
こんにちは。司法書士の甲斐です。
あなたは、相続手続きを行った経験はありますか?
既にご家族の方が亡くなった方は経験されたと思うのですが、まだ経験されていない方も多いはず。
それもそのはずで、通常相続手続きは両親が亡くなった時に行うもので、つまり最高でも2回ぐらいしか経験出来ないものです(本来は人が亡くなる事は経験したくないのですが・・・)。
つまり、ほとんどの方が相続手続きが未経験である事が当たり前なのです。
しかし、相続手続きは未経験と言っても法律に則って行う必要があり、法律の事や様々な手続きを勉強するだけでも相当の時間がかかってしまうのですが、その勉強を行う上でさらに別の問題も発生します。

はぁ、困ったなぁ・・・

どうされたのですか?

実は、二ヶ月前に亡くなった父の相続の事で、その後の相続手続きをどのように行うのかインターネットで調べていたのですが、どのサイトも書いてる内容が難して良く分からないのです。

簡単に解説してくれているサイトもあるにはあるのですが、間違った内容が書かれている事があり、何をどう信じれば良いか分からないのです。

そうですね。弁護士や司法書士と言った法律家が書いた相続に関する記事は、一般の方にとってみれば非常に分かりにくく書いていますね。

また、専門家ではない会社が運営しているサイトは、分かりやすさと言う点では法律家よりも優れているでしょう。しかし、専門家ではありませんので、情報の不正確さが問題になりますね。
このように、インターネットの登場で一般の方も相続手続きに関する情報を手に入れる事は簡単になりました。
しかし、弁護士や司法書士が書いた相続手続きに関する記事は難しい言葉で書かれていて、私が読んでも非常に分かりにくい事があります。
また、昨今では「遺産相続弁護士広場」「相続弁護士ナビ」「大人の相続」等、弁護士や司法書士と言った専門家を検索できる便利なポータルサイトがあります。
ところが、そのサイトを運営している会社はごく普通の会社であり、相続の専門家ではありません。
その為、相続手続きに関して基本中の基本である内容の事でも、誤った情報が記載されている事があり、それを信じた一般の方が不利益を被る事があります。
今回はそのように、「相続についてどの情報を信じれば良いかが分からない方」に対して、相続手続きのやり方や流れをどこよりも分かりやすく、かつ正確にお話していきたいと思います。
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1.絶対に間違えてはいけない、「相続人」
まずは、相続手続きで絶対に間違えてはいけない、「相続人」は一体誰になるのか?と言うお話をします。
万が一誰が相続人になるのかを間違えてしまった場合、その後の相続手続きが無効となります。
ここはしっかりと正確に理解するようにしましょう。
なお、相続では亡くなった人の事を『被相続人』、被相続人の権利を引き継ぐ事ができる人を『相続人』と呼びます。
① 必ず相続人になる「配偶者(夫、妻)」
分かりやすく、サザエさんの「磯野家」の家系図で説明しましょう(注意:一部省略しています)。
仮に波平さんが亡くなったとします。
その時に、絶対に相続人になるのが、妻(配偶者)であるフネさんです。
配偶者は常に相続人になる事は、民法でしっかりと規定されています(民法第890条)。
ちなみにここで言う「配偶者」とは、法律上の配偶者の事です。
いわゆる「内縁」「事実婚」の配偶者は相続人にはなれません。
② 第一順位の相続人「子供」
それでは、フネさん以外で相続人となる人はいないのでしょうか?
実は、まだまだ民法では相続人の順位の事が規定されています(民法第887条)。
磯野家で言えば、波平さんの子供である、サザエさん、カツオ君、ワカメちゃんがフネさんと同様に相続人になります。


あれ?マスオさんも相続人になるんじゃないですか?マスオさんは婿養子でしょ?


