相続人の中に連絡を拒絶している者がいる場合の対応方法

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、相続人の中に連絡しても拒絶している者がいて、遺産分割協議が出来なくで困っている方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
 Q:先月父が亡くなったのですが、困った事が発生しています。

相続人は母と長女である私、そして弟の三人なのですが、この弟と連絡がとれない状態になっています。

自宅に電話をしても着信拒否をされ、勤務先に連絡しても一方的に切られる。

手紙をおくっても受け取り拒否で返ってくる有様で、遺産分割協議がそもそも出来ない状態が続いています。

元々、ウチの両親と弟は仲は良くなかったのですが、数年前にちょっとしたトラブルが両親と弟の間に起きて、それ以後は両親とも弟にはほとんど連絡をとっていませんでした。

父が亡くなった事は共通の友人を通じて弟の耳に入れたのですが、結局葬儀にすら出席しない状態です。

このままでは遺産分割協議が出来ずに非常に困っています。

最終的には裁判等の手続きが出来る事は分かっているのですが、なるべくなら穏便にすませたいですし、時間もかけたくありません。

このような場合、一体どうすればよろしいのでしょうか?

1.連絡を拒絶している相続人を無視出来るか?

事例のように「相続人の内の一人(ないし複数人)が、連絡を拒絶していて遺産分割協議が出来ずに困っている」と言うご相談が、毎日のように全国から当事務所にやってきます。

皆様が良く考えられる解決方法として、「連絡を拒絶している相続人を無視して、遺産分割協議を行う」と言うのが挙げられるのですが、遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となります

一人でも相続人が欠けるとその遺産分割協議は無効になりますのでご注意下さい。

なお、このようなケースで、「連絡を拒絶している相続人の法定相続分を供託すれば良い」と言う回答がYahoo!知恵袋等の質問サイトでされている事がありますが、これは全くのデタラメです。

上記のとおり、一人でも相続人が欠けると、その遺産分割協議は無効です。

あとからその相続人が「供託した金額で良い」と言えば話は別ですが、そうではない限り、遺産分割協議をやり直す必要があります。

※供託・・・金銭等を供託所(法務局)に管理・保管してもらい、最終的にその金銭等をある人に取得させることによって、一定の法律関係を発生させる制度です。

2.具体的な対処方法

① 裁判手続きに委ねる

相手が連絡を取る事を拒否している以上、任意で遺産分割協議を行う事が出来ませんので、裁判所の手続きを行い、強制的に問題を解決する事が考えられます。

なお、裁判手続きとして、一般的には遺産分割調停が行われますが、相続人が連絡を拒絶している以上、調停での解決は難しく、その場合は審判と言う民事訴訟に似た手続きが行われます。

ただし、裁判所の手続きを行う問題点は、調停と言えども裁判所から郵便物が届く事になりますので、相手方にしてみれば「ケンカを売られた」と思われ、余計に状況が悪化する可能性があります。

私の元にも、被相続人が亡くなった事を知らない相続人の方から「いきなり裁判所から書類が来て、調停やるから裁判所に来いと言う書類が来た!」とずいぶんご立腹でご相談に来られた方がいらっしゃいました。

このように、裁判所から書類が届くと言う事は、(あなたにどのような正当な理由があったとしても)相手の立場に立ってみると非常に不愉快なのです。

② 中立的な第三者に間に入ってもらう

相手の立場にたって考えてみますと、おそらく他の相続人と直接話をしたくはないのでしょう。

だから連絡が来ても拒絶をしていると考えられます。

そうであれば、他の親族や、我々司法書士のような中立的な第三者に間に入ってもらい、話をまとめると言う方法があります。

連絡を拒絶している相続人としては直接他の相続人と話す必要がない為、結果として遺産分割協議に応じる事があります。

(事実、私はこの様なケースの相続を受任して、相続人間の話がまとまった事が良くあります。)

この時の注意点は、あくまで特定の誰かの味方ではなく、中立的な立場である事を相手に理解してもらう事です。

特定の誰かの「代理人」であれば、調停や審判ほどではありませんが、相手方にしてみれば「ケンカを売られた」と言う印象を受けて、まとまる話もまとまらなくなる事があります。

3.弁護士、司法書士に依頼すれば問題は解決できるのか?

弁護士や司法書士と言った専門家が連絡する事で、今まで連絡を拒否していた相続人と連絡が取れる可能性がありますが、実はこれも注意点があります。

特に法律家は「他の相続人が困っており、法律上も問題がある。だから連絡を下さい」と言った、「あなたが他の相続に迷惑をかけて、困っている。あなたが悪い」と言った趣旨の書面を良く送りますが、これははっきり言って逆効果です。

あなたは連絡が取れない相続人に対して「何度も連絡しているのに、無視するなんて何てヤツだ。非常識にも程がある!」とお怒りでしょう。

しかし、相手にも連絡を拒否する理由がきちんとあります。

それを正しく理解しているでしょうか?

人間は、人は他の人々も自分と同じように考えていると思いがちになりやすい生き物です。

つまり、「自分が絶対に正しくて常識的であり、相手が絶対に間違っていると」と考える傾向にあります(これを心理学の言葉で『フォールス・コンセンサス効果』と言います)。

そもそも、一人として同じ人間がいない以上、考え方、価値観等は多種多少であり、絶対に正しい事は有りません。

その事をきちんと理解していない専門家に依頼してしまったら、相手の立場にたってみると、弁護士、司法書士と言った「」から連絡が来た事になり、逆に紛争の原因となってしまいます.

さらに言ってしまえば、弁護士、司法書士は法律のプロであっても、コミュニケーションのプロではありません。

その為、「法律ではこうだ」と客観的に正しい事を言ったとしても、それが引き金になって、連絡を拒否している相続人と争いになってしまう可能性があります。

連絡を拒否している相続人とのコミュニケーションは、非常にデリケートな問題なのです。

4.まとめ

特定の相続人の連絡がずっと取れないでいると、面倒になってその者を除いて遺産分割協議を行いたくなりますが、そもそも無効ですし、これこそ後々のトラブルになります。

連絡を拒絶している相続人がいても、必ず何らかの方法で全員で遺産分割協議を行うようにしましょう。

当事務所では、事例のように連絡を拒否している相続人に対して、相続手続きに協力して頂くようお話をして、相続人の方々が後からもめない為の遺産分割協議のお手伝いを行う事を得意としております。

相続人間のコミュニケーションの問題は、何も行わなければ絶対に解決しません。

それどころか、状況はますます悪い方向に進んでいきます。

相続のお話し合いが出来ず、お困り、お悩みの場合は今すぐに当事務所の相続・家族信託相談をご利用下さい。

なお、下記のページに詳細な対応方法を記載しています。

あわせてご覧下さい。

連絡を無視している相続人に対して、相続の話し合いに応じてもらう方法
相続人に連絡を無視されていてお困りの方に、遺産分割調停前のアプローチ方法を解説しています。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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