生死不明の相続人がいる場合

こんにちは。横浜市泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、相続人の中に生死不明者がいて、お困りの方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:私の住んでいる自宅は、実は30年以上も前に亡くなった祖父名義のままになっています。本来は祖父の相続人である父(一人息子)の名義に変えなくてはいけなかったのですが、そのまま放置していました。さらに父は15年前に突然失踪し、警察に届け出たのですが、現在どこにいるのか、生きているのか死んでいるのかも分かりません。

その為、自宅の名義が祖父のままなのですが、その事で困った事が発生しました。最近空き巣に入られて自宅に保険をかけようとしたのですが、保険会社に家の名義が違うので契約が出来ない、と言われてしまいました。情けないですが今になって事の重大さに気づきました。この場合、何か良い方法はないでしょうか?

A:失踪宣告の申立てを行い、自宅の名義をお父様の相続人に変更する解決方法があります。

 

1.失踪宣告とは?

失踪宣告とは、事例の様にどこにいるのか分からない、本来住んでいた場所に帰ってくる見込みがない、生死不明な方を、法律上「死亡した」事にして、生死不明者の法律関係を一応確定させる制度です。つまり、事例の場合で、生死不明になっている父に対して失踪宣告の申立てを行いそれが認められると、父親に対して相続が発生する事になるので、相談者等の、父親の相続人名義に自宅の名義を変更する事が出来るのです。

 

2.失踪宣告の種類

失踪宣告は二種類あります。

① 普通失踪

行方不明者の生死が7年間明らかでない時に、家庭裁判所に対して申し立てる事が出来ます。家庭裁判所より失踪の宣告がされた場合、行方不明になった日から7年間が経過したときに死亡したものとみなされます。

② 特別失踪

戦地にいた人、沈没した船舶の中にいた人、その他死亡の原因となるべき危難(地震、洪水、津波、航空機事故など)に遭遇した人が対象となります。戦争が終わった後、船舶が沈没した後、その他の危難が去った後、その生死が一年間明らかでない時に、申し立てる事が出来ます。家庭裁判所より失踪の宣告がされた場合、それぞれの危難が去った時に死亡したものとみなされます。

 

3.失踪宣告の手続き

① 申立てが出来る人

申立てが出来るのは利害関係人です。利害関係人とは、不在者の配偶者等相続人となる人、財産管理人、受遺者等の失踪宣告がされることについて法律上の利害関係を有する人です。

② 手続き方法

失踪宣告は、家事審判の申立書を管轄の家庭裁判所(不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所)に提出する必要があります。家事審判の申立書は各家庭裁判所のホームページからダウンロード出来ますが、記載すべき内容は概ね下記の内容となります。

・申立人の情報(氏名、住所、連絡先等)
・不在者の情報(氏名、生年月日、最後の住所地等)
・申立ての趣旨(「不在者に対し失踪宣告をするとの審判を求める。」と記載します)
・申立ての理由(不在になった具体的な事由を記載します。)

③ 添付書類

申立書以外の添付書類は以下のとおりです。

・不在者の戸籍謄本
・不在者の戸籍附票
・失踪を証する資料(警察署長の発行する家出人届出受理証明書、返戻された不在者宛ての手紙など)
・申立人の利害関係を証する資料(親族の場合には戸籍謄本)

なお、家庭裁判所の審理状況により、追加資料の提出を求められる事があります。

 

4.まとめ -失踪宣告の注意点-

失踪宣告は生死不明者を法律上死亡した事にする、少々荒っぽい制度です。その為、申立ての要件が厳しい部分もあり、単純に行方不明と言う理由だけでは認められない可能性もあります。

また、行方不明となっていた本人が実は生存しており、その本人が家庭裁判所に対し、失踪宣告の取り消しを請求する事で、法律関係が元に戻ると言った可能性も出てきます。

その為、単純に失踪宣告が良いのか、それとも別の制度(不在者財産管理人)が良いのかと言った判断も行う必要がある場合があります。この判断を間違える事で、想定していなかった複雑な問題も発生する事もある為、少しでもご不安な場合は専門家へのご相談をお勧めします。

当事務所でも、失踪宣告の申立てや不在者財産管理人等のご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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