マスオさんは、あくまで磯野家で生活しているだけです。波平さんと養子縁組をしているわけではありませんので、波平さんの相続人にはなれません。
非常に勘違いしやすいのですが、「婿養子」では相続人にはなれません。
あくまで被相続人と養子縁組を行い、法律上の親子関係になっている必要があります。
③ もし子供が先に先に亡くなった場合、孫が相続人になる「代襲相続」
これからはもしものお話をしたいと思います。
波平さんが亡くなるよりも先に、サザエさんが亡くなっていた場合の相続関係はどうなるのでしょうか?
上記の考え方では、フネさん、カツオ君、ワカメちゃんが相続人になりそうですね。
でもそうすると、可哀想なキャラクターがいます。それはズバリ、タラちゃんです。
本来、サザエさんが取得する遺産もあるはずです。
その遺産は将来、サザエさんの子供であるタラちゃんに引き継がれるかもしれません。
それなのに、亡くなる順番が前後しただけで遺産を取得する事ができなくなるなんて、理不尽だと思いませんか?
そのため、民法では、子供が被相続人より先に亡くなっている場合、その子供(被相続人から見たら孫)がいた場合、孫が相続人となる事が決められているのです。
これを『代襲相続』と呼びます。
④ 第二順位の相続人、「父母(祖父母)」
それでは次のパターンです。
波平さんが亡くなった時に子供(カツオ君、ワカメちゃん、サザエさん)や孫(タラちゃん)がいない場合、誰が相続人になるのでしょうか?
配偶者であるフネさんが相続人になる事は当然です。
ではそれ以外に誰が相続人になるのかと言いますと、波平さんの父母(父母がいない場合は祖父母)が相続人になります(民法第889条1項1号)。
⑤ 第三順位の相続人、「兄弟姉妹(甥姪)」
それでは、また別のパターンをご紹介しましょう。
波平さんが亡くなった時に子供や孫、さらに父母や祖父母もいない場合、フネさん以外に誰が相続人になるのでしょうか?
この場合は実は、波平さんの兄弟姉妹である海平さん、なぎえさんが相続人になります(民法第889条1項1号)。
なお、兄弟姉妹が相続人になる場合も、代襲相続の制度があります。
仮に波平さんよりも先になぎえさんが亡くなっていた場合、なぎえさんの子供である(波平さんから見たら甥の)ノリスケさんが相続人になります。
⑥ 相続人のまとめ
それでは、誰が相続人になるのかをまとめてみましょう。
・夫、妻(配偶者) → 常に相続人になる。
(第一順位~第三順位の相続人と同順位)
【配偶者以外の相続人】
・第一順位の相続人 → 子供(孫)
・第ニ順位の相続人 → 父母(祖父母)
・第三順位の相続人 → 兄弟姉妹(甥姪)
ポイント:相続人は優先順位(第一順位から第三順位)があり、それとは別に配偶者は常に相続人になります。
2.相続人の調査・確定のための被相続人の戸籍謄本の取得
誰が相続人になるのかを理解する事ができたら、実際の相続手続きのお話しに移りたいと思います。
まず、どのような相続手続きを行うにしても、基本中の基本として、『被相続人の出生から死亡時までの戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本を揃え、相続人を確定させる』事が必要になってきます。
戸籍謄本を取得しなければ、相続手続きが前に進みません。
早急に集めるようにしましょう。
① なぜ、相続手続きに戸籍謄本等が必要なのか?
相続手続きを行う相続人は、亡くなった方に配偶者がいるのか、子供は何人いるのか、と言った情報は当然ご存知だと思います。
しかし、相続手続き先である、銀行や法務局等は亡くなられた方の相続人が一体誰なのかが分かりません。
その為、戸籍謄本と言った客観的な資料で相続人が誰なのかを明らかにする必要があるのです。
② なぜ、被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等が必要なのか?
戸籍は様々な理由で新しく作成されます(例えば、結婚や本籍地の変更、法改正等)。
実は戸籍が新しく作成された場合、作成前にあった古い情報は、新しく作成された戸籍には反映されないと言うルールがあるのです。
これはどう言う事かと言いますと、例えば本籍地が横浜市のAさんBさん夫妻にCとDと言う子供がいたとします。
全員が同じ戸籍に載っているのですが、Cさんは結婚の為、Aさんの戸籍から除かれました(これを『除籍』と言います)。
その後、Aさん家族は本籍地を川崎市に変更後、Aさんが亡くなってしまったケースを考えてみましょう。
この状況の時に、Aさんの最後の本籍地である川崎市の戸籍謄本を取得すると、Aさんと配偶者のBさん、そして子供のDさんしか乗っていないのです。
つまり、Cさんの情報は川崎市で新しいAさんの戸籍が作成された時に、Cさんの情報が引き継がれず、その結果川崎市の戸籍にはCさんの情報は掲載されないのです。
その為、一番最新の川崎市の戸籍謄本だけではAさんの相続人を確定する事が出来ない為、被相続人については出生まで遡った全ての戸籍謄本等を集める必要があるのです。
③ 具体的な戸籍謄本の取得方法
被相続人の本籍地の市区役所等で被相続人の戸籍謄本等を取得します。
戸籍謄本の申請書を記入し、窓口に提出する際に、『相続手続きで使用するため、出生までさかのぼった全ての戸籍謄本が欲しい』旨を説明しましょう。
このように説明する事で、その本籍地(市区役所等)で取得できる、被相続人の全ての戸籍謄本等を取得する事ができます。
もし被相続人が別の本籍地から転籍していた場合、その別の本籍地の市区客所等で同じように戸籍謄本等を取得し、被相続人の出生までさかのぼった全ての戸籍を取得するようにしましょう。
→現在(最新)の戸籍謄本の事です。
・除籍謄本
→戸籍に記載されている人が全員他の本籍地に移動等行い、その戸籍そのものが除かれた(除籍された)謄本の事です。
・改正原戸籍
→除籍謄本とほぼ同じ意味ですが、こちらは法律の改正によって新たに戸籍が作成された為、除籍された戸籍謄本の事を指します。
④ 被相続人の戸籍謄本等以外に、相続手続きに必要な戸籍謄本等の種類
相続人を確定させる為には、被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等以外に、相続人の戸籍謄本が必要になります。
具体的に以下の戸籍謄本になります。
【相続人が配偶者の場合】
配偶者は原則として、被相続人と同じ戸籍に記載されていますので、配偶者用に別途戸籍謄本を取得する必要はありません。
ただし、被相続人が亡くなってから何年も後に戸籍謄本を取得する場合、事情によって被相続人が除籍されている可能性がありますので、その場合は配偶者の戸籍謄本が別途必要になります。
【相続人が子供の場合】
子供の戸籍謄本が必要になります。
【子供が亡くなっていて、孫が代襲相続する場合】
子供の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等+孫の戸籍謄本が必要になります。
【相続人が父母の場合】
父母の戸籍謄本が必要になります。
なお、被相続人の子供が亡くなっている場合は、その子供の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等が必要になります。
さらに、孫がもし亡くなっている場合は、子供と孫の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等が必要になります。


