相続の債務(借金)を勝手に和解された場合

こんにちは。横浜市泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、相続した債務(借金)についてご相談されたい方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:私の父は一ヶ月前に亡くなりました。これと言った財産は無く、逆にいろいろな所から借金をしていた事が分かりました。相続人である母と弟、妹でこの借金についてどうしようかと話し合いをしていたのですが、弟がある債権者と勝手に和解を締結して、非常に困っています。100万円を月々5万円ずつ返済していくと言う内容で、相続人代表として弟が署名押印をしています。この場合、もう借金を返済しなくてはいけないのでしょうか?

A:弟さんが勝手に締結した和解は無効です。まずは借金を返済する必要が本当にあるのかの調査が必要です。

 

1.被相続人が借金をしていた場合

亡くなった方が借金をしていた場合、その借金は相続人の法定相続分に従って支払義務が発生します。では、事例の様に相続人の一人(弟)が勝手にした和解の効力はどうでしょうか?

答えは、弟に和解に関する代理権を与えた事実が無い限り、和解の効力は無効となります。では、和解は無効ですが、それでも法律上は法定相続分の支払い義務は無くなりません。しかし、支払義務を免れる事ができる可能性がある手続きが法律上存在します。

 

2.債権者から契約書、取引履歴を取り寄せる

被相続人が借金をしていた事実を相続人が知るきっかけとなるのが、ほとんどの場合、債権者からの請求だと思います。まずはここで確認してほしいのが、「本当に被相続人が借金をしていたのか?」です。もしかしたら、債権者と名乗る人物が嘘をついている事だってありえます。

だから、債権者からまず被相続人が借金をしていた事を証明する契約書の提示を求めて下さい。また、債権者が消費者金融(サラ金)の場合、取引履歴の開示も求めて下さい。取引履歴は債権者、債務者の細かい取引が分かる一覧表です。まずは本当に被相続人が借金をしていたのかを確認して下さい。

資料の開示で重要なのは、この時点で絶対に「支払います」とは言ってはいけない事です。「支払います」と言った場合、債権の存在を認めてしまい、後述する消滅時効の時効中断事由に該当するからです。その為、この段階では絶対に債権者に対して「支払います」とは言わないようにして下さい。

なお、資料の開示は早めに(借金の請求を受けてから3ヶ月以内に手元に資料が届くように)行うようにして下さい。

 

3.利息制限法所定の利息による引き直し計算を行う

消費者金融と何十年も取引をしていた場合、高い利息を支払っていた可能性がありますので、取引履歴を基に、必ず引き直し計算を行う必要があります。引き直し計算の結果によっては借金が減額できたり、逆に過払状態になって過払い金の返還請求ができる場合があります。

 

4.消滅時効の援用

借金は最終取引から5年(訴えを提起され、その裁判が確定している場合は10年)経過すると、時効により消滅しますので、最終取引(最終返済日)から時効の期間が経過していれば、消滅時効の援用を行う事で、借金の支払義務を免れる事ができます。

 

5.相続放棄、限定承認

借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄を行う事により、借金の支払義務を免れる事ができます(プラスの財産を相続する権利も失います)。また、プラスの財産、マイナスの財産のどちらが多いか分からない場合、限定承認を行う事で、プラスの財産のみから借金を支払い、自己の財産からの支払義務を免れる事ができます。

 

6.和解

相続放棄が出来なかったり等した場合で、借金の支払義務、支払額が決まれば、ここで初めて和解交渉を行います。月々無理の無い範囲での支払い金額を決めましょう。また、不幸にして収入から考えて支払いが不能であれば、自己破産を検討する必要があります。

 

7.まとめ

被相続人は借金をしていた事を家族に内緒にしている事が多く、亡くなって始めて家族の方が借金の存在を知り、大慌てになるのが一般的です。

被相続人の借金については、まずは慌てない事、きちんと借金をしていた事の証拠を提示してもらう事です。対応はそれからでも全然遅くありません。

当事務所は相続における借金のご相談も承っております。相続債務(借金)についてお悩み、お困りの場合はお気軽にご相談下さい。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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