相続放棄は弁護士、司法書士のどちらでも良い理由を分かりやすく解説します

相続放棄

【事例】
Q:私の父は半年前に亡くなったのですが、先日、消費者金融から父の借金について返済を求める通知書が届きました。

父にはこれと言った財産は無く、預金も数百円程度だった為、父が亡くなってから3ヶ月以上経過していますが、相続放棄をしたいと考えています。

しかし、色々とインターネット等で調べてみると、3ヶ月経過後の相続放棄は非常に難しい事が分かったため、手続き専門家にお願いしたいと考えています。

相続放棄を行う事が出来る専門家は弁護士と司法書士なのですが、手続き上の違いが良く分からず、結局のところどちらにお願いすれば良いか悩んでいます。

相続放棄は弁護士にお願いした方が良いのでしょうか?それとも司法書士でも大丈夫なのでしょうか?

A:東京及び横浜の家庭裁判所の運用を見る限り、弁護士でも司法書士でもその手続きに差はありません。

相続放棄の実務経験、コスト面等からどちらの専門家にお願いするかを検討すると良いでしょう。

1.相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人の相続人としての地位を失わさせる手続きです。

相続放棄を行うと初めから相続人ではなかった事になります。

【民法第915条第1項】
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

【民法第938条】
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

【民法第939条】
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

このように、相続放棄は家庭裁判所に対して行う手続きで、さらに「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」(熟慮期間)と言う期限が定められています。

そしてこの熟慮期間のスタート時点ですが、最高裁判例で下記のように判断されています。

『熟慮期間は、相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人においてこのように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条第1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算するのが相当である。(最高裁昭和59.4.27判決 民集38.6.698、判時1116.29)』

つまり、『熟慮期間は原則として相続人が被相続人が亡くなった事、自分が相続人である事実を知った時からスターとすべきだが、相続人がその事実を知った場合でも、

A:熟慮期間中に相続放棄を行わなかったのが、被相続人に全く財産が無いと信じた為であり、かつ

B:被相続人の生前の状況からみて、相続財産の調査が著しく困難な事情があり、

C:続人が相続財産が無いと信じる事について相当な理由があると認められる場合

相続人が相続財産(マイナスの財産も含む)の存在を知った時から 熟慮期間は起算すべきである』

このように被相続人が亡くなってから3ヶ月を経過しても相続放棄が出来る事があり、家庭裁判所でも柔軟な取り扱いがされているのですが、それは上記のA~Cの論点をきちんと押さえる必要があります。

2.相続放棄における弁護士と司法書士の違い

それでは、相続放棄を行う上で弁護士と司法書士の違いは一体何なのか?と言う事ですが、これは簡単に言いますと「代理人と書類作成者」の違いです。

弁護士は代理人ですので、あなたの代わりに相続放棄に必要な書類を作成するのは当然として、さらに家庭裁判所との対応も全て行ってくれます。

つまり、あなたは弁護士に依頼さえすれば、後は何もしなくても良いのです。

一方、司法書士は裁判所に提出する書類の作成を業務の一つとしています。

相続放棄に必要な書類は作成しますが、その後の家庭裁判所との対応はあなたが行う必要があります。

このように弁護士、司法書士の特長を並べてみると弁護士の方が圧倒的に良い印象がありますよね。

代理人として、家庭裁判所とのやりとりも行ってくれるくれますので非常に頼もしく見えます。

しかし、私の知る限り、東京と横浜の家庭裁判所の運用を見てみますと、この事情は少し変わってくるのです。

3.家庭裁判所の運用

相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出しますと、後日家庭裁判所より「照会書」が届きます。

これは本当に相続放棄を行うのか?相続放棄を行うのはあなたの意思ににもとづくものなのか?等を家庭裁判所が確認するものです。

この照会書に対して回答をする(家庭裁判所に郵送する)事で、相続放棄の手続きが進みます。

実はこの照会書の運用方法が独特なのです。

相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合、照会書も本来は代理人である弁護士に送付されるはずです。

しかし、東京、横浜の家庭裁判所(他地方の裁判所もそうかもしれませんが)は、本人に直接照会書を送付する運用を行っています。

これは本当に異例の事で、私の知り合いの弁護士さんも若干怒っていました。

弁護士が代理人についているのであれば、窓口は全て弁護士です。

それなのに直接本人に問い合わせを行うと言う事は、家庭裁判所としては本人の意志を絶対に確認したいと言う表れなのでしょう。

つまり、相続放棄に関しては弁護士に依頼しても司法書士に依頼しても、その手続きの流れはほとんど変わらないのです。

その為、相続放棄の実務経験があり、かつ相続放棄に必要な判例をしっかりとおさえているのであれば、弁護士、司法書士どちらにご依頼されても大丈夫と言う結論になります。

【平成29年10月21日追記】
上記のように家庭裁判所は照会書を送付し本人の相続放棄の意思を確認の上、相続放棄を受理すると言う運用を行っています。

ところが、先日私が書類作成した、被相続人が亡くなってから3ヶ月経過している場合の相続放棄について、照会書が送付されず、直接相続放棄が受理された事がありました。

相続放棄を行ったのが被相続人が亡くなってから3ヶ月経過していても、相続放棄の為の書類がしっかりと作成されていれば、照会書を本人に郵送する事なく、相続放棄を受理する取扱いがされているようです。

4.行政書士は相続放棄の手続きを行う事が出来るのか?

ところで、一部の行政書士がホームページ等で相続放棄を取扱業務として宣伝を行っている事があります。

その為、相続放棄は行政書士も出来るように思われるかも知れませんが、相続放棄の手続きを仕事として行う事が出来るのは、弁護士(代理)と司法書士(書類作成)のみです。

行政書士は相続放棄に関して、代理も書類作成も行う事は出来ません。

もし行った場合は弁護士法違反若しくは司法書士法違法となりますので、十分にご注意下さい。

5.まとめ 

以上、手続きの流れについては弁護士、司法書士どちらでも変わりはありません(変わってくるのは、おそらく報酬だけでしょう)。

その為、特に被相続人が亡くなってから3ヶ月経過している場合の相続放棄について、おさえるべき各判例を十分に理解しているのであれば、司法書士でも十分にご相談者の問題を解決する事が出来ます。

後は相続放棄の実務経験が豊富なのか、実際にお話しをしてみて信頼出来るか等を判断基準にして、ご依頼をすると良いでしょう。

当事務所は3ヶ月後の相続放棄の実績が豊富にあります。

後から相続放棄の無効を争われないように、判例の趣旨をきちんと踏まえた書類の作成を行っております。

相続放棄の事でお困り、お悩みの場合はお気軽に当事務所にご相談下さい。

【本サイトでは、相続手続きや家族信託について網羅的に解説しています。今後のご参考にもなる情報でもありますので、よろしければブックマーク等を行い、後からでも閲覧できるようにする事をお勧めします。】

 

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この記事を書いた専門家

横浜市泉区の司法書士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から、自分らしい人生を送る為の認知症対策、相続対策をご提案します。元俳優/福岡県北九州市出身/梅ヶ枝餅、かしわめし弁当が大好き/趣味は講談/

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横浜相続困りごと相談室(司法書士甲斐智也事務所)
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