相続人の中に未成年者がいる場合

お絵描きする赤ちゃん相続・家族信託の専門家

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、未成年者との遺産分割協議についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、非常に良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:先月、主人が亡くなりました。

葬儀、法要も済ませ、後は主人の遺産(自宅、預貯金)の名義変更を行うのみとなっています。

相続人は妻である私と、小学校5年生の長男、1年生の長女の3人です。

子どもは2人とも未成年者ですので、主人の遺産を相続してもあまり意味がないと思い、全ての遺産を私名義にしたいと考えているのですが、何か問題はありますか?

A:本事例の場合、未成年者の2人について家庭裁判所から特別代理人を選任してもらい、その特別代理人と相談者で遺産分割協議を行う必要があります。

さらに、全ての遺産を母であるあなたが相続する事は原則難しいでしょう。

1.未成年者の法律行為

人間は、契約等の法律行為に関しては、単独で行う事が出来るのが原則です。

しかしながら、例外的に法律行為を単独で行う事ができない場合を民法が規定しています。

その中の一つが未成年者です。未成年者は両親の同意を得るか、両親が未成年者を代理する事で、初めて有効な法律行為を行う事ができます。

では、事例のケースはどうでしょうか?

遺産分割協議も法律行為である為、親が子どもを代理して遺産の帰属を決める事ができそうですが、実は法律ではこのようなケースで特別なルールを決めています。

つまり、遺産分割協議のような親と子の利益が相反するような法律行為を行う場合、その子どもの為に遺産分割協議を行う特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなくてはいけません(民法第826条)。

(利益相反行為)
第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

家庭裁判所から選任された特別代理人が未成年者を代理し遺産分割協議に参加する事で、初めて有効な協議になるのです。

なお、未成年の子どもが数人いる場合、その子どものそれぞれに特別代理人が必要になります。

2.特別代理人選任の流れ

① 特別代理人選任の申立て

親権者又は利害関係人が、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して、特別代理人選任の申立てを行います。

必要な書類は実際の申立ての事情によって異なる事がありますが、概ね下記の書類が必要となります。

⑴ 申立書
⑵ 未成年者、親権者の戸籍謄本
⑶ 特別代理人候補者の住民票等
⑷ 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案等)

② 特別代理人の資格

特に規定はありませんが、特別代理人は未成年者の利益を保護する為に選任されますので、その目的にそって適切に職務を行えるかが家庭裁判所より判断されます。

実務上では、子どもの叔父叔母等、親族が行っているケースもあります。

③ 遺産分割協議への参加

約一ヶ月程で家庭裁判所から特別代理人が選任され、特別代理人選任審判書が交付されます。

その後特別代理人は遺産分割協議に参加するのですが、申立て時に提出した遺産分割協議書(案)どおりの協議を行う必要があります。

家庭裁判所は遺産分割協議書(案)の内容を確認した上で特別代理人を選任したのですから、申立て時と異なる内容での協議は行う事はできません。

なお、遺産分割協議が終了すると、特別代理人の任務は終了します。

3.どのような遺産分割協議書(案)にすべきか?

相続人に未成年者がいる場合、多額の財産を持たせても仕方が無いと言う理由で、全ての財産を親のものとする遺産分割協議を行いたいと思われる方が多いと思います。

しかし、未成年者も相続人であり、法定相続分の権利はあります。

家庭裁判所も未成年者の権利の保護に重きをおいておりますので、もし親が全ての財産を相続する旨の遺産分割協議書(案)を提出した場合、高確率で家庭裁判所より『回答書』と言う書面が届きます。

これは未成年者がなぜ法定相続分以下となる遺産分割協議がなされるのか、その合理的な理由を説明する為の書面です。

この合理的な理由がきちんと説明できない場合は、その遺産分割協議(案)では申立てがほぼ受理されないと言っても良いでしょう。

もし事例のように未成年者にとって不利な遺産分割協議を行うのであれば、家庭裁判所にきちんと説明を行うための準備が必要となります。

4.まとめ

このように、相続人の中に未成年者がいる場合は特別代理人の存在が必要となります。

「自分の子どもなのに、煩わしい」と思われるかも知れませんが、未成年者の利益を保護する為の制度だとご理解頂ければと思います。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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