何だか複雑で良く分からないのですが・・・。


つまり、第一順位の相続人(子供や孫)が存在しない事を戸籍上で証明する必要があると言う事です。
【相続人が兄弟姉妹や甥姪(代襲相続)の場合】
兄弟姉妹の戸籍謄本が必要になります。
なお、被相続人の子供や孫、父母や祖父母が亡くなっている場合は、その亡くなっている方の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等が必要になります。
さらに甥姪が代襲相続する場合、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等+甥姪の戸籍謄本が必要になります。


あ~もう、難しすぎて頭がパンクしそうですっ!!


確かに、戸籍謄本を取得された事がない一般の方にとってみれば、非常にややこしく、難しい分野ですね。その為、相続手続きを司法書士等に依頼する事を考えられている場合、戸籍謄本の取得も司法書士等にお願いした方が手っ取り早いかもしれませんね。
⑤ 被相続人の本籍地が分からない場合
戸籍謄本を取得するためには本籍地が分かっていないと取得する事ができないのですが、本籍地は住所とは異なります。
その為、被相続人の正確な本籍地を知っている人は中々少ないと思いますが、実は本籍地は簡単に調べる事が出来ます。
その方法は、被相続人の住民票を『本籍地入り』で取得する事により、住民票に本籍地が掲載されます。
この方法であれば正確な本籍地を確認する事が出来ます。
3.遺産(相続財産)の調査
被相続人が亡くなり相続が開始されると、被相続人が有していた権利や義務は原則として、相続人に引き継がれる事になります。
その為、被相続人にどのような遺産があるのかを調査しなければ、どのような財産を引き継げば良いのかが、相続人として把握する事できません。
また、後からご紹介する限定承認、相続放棄を行う上での判断材料にもなりますので、戸籍謄本等の取得と同時並行で被相続人の遺産を調査しましょう。
① 遺産(相続財産の種類)の種類
プラスの遺産の具体例
土地、建物(アパート等の投資用の収益物件も対象になります)。借地権、借家権、定期借地権、地上権、貸借権等の他人の不動産を利用する権利。
※ただし、他人の物をタダで利用できる『使用貸借』は相続の対象とはなりません
現金、預貯金、株式、国債、社債、貸付金、売掛金、手形、小切手等。
家財道具一式、車、バイク、船舶、書画、骨董品、貴金属(宝石類)、美術品等。
慰謝料請求権、損害賠償請求権、電話加入権、ゴルフ会員権、特許権、著作権等
遺産になる物はプラスの遺産だけではありません。マイナスの遺産の具体例
他人に対する借金等、いわゆる「マイナスの遺産」も原則として相続されます。
借金、買掛金、住宅ローン、手形、小切手等。
未払いの所得税と住民税、その他の税金等。
未払いの家賃と地代、未払い分の医療費等
さらに、被相続人の権利であっても遺産にはならない物があります。遺産にはならない物
祭祀(祖先を祭る事)を行うものがそれぞれ引き継ぎます。
一身専属権とは、分かりやすく言えば「その人固有の権利」の事です。
その人固有の権利であるから、相続の対象とはなりません。
具体的には年金請求権、扶養請求権、生活保護の受給権等です。
例えば、婚約をしていた場合の権利です。当たり前ですが、相続の対象とはなりません。
② 遺産の調査方法
現金等は被相続人が使っていた財布の中、自室の机の中に封筒で入っている場合があります。
また、いわゆる『タンス預金』も行っている被相続人もいらっしゃいますので、ご自宅をくまなく調査するようにしましょう。


