
こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回の記事は、他家に嫁いだ後の実家の相続についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。
(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)
【事例】
Q:実家の相続の事で、どうしたら良いか分からなくなりました。父が先月亡くなり、遺産は自宅と預貯金が3,000万円程あります。
相続人は母と長女である私、そして弟の3人です。
この間、父の遺産についてどうするか3人で話し合ったのですが、どうやら母と弟は私に相続を放棄してほしいみたいなのです。
私の実家は栃木県のとある田舎です。
この地域では昔から、長男が家の事を全て継いで、他家に嫁いだ者は実家の事には関わらない、と言う風習があります。
近所の目もある事から、母と弟は私に相続を放棄してほしいと思っているようです。
しかし、私は父の娘であり、相続を放棄しろと言われた事は父の娘である事を否定された事と同じです。
その為、別に遺産が欲しいわけではないのですが、あくまで相続人としての権利を主張したいと思っています。
とは言っても身内で争う事はしたくありません。このモヤモヤとした気持ち、一体どうすれば良いのでしょうか?
1.他家に嫁いだ場合の相続の権利
まず、大前提を押さえておきましょう。
例え他家に嫁いだとしても、相続人の地位は消滅しません。
その為、事例のように父親が亡くなった場合、娘である父親の子は間違いなく法定相続人ですので、相続をする権利があります。
しかし、(特に田舎の方では)事例のように「長男が家の事を全て継ぐ」と言う風習がある所があります。
なぜこのような風習があるのか?実はこれは旧民法が関連してきます。
旧民法の相続では『家督相続』と言う制度があり、被相続人が亡くなった場合に、長男が被相続人の全財産を相続する事を原則としていました。
その為、未だに「長男が全てを継ぐ」と言う風習が残っている地域があるのです。
しかし、法律上は相続人は法定相続分において平等ですし、そもそも守るべき「家」と言う概念も現在は変化しておりますので、「長男が全てを継ぐ」と言う考え方が時代に合わなくなったのかも知れません。
2.事例の場合の対応方法
母と弟の言う通り、相続を放棄をしてしまえば楽かも知れませんが、それではご自身の気持ちもモヤモヤしたままで、結局何の解決にもならないと思われます。
そうであればご自身が胸の内に大事にしまわれている「相続を放棄する事は、父の娘である事を否定されているようで嫌である事」をきちんと伝えるべきなのではないでしょうか?
そこでお互いに感情的になるようであれば、中立的な第三者に立ち会ってもらい、話を整理してもらう、と言った方法もあります。
また、ADRと言った、裁判外で専門家が関与して遺産分割協議をまとめる制度もあります。
(正確に言いますと、遺産分割協議がまとまっていない、もめている原因を究明して、どうすれば相続人全員が合意出来るか考えてもらう、その気付きの為のヒントを専門家が考える、と言った事を行います。)
3.まとめ
遺産分割協議はどうしても遺産をどのように分けるか、と言った話がメインですので、「財産目当て」と他の人に思われて嫌な思いになるかも知れません。
しかし、モヤモヤした状態では今後の家族との関係も良好にはなりません。
まずは胸の内をきちんと話す事を心がけましょう。
当事務所では相続手続きの中で、遺産分割協議のお手伝いも行っています。
実際に調停で使用されている技法を用いて、相続人全員の方が納得できるゴールに向かうお手伝いをさせて頂いております。
遺産分割協議の事でお困り、お悩みの場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。