子供の時に虐待された、大嫌いな父親の相続を絶対にしたくない場合

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

家族のかたちは星の数程あります。

まさに絵に描いたようたアットホームな家庭もあるでしょうし、その逆もあります。

親と仲が悪い、特に親から虐待された方は、親が亡くなったとしても相続はしたくない、もう関わってほしくないと思うのが自然でしょう。

しかし、親から虐待されたとしても、あなたはその親の子供です。

法律上、親子の縁を切る事はできません。

そのような時、相続では一体どうすれば良いのでしょうか?

今回は、「父親から虐待された子供が、その父親の相続をしたくない時にどうすれば良いか?」と言うお話です。

1.何もしない、無視をすると言う選択肢はあるのか?

まずは親の相続をしたくない人が、真っ先に思いつく事からお話したいと思います。

つまり「あんなひどい事をした親の事なんて知るもんか!絶対に何もしないから!家族から連絡があったとしても無視してやる!」

このように、父親の相続について、本当に何もしなくても良いのか?と言う点です。

結論から先に言いますと、父親の相続について「何もしない」と言う選択肢はナシです。

何もしなければ、あなたに不利益しかありません。絶対に何らかの対応は行うべきです。

① 父親の借金を背負うかもしれない

もしあなたが嫌う父親が、消費者金融等から借金していて亡くなった場合、その借金の支払義務をあなたが負う事になります。

借金取りにとっては、あなたの「あんな父親は知らない!関係がない!!」と言う理屈は、残念ながら通用しません。

相続について何もしなければ、あなたは憎い父親の借金を背負う事になるのです。

② あなたの配偶者や子供に迷惑がかかるかもしれない

もしあなたに配偶者やお子さんがいて、あなたが父親の相続について何もしないで亡くなった場合、その責任をとるのはあなたの配偶者やお子さんです。

あなたがもし亡くなった場合、大嫌いな父親を相続した地位を、あなたの配偶者や子供が引き継ぐ事になるのです。

父親の相続について何もしていなかったら、他の相続人との話し合い等の後処理を、大切なあなたの配偶者や子供が行う事になるのです。

あなたの大切な家族に、そのような事をさせたいですか?

2.大嫌いな父親の相続を行わない方法

父親の相続は無視する事はできませんが、キチンと法律上の対応を行う事で、あなたは父親の相続から離脱する事ができるのです。

① 相続放棄

これは有名ですね。

相続放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。

預貯金、不動産等のプラスの財産だけではなく、借金等のマイナスの財産も相続しなくてすみます。

もっと言えば、相続放棄を行う事で、あなたは父親の相続人ではなくなりますので、その後の面倒な手続きをすべてパスする事ができます。

注意点は家庭裁判所への申述が必要である事、少し知識が必要な事と、相続放棄ができる期間が定められている事です。

相続放棄については詳しい事はこちらをご覧ください。

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② 相続分の譲渡

相続が発生するとその相続財産は、各相続人の共有状態になります。

相続分の譲渡とは、この自己の共有持分を遺産分割協議の前に、他の相続人もしくは相続人ではない第三者に譲渡する手続きです。

相続分の譲渡を行う事で、他の相続人との遺産分割協議を行う必要がなくなり、事実上その相続から離脱する事ができます。

相続放棄と違う部分は、相続分を譲渡する者、譲受ける者双方の意思表示のみで出来る事、(ただし、通常は相続分譲渡証明書等の書面を作成します)遺産分割協議前であればいつでも良く、期間が定められていない事等です。

また、相続分の譲渡を行っても相続人としての地位はそのままの為、借金等のマイナスの財産の支払義務は免れない事にも注意が必要です。

ちなみに、相続分の譲渡は有償でも無償でも行う事ができます。

 

【相続分譲渡証明書の例】

相続分譲渡証明書

 

最後の本籍 横浜市泉区和泉中央北南一丁目12345番地
被相続人  山田太郎
生年月日  昭和〇年〇月〇日
死亡日   平成〇年〇月〇日

上記被相続人の相続人である木村花子(住所 横浜市泉区和泉が丘北町三丁目1番1号)は、その相続分の全部を、山田一郎(住所 横浜市戸塚区戸塚南9876番地)に譲渡し、山田一郎は木村花子の相続分を譲り受けた事を証明します。

平成〇年〇月〇日

住所  横浜市泉区和泉が丘北町三丁目1番1号

譲渡人 木村 花子(実印)

住所  横浜市戸塚区戸塚南9876番地

譲受人 山田 一郎(実印)※認印でも可

 

③ 相続分の放棄

相続分の譲渡とほぼ同じです。

違う部分は、相続分の譲渡は譲渡される側の承諾が必要であるところ、相続分の放棄は単独の意思表示のみで出来る事です。

また、(相続放棄と言葉は似ていますが)、借金等のマイナスの財産の支払義務は免れない事は相続分の譲渡と同じですので、注意が必要です。

※注意

遺産分割調停外で作成した、相続分を放棄した書面では、不動産の相続手続きは出来ません。

遺産に不動産がある場合、家庭裁判所の相続放棄か相続分の譲渡を行うようにしましょう。

3.まとめ

繰り返しになりますが、どんなに父親が憎くても、「何もしない」と言う選択肢は絶対に行わないようにして下さい。

何もしなければ、確実にあなたの不利益になります。

父親は既に亡くなっています。

それなのに、あなたの人生がまだ父親に振り回される理由はないはずです。

その為、相続したくないのであれば、相続放棄や相続分の譲渡等、必ず何らかの対応を行うようにしましょう。

あなたらしく生きていく為に、父親からの呪縛から解放される為に、しっかりと決断をしていきましょう。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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