相続人の数が多すぎて、遺産分割協議がまとまらない場合

相続トラブル事例

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、相続が何度も発生し、その結果相続人が膨大な数になってしまった相続についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:昭和40年に亡くなった祖父名義の土地について、相続登記がされていない土地を発見しました。

遺言書も遺産分割協議書も無く、当時の相続人がその土地の存在に気が付かなかった為、祖父名義のまま現在に至っていると思われます。

この土地について、実はどうでしても売却を行わなくてはならない事情が発生したのですが、相続登記の事で困っています。

当時の相続人、つまり私の父や叔父叔母は全員亡くなっており、その相続人である従兄弟が多数いるのですが、その中には一度も交流した事が無い者もいます。

私の父の相続人は私を入れて4名、従兄弟は全員で41名、つまり祖父の相続人の相続人は、合計45名です。

この様に相続人の数が膨大な場合、遺産分割協議はどのように行えば良いのでしょうか?

1.相続人が膨大な人数の場合の対応方法

「相続による不動産の名義変更がされておらず、その相続人を調べたら、相続人のあまりの多さに呆然となってしまってしまいました。今後どうすればよろしいのでしょうか?」

このようなご相談を承る事があります。

こう言ったケースは、我々司法書士でも非常に骨が折れる仕事になりますので、相続手続きを行う一般の方にしてみれば茫然自失となってしまうのはむしろ当然であると言えます。

さて、このようなケースの場合、各相続人の意向を確認する事はもちろん必要なのですが、対応方法としましては、

⑴ 相続人の代表者を選定し、その代表者と遺産分割協議を行う。
⑵ 相続放棄をしてもらう。
⑶ 相続分を譲渡してもらう

このような対応方法が考えられます。

2.相続人の代表者を選定

例えば、祖父の相続人が相談者の父を除いて5人(A~Eとします)で既に亡くなっている場合、この5人についてもそれぞれ相続人がいると思います。

このA~Eについてそれぞれの相続人の代表者を選定する事により、遺産分割協議を行う人数がかなり少なくなり、結果として話し合いが行いやすい状況となります。

なお、相続人の代表者を決めた場合、他の相続人から相続人代表者に対して、遺産分割協議に関する委任状を交付(実印押印、印鑑証明書も提出してもらう)してもらうようにして下さい。

3.相続放棄をしてもらう

各相続人に家庭裁判所で相続放棄の申述をしてもらい、それが受理されるとその者は初めから相続人ではなかった事にみなされます。

その結果として相続人の人数を絞る事が出来て遺産分割協議を行いやすくなります。

なお、相続放棄の期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています。

事例のように祖父の相続から何十年も経過していても相続放棄が可能なのか?と言う疑問点が出てきますが、実務上は

相続放棄の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきである

と言う最高裁判決もありますので、相続放棄は可能であると考えられます。

ただし、問題点も存在します。

まず、相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行わなければいけません。

相続人によっては管轄の裁判所が遠方になり、郵送により申述書の提出が可能とはいえ、不便を感じる相続人もいるかもしれません。

また、そもそも祖父の相続人が単純承認をしていた場合、相続放棄が出来ないと言った問題もあり、相続放棄については慎重に検討する必要があるかも知れません。

4.相続分を譲渡してもらう

「相続分の譲渡」とは、自分の相続分を、他の相続人や相続人では無い第三者に譲渡する事です。

上記の相続放棄との違いは、譲渡した相続分の権利は失うのですが、相続人の地位はそのままと言う点です。

各相続人が、自分と親しい相続人等に自己の相続分を譲渡すれば、結果的に相続人の人数を絞る事が出来て、遺産分割協議を行いやすくなります。

また、相続放棄とは異なり、期間制限はありませんので、遺産分割協議前であれば、いつでも相続分の譲渡は行う事が出来ます。

5.まとめ

相続人の数が膨大になった時のポイントとしては、遺産分割協議を行う為に、いかにしてその人数を少なくするか、と言う点です。

最初は全ての相続人に連絡を取り、その意向を確認する必要がありますが、その人数を絞っていく事により、スムーズな遺産分割協議を行う事が可能となります。

なお、相続人の人数が多いからと言ってこのまま放置していれば、相続人の人数はさらに多くなっていきます。

次の世代の人達に必要以上に迷惑をかけないよう、相続手続きは早急に行いましょう。

当事務所ではこのように相続人の人数が膨大になっている相続手続きに関しまして得意としており、積極的に受任させて頂いております。

相続人の数が多すぎてお困り、お悩みの場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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