相続放棄をすれば問題無い?相続放棄しても責任はあるんです!

空家相続放棄

こんにちは。司法書士の甲斐です。

最近は相続放棄の件数が増えているようで、このようにニュースにも取り上げられています。

相続するかしないかは各個人の自由であり、相続による様々な責任を負いたくないのであれば、相続放棄をするのも一つの方法です。

ただし、「相続放棄をすれば責任を免れる。何もしなくても良い!」かと言えば、実はそれは少し違うのです。

1.相続放棄を行ったらどうなる?

まずは基本的な事をおさらいしましょう。

相続放棄は家庭裁判所に対して行う手続きなのですが、相続放棄を行った人は、初めから相続人ではなかった事になります。

(相続の放棄の効力)
民法第939条 
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
そして、相続では相続人になれる順位と言うのがあります。
配偶者は常に相続人になるのですが、それ以外の相続人は法律で次のように決まっています。
【第1順位】・・・子供(子供が先に亡くなっている場合は孫。)
【第2順位】・・・父母(父母が先に亡くなっている場合、祖父母。)
【第3順位】・・・兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、甥姪。)
このように、第1順位の相続人がいなければ、第2順位、第2順位の相続人がいなければ第3順位の相続人・・・と言ったように、相続人には順位があります。
例えば相続人である子供が3人いて、その内の1人が相続放棄をしても、第1順位の相続人が残り2人いますので、特に問題になる事はありません。
しかし、相続人である子供全員が相続放棄した場合、第1順位の相続人がいなくなりますので、第2順位の父母、若しくは第3順位の兄弟姉妹が相続人になるのです。
その為、記事にあるように、相続放棄を行い受理されれば、直ぐに相続財産管理人が選任されるわけではありません。
また、自動的に選任されるわけではなく、利害関係人(相続放棄をした人等)や検察官の申立てにより、初めて相続財産管理人は選任される事になります。

2.相続放棄しても、責任は免れない!?

相続放棄を行い家庭裁判所で受理されたら、初めから相続人ではなかった事になります。

それでは、相続放棄を行った人は一切の責任から免れるのでしょうか?

実は、そうでは無いんですね。

民法にこのような条文があります。

(相続の放棄をした者による管理)
民法第940条 
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
(第2項省略)
このように、相続放棄をした場合、次順位の相続人が相続財産の管理を始める事ができるまでは、キチンと相続財産の管理を行う必要があります。
例えば、上記ニュースに出てきたボロボロの家屋が相続財産の場合、相続放棄すれば全てOK!と言う訳ではありません。
家屋が倒壊して誰かに損害を与えた場合、相続放棄をしたとしてもその損害を賠償しなくてはいけない可能性があるのです。

3.相続財産管理人を選任する場合の注意点

第1~第3順位の全ての相続人が相続放棄等を行った場合、相続人が存在しない状態になります。

この時に家庭裁判所に対し、利害関係人(相続放棄をした人等)が相続財産管理人選任の申立てを行う事が出来ます。

そして相続財産管理人が相続財産の清算手続きを行い、最終的に相続財産が国の物になるのですが、この時に注意点があります。

それは、申立ての時に予納金(相続財産管理人の報酬に充てるお金)が必要になる場合があるのですが、これが高額(100万円~)になる可能性があります。

相続財産に現金・預金があれば、それらが相続財産管理人の報酬に充てられるのですが、十分な現金・預金が無い場合、上記のような高額な予納金となる可能性があるのです。

その為、ボロボロの家屋が相続財産の場合で、相続財産管理人の選任を申し立てる場合は、予納金をどのようにして準備するか、検討をする必要があります。

なお、相続財産管理人の報酬を支払って余った予納金は、申立人に返却されます。

4.まとめ

「相続の事は子供達が好き勝手にすればいいんだよ。」

このような事を仰られる方、まだまだ多いのです。

確かに、家族の仲が何でも言い合えるぐらい良ければ、遺産を巡っての争いは考えにくいでしょう。

しかし、相続の問題は何も遺産を巡るトラブルだけではなく、ニュースで出てきたような、遺産の管理や処分に関する問題も出てきます。

この問題を未然に防ぐ為には、子供達に頼るのではなく、やはり遺産を残す側が積極的に考える必要があるのです。

それこそが、遺産を残す側の最後の責任であり、家族に対する最後の愛情なのですから。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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町田・横浜FP司法書士事務所
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