
こんにちは。司法書士の甲斐です。
最近は相続放棄の件数が増えているようで、このようにニュースにも取り上げられています。
相続するかしないかは各個人の自由であり、相続による様々な責任を負いたくないのであれば、相続放棄をするのも一つの方法です。
ただし、「相続放棄をすれば責任を免れる。何もしなくても良い!」かと言えば、実はそれは少し違うのです。
1.相続放棄を行ったらどうなる?
まずは基本的な事をおさらいしましょう。
相続放棄は家庭裁判所に対して行う手続きなのですが、相続放棄を行った人は、初めから相続人ではなかった事になります。
【第2順位】・・・父母(父母が先に亡くなっている場合、祖父母。)
【第3順位】・・・兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、甥姪。)
2.相続放棄しても、責任は免れない!?
相続放棄を行い家庭裁判所で受理されたら、初めから相続人ではなかった事になります。
それでは、相続放棄を行った人は一切の責任から免れるのでしょうか?
実は、そうでは無いんですね。
民法にこのような条文があります。
3.相続財産管理人を選任する場合の注意点
第1~第3順位の全ての相続人が相続放棄等を行った場合、相続人が存在しない状態になります。
この時に家庭裁判所に対し、利害関係人(相続放棄をした人等)が相続財産管理人選任の申立てを行う事が出来ます。
そして相続財産管理人が相続財産の清算手続きを行い、最終的に相続財産が国の物になるのですが、この時に注意点があります。
それは、申立ての時に予納金(相続財産管理人の報酬に充てるお金)が必要になる場合があるのですが、これが高額(100万円~)になる可能性があります。
相続財産に現金・預金があれば、それらが相続財産管理人の報酬に充てられるのですが、十分な現金・預金が無い場合、上記のような高額な予納金となる可能性があるのです。
その為、ボロボロの家屋が相続財産の場合で、相続財産管理人の選任を申し立てる場合は、予納金をどのようにして準備するか、検討をする必要があります。
なお、相続財産管理人の報酬を支払って余った予納金は、申立人に返却されます。
4.まとめ
「相続の事は子供達が好き勝手にすればいいんだよ。」
このような事を仰られる方、まだまだ多いのです。
確かに、家族の仲が何でも言い合えるぐらい良ければ、遺産を巡っての争いは考えにくいでしょう。
しかし、相続の問題は何も遺産を巡るトラブルだけではなく、ニュースで出てきたような、遺産の管理や処分に関する問題も出てきます。
この問題を未然に防ぐ為には、子供達に頼るのではなく、やはり遺産を残す側が積極的に考える必要があるのです。
それこそが、遺産を残す側の最後の責任であり、家族に対する最後の愛情なのですから。