相続人が誰も相続したがらない相続財産が誕生し、被相続人、相続人双方が不幸になってしまうのです。

なお、私は実際に相続税対策としてアパートを建てたけど、業者の説明のようにアパート経営が上手くいかず、業者にそのアパートを買い取ってもらった現場に司法書士として立ち会った事があります。

それだけ、身近な問題であると言えます。

 

4.税理士は相続のプロではない?

「でも、セミナーには税理士が関与しているので、きちんと相続税に関して適切なアドバイスを受けられるのでは?」と思われるかも知れませんが、実はここにも落とし穴があります。

実は、国税庁が公表している平成27年度の相続税申告者数(約10万3,000件)を、日本税理士会連合会が公表している全国の税理士の数(約7万6,000人)で割ると、全国の税理士が1人あたり年間で受任している相続税申告は、たった1.3件です。

(なお、平成27年度は相続税改正によって、相続税申告数が増加した年です。それまでは年間5万件程でしたので、税理士1人当たり年間で1件も受任していない計算になります。)

つまり、相続税申告の経験がある、相続税に詳しい税理士は、中々いないというのが現実なのです。

皆様の中では「相続=税理士」と言うイメージが強いかも知れませんが、実はこれが現実です。

我々司法書士も相続税に詳しい税理士を探すのに苦労しているのですが、その原因がここにあるのです。

 

5.ほとんどの場合、相続税対策は必要ない

相続税は、基礎控除額の範囲内であれば支払う必要はありません、また基礎控除額を超えていても、様々な特例を使えば納税額が0円になるケースがあります。

また、例え相続税の支払義務が発生したとしても、ごく普通の一般家庭の場合、1人当たりその金額は数百万程度である事が多いです。

数百万程度であれば、相続財産から支払ったり、生命保険を活用する事で十分対応でき、借金をしてでもアパートを建てる必要はないと思われます。

詳しはこちらをご覧下さい。
相続税が安くなる各種控除制度

 

6.まとめ

重要なのはセミナーで即決しない事です。

アパート経営は業者が説明しない、様々なリスクが存在します。

そのリスクを冒してでも、相続税対策を行うべきか、今一度じっくりと考えて下さい。

当事務所では相続税に詳しい税理士と連携し、その相続対策、相続税対策が適切かどうかのセカンドオピニオン的なご相談も承っております。相続対策、相続税対策にお困り、お悩みの場合はお気軽にご相談下さい。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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