亡くなった知人の相続人の住所を調べる方法

【事例】
Q:先日、私の友人が亡くなりました。

友人は数か月前から具合が悪くなり、病院に入院していました。友人は独身だった為、私が入院時の色々な世話をしていた経緯があります。

実は友人の相続人の事で困っています。

友人の父母は既に亡くなっており、聞いた話では九州のどこかに兄が住んでいるようなのですが、具体的にどこにいるのかは色々な方に聞いて回ったのですが、未だに分からないままです。
 
友人の兄に友人が亡くなった事も伝えたいですし、遺産として預貯金もありますが、これを引き渡す事が出来ず非常に困っています。

何とか友人の兄の住所を調査する方法はありませんでしょうか?

 

1.独身の方が亡くなった場合に困る事

内閣府が発表した「少子化社会対策白書」によりますと、2015年のデータで、男女の未婚率が35歳~39歳で23.3%となっており、昨今では生涯独身で過ごされる方も少なくありません。

独身の方が亡くなられた場合、その相続人となるのはほとんどの場合、その方の兄弟姉妹でしょう。
(養子をとっていたり、父母がご健在の場合は話は別ですが)。

兄弟が遠い場所で暮らしている事は良くあると思いますので、独身である被相続人が亡くなる直前は、相続人の友人が世話をしていたと言う事もあるでしょう。

その時に困る事が、「相続人である兄弟姉妹がどこにいるのかが分からない」と言う点です。

被相続人が事前に自分の兄弟姉妹の事をあなたに伝えていてくれていれば良いのですが、急に亡くなった場合、そのような余裕は無いでしょう。

そうすると、被相続人が亡くなった事等を相続人に伝える為、その連絡先を調査する必要があります。

被相続人の自宅に相続人の連絡先の手掛かりがあれば良いのですが、全く手掛かりが無い場合、相続人の戸籍や住民票等の調査を検討しなくてはいけません。

しかし、ここで問題が発生します。

それは「他人(相続人)の戸籍や住民票を、そもそも勝手に取得する事は出来るのか?」と言う点です。

結論を申し上げますと、勝手に取得する事は原則出来ません。

しかし、法律上例外的に他人の戸籍・住民票を取得する事が出来る場合があるのです。

 

2.例外的に他人の戸籍・住民票を取得出来る場合

戸籍や住民票の請求権利者は、それぞれ戸籍法、住民基本台帳法に細かく規定されているのですが、実は、この各法律に他人の戸籍や住民票を取得出来るケースを複数規定しています。その中で

「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍(住民票)の記載事項を確認する必要がある場合」と言う条文があります(戸籍法第10条の2第1号、住民基本台帳法第12条の3第1号)。

つまり、あなたに上記の「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するため」と言う理由があれば、この条文を根拠に相続人の戸籍や住民票の取得を行う事が可能となるのです。

では、この「自己の権利を行使するため」「自己の義務を履行するため」の具体例を考えてみたいと思います。

① 「自己の権利を行使するため」に該当する具体例

あなたが被相続人にお金を貸していた場合が、「自己の権利を行使するため」に該当する代表的な例でしょう。その他、病院の入院費等をあなたが被相続人の代わりに立て替えたケースもそうです。

被相続人に対してあなたが債権を有していた場合は、相続人に対してその権利を行使する事ができ、そのために相続人の戸籍や住民票を取得する事が出来ます。

なお、「自己の権利」は証明する必要があります。

例えば被相続人に対する借用書や、立て替えた際の領収書等で自己の権利を証明する必要があるでしょう。

② 「自己の義務を履行するため」に該当する具体例

あなたが被相続人からお金を借りていたケースが「自己の義務を履行するため」の代表的な例です。

あなたはお金を返さなくてはいけませんので、その為に相続人の戸籍や住民票の取得が出来ます。

③ お金を貸していないし、借りてもいない場合

それでは、あなたが被相続人にお金を貸していないし、借りてもいない場合は一体どうすれば良いのでしょうか?

完全に法律上の根拠を欠きますので、相続人の戸籍や住民票の取得を行う事が出来ないように思えます。

しかし実は、まだ法律上の根拠はあります。それは、あなたが被相続人の財産を管理していた場合です。

民法に、このような条文があります。

(事務管理)
第697条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。

若干分かりにくい条文ですが、あなたのケースに当てはめて説明しますと、

「法律上の義務はないけど、事実上あなたは被相続人の財産の管理を始めたのだから、きちんと管理して下さいね。」と言う意味です。

そしてさらに、民法にはこのような条文があります。

(管理者の通知義務)
第699条 管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。

ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

「本人」とは、事例で言う友人ですが、友人が亡くなった場合は、あなたは相続人の為に被相続人の財産を管理していますので「本人=相続人」となります。

そして条文上、「通知しなければならない」と規定されています。

つまり、法律上あなたには相続人に通知する義務がありますので、この事務管理の条文を根拠にし、相続人の戸籍や住民票を取得する事が考えられます。
 
また、その証拠としては、被相続人の死亡診断書や通帳等が該当するでしょう。

なお、実際に権利の行使や義務の履行の為に相続人の戸籍、住民票を取得する場合は、窓口の手続きがスムーズになるよう、各市区役所等の窓口に事前に問合せをするようにして下さい。

 

3.相続人の住所の具体的調査方法

⑴ 被相続人の住民票を本籍地入りで取得する。

⑵ 上記⑴で判明した本籍地から、被相続人の戸籍(除籍・原戸籍)謄本を、被相続人の兄弟姉妹が出てくるまで出生まで遡って取得する。

⑶ 上記⑵で兄弟姉妹の本籍地が判明するので、その兄弟姉妹の戸籍(除籍・原戸籍)謄本を、過去から現在に向かって取得する。

⑷ 相続人である兄弟姉妹の最新の戸籍謄本を取得出来たら、その本籍地をもとに、その相続人の「戸籍の附票」を取得する。

戸籍の附票には、相続人の住民票上の住所が記載されていますので、後はその住所宛てに郵便等を送付して相続人と連絡を取りましょう。

 

4.まとめ

このように、しっかりと法律上の根拠があれば、他人である相続人の戸籍や住民票を取得する事が可能です。

ですが、実際に取得する場合は必ず窓口と相談するようにして下さい。

なお、当事務所ではあなたを代理して、相続人と連絡を取り相続財産の引渡しを行う業務も承っております。

相続人への財産の引渡し等でお困りの場合は、お気軽にご相談下さい。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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