こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回の記事は、相続人と相続分について基本的な事項を解説したいと思います。
被相続人が亡くなり相続が開始されると様々な相続手続きを行う必要があります。
その為、相続が開始された場合、一番最初に考える事は「誰が相続人なのか?」と言う事です。
相続人を間違えますと、それ以降の手続きの前提を欠いてしまいますので、簡単なようで、実は非常に重要な作業になります。
1.相続人の範囲とその相続分
① 夫婦と子どもがいる場合
夫Aと妻Bの間に子どもCがいて、Aが亡くなったケースです。
まず、配偶者は常に相続人になります。そして、子どもは第一順位の相続人です。つまり、B、Cの両方が相続人となります。
配偶者と直系卑属(子どもや孫)が相続人になる場合、法定相続分は配偶者2分の1、子どもが2分の1となります(子どもが複数いる場合、子どもの人数×2分の1が、各子どもの相続分になります)。
上記の場合、子どもが二人いますので、2分の1×2=4分の1が、各子どもの相続分になります。
② 夫婦と既に亡くなった子どもの孫がいる場合
配偶者と子どもが相続人となりますが、相続人であるDがAよりも先に亡くなっています。
その為、DはAの相続人とはならないのですが、その代わりに、Dの子どものEとFがAを相続します。これを代襲相続と言います(民法第887条2項)
相続分は、配偶者と子どもが半分ずつなのですが、本来Dが相続すべきだった割合の2分の1を、EとFが等しい割合で相続します(4分の1×2=8分の1)。
③ 夫婦の間に子どもはいないが、両親が健在の場合
子どもがいない場合の第二順位の相続人は直系尊属(父母、祖父母等)です。
配偶者と直系尊属(父母や祖父母等)が相続人になる場合、法定相続分は配偶者3分の2、直系尊属が3分の1となります。
④ 夫婦の間に子ども両親もいないが、兄弟が健在の場合
子ども及び直系尊属(父母や祖父母等)がいない場合の第三順位の相続人は兄弟姉妹です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は配偶者4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
(兄弟姉妹が複数いる場合、兄弟姉妹の人数×4分の1が、各兄弟姉妹の相続分になります。なお、兄弟姉妹の中で異父母兄弟がいる場合は、その兄弟の相続分は他の相続分の2分の1となります。)
⑤ 相続人である兄弟が、既に亡くなっている場合
相続人であるJは既に亡くなっていますので、Jを代襲し、Jの子どもであるK、LがAの相続人となります。
相続分は、配偶者4分の3、兄弟姉妹が4分の1ですが、本来Jが相続すべきだった割合の8分の1(4分の1×2=8分の1)を、EとFが等しい割合で相続します(8分の1×2=16分の1)。
2.法定相続分の修正
① 寄与分
相続人の中に、被相続人の財産の維持、増加について特別の貢献をした者がいる場合に、その者を優遇する仕組みが寄与分の制度です。
例えば、実家の農家をほぼ無給で父を手伝っていた兄と、都会でサラリーマンをしている弟の間では、兄に弟より多くの相続財産を与えると言う制度です。
寄与分の詳細に関しましては、こちらをご参照下さい。

② 特別受益
寄与分の逆バージョンが、寄与分の制度です。相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、または婚姻、養子縁組もしくは生計の資本として贈与を受けた者がある時に、その者を特別受益者として、他の相続人よりも相続分を減らす制度です。
特別受益の詳細に関しましては、こちらをご参照下さい。

3.まとめ
以上、まとめますと、相続人の範囲は下記のとおりとなります。
〇配偶者
・・・第一順位~第三順位の相続人とともに、常に相続人になります。
〇子ども(養子縁組している場合も含みます)
・・・・・・第一順位の相続人です(子どもが既に亡くなっている場合、孫が相続人になります。孫が亡くなっている場合は、ひ孫等、再代襲があります)。
〇父母、祖父母等
・・・第二順位の相続人です。
〇兄弟姉妹
・・・第三順位の相続人です。兄弟姉妹の中に既に亡くなっている者がいる場合、その子どもが代襲して相続します(代襲は一回だけです)。