
こんにちは。司法書士の甲斐です。
相続対策はその目的により、様々な手法があります。
今回のテーマである「生命保険の活用」も相続対策の手法の一つになりますので、専門家にご相談をされた方の中には、生命保険の活用をご提案された方もいらっしゃるでしょう。
しかし、この生命保険、加入されている方は経験済みだと思うのですが、契約書の分量が多く非常に分かりづらくなっている事もあります。
そこで今回は、相続対策に絞り、生命保険の基本的な知識やその活用方法をお話ししたいと思います。
1.生命保険とその基本形
生命保険は保険会社が一定の期間(保険期間)に、当事者の一方に一定の出来事(死亡等)が発生した場合、予め定められた基準に従って保険金が支払われる契約です。
生命保険には大きく分けて3つのタイプがあります。
① 定期保険
定期保険は保障が一定の期間内のみ行われ、その期間を過ぎると保障がされないタイプの保険です。
基本的に満期金がない「掛け捨て」タイプなのですが、そのぶん保険料が安くなっています。
② 終身保険
保障が一生涯続くタイプの保険が終身保険です。
その為、どんなに長生きしても亡くなれば保険金が支払われます。
将来保障が必要ではなくなった時には解約を行い、解約返戻金を老後資金等、多目的に利用できます。
相続税や葬儀費用など、いつか必ず発生する支出をカバーしたい時にも有効です。
保障が一生涯続きますので、定期保険と比べて保険料が高くなります。
③ 養老保険
養老保険は保障と貯蓄を兼ね備えた生命保険です。
養老保険は保険期間中に万が一のことが発生したときに、あらかじめ設定された金額の死亡保険金を受け取る事が出来ます。
保険期間は一定期間となっており、この間に支払事由に該当する事が発生した時は、いつでも保険金が支払われます。
さらに、万が一のことが起こらずに保険期間が終了したときは、死亡保険金と同額の満期保険金を受け取る事が出来ます。
④ 相続対策ではどのタイプの生命保険が良いか?
相続対策は、残される家族が相続で困らない為に行うのが目的です。
また、人はいつ死ぬのか誰にも分かりませんし、想定以上に長生きする事があります。
その為、相続対策の為の生命保険は一生保障が続く終身保険をベースにして加入する事が基本となります。
2.生命保険の当事者
生命保険に関わってくる当事者も重要になってきますので、簡単にお話ししたいと思います。
① 契約者
保険会社と保険契約を締結し、保険料を支払う義務のある人の事です。
保険契約上の各種権利(解約権等)や義務(保険料の支払い、告知義務)を有しています。
② 被保険者
生命保険における保険の保障を受ける人または保険の対象になる人です。
契約者と被保険者は同一人物の場合もありますが、別人の場合もあります。
③ 保険金受取人
死亡保険金を受け取ることができる人の事です。
契約者が指定します(指定のない場合は、被保険者の法定相続人が保険金受取人になります)。
3.相続対策における生命保険の活用方法
① 相続税対策としての生命保険
生命保険を活用する事で、相続税の課税価額を減らす事が出来ます。
生命保険は被相続人の遺産とは別の財産になりますの、生命保険に加入する事で結果的に遺産を減らす事が出来ます。
ただし、生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」となり、相続税の計算上組み込まれるのですが、「500万円×法定相続人」の非課税枠があります。
例えば、相続人が母と子供2人、合計3人だった場合、死亡保険金のうち、1,500万円が非課税となります。
つまり、現金(預貯金)として財産を持っているより、生命保険に加入した方が相続税が低くなるのです。
② 遺留分対策としての生命保険
「生命保険の死亡保険金は被相続人の遺産にならない」と言う特性を生かし、生命保険を遺留分対策として活用する事も出来ます。
(「遺留分」とは被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が持っている最低相続分です。)
例えば何らかの事情で子供のうちの一人に全ての財産を相続させたい場合、他の相続人の遺留分を侵害する事になります。
他の相続人が親の心情を理解して遺留分を請求しなければ良いのですが、そうでは無い場合、遺留分を巡って相続でもめる事が想定されます。
その時に、遺留分を請求されるであろう側の相続人を保険金受取人とする生命保険に加入しておくのです。
そうすれば、もし他の相続人から遺留分を請求されたとしても、その死亡保険金から支払えば良い事になります。
4.まとめ
以上、簡単ですが相続対策における生命保険の活用方法の基本をご説明しました。
実際の生命保険は非常に種類が多く、さらに複雑なものがあります。
その為、相続対策で生命保険の活用をお考えの場合、必ず保険の専門家にご相談するようにして下さい。