私の経験上、非常に家賃の安いアパートに住んでいらっしゃった方の遺品整理をしていた時に、押入れから数千万円の現金が出てきた事があります。
預金
預金は被相続人の自宅等を調べ、通帳やキャッシュカードがないかを調べ金融機関名、支店名を特定します。
通帳やキャッシュカードが無かったり、有ったとしても被相続人の従前の生活状況から考え、明らかに残高が少ない場合は近隣の金融機関からローラー作戦的に調べる事は一応可能です。
しかし、それには非常に手間と時間がかかる為、極力通帳やキャッシュカード、その他金融機関からの郵送物が無いかをチェックし、金融機関、支店名を特定しましょう。
なお、最近はネット銀行を利用している方もいらっしゃるので、被相続人のスマートフォンやパソコン等を調査し、ネット銀行を利用していなかったか確認も忘れないようにして下さい。
不動産
不動産の特定は不動産の権利証や毎年4月頃に市区役所から送付される固定資産税納税通知書を確認すると、不動産の地番や家屋番号が分かります。
なお、権利証も固定資産税納税通知書も無い場合、市区役所で不動産に関する「名寄帳」を取得すると不動産を特定する事が出来ます。
※名寄帳・・・その自治体でその方が所有している不動産を一覧にした書類です。
株式等・有価証券の場合
被相続人が証券会社で口座を開設していた場合は、証券会社からの郵便物やノベルティ等で特定するようにしましょう。
証券会社で口座を開設しておらず、株式を所有している場合は、株主総会招集通知書等、保有している株式の会社からの郵便物やノベルティで特定するようにします。
他人への貸付金
他人への貸付金も遺産になりますので、親族や知人等にお金を貸していなかったか調査するようにして下さい。
具体的には親族、知人への聞き込みや、通帳の振込の履歴、借用書等の書面から判断します。
借金の調査
借金も相続財産(マイナスの財産)になりますので、調査を行うようにしましょう。
代表的なものは消費者金融やクレジットカードですが、被相続人の財布を調べる事で判明します。
また、消費者金融やクレジットカード会社からの明細でも判明する事があります。
また、親族や知人へ借金をしていた場合は、被相続人が亡くなった事を知った債権者から問い合わせや支払いの督促がある可能性がありますが、その時に順次対応しましょう。
※【注意】
債権者へ問合せを行う場合や、債権者から問い合わせが有った場合でも「支払います」と絶対に言ってはいけません。
借金の残高がいくらあるのかを確認するだけにして下さい。いわゆる時効(5年若しくは10年)によって借金をそもそも支払わなくても良い場合があるからです。
4.遺言の調査
実務上、被相続人が遺言を残されていた場合、遺言の内容に従って相続手続きを行う事になります。
(ただし、相続人全員が合意すれば、遺言とは異なる遺産の分け方を行っても大丈夫です)。
被相続人が遺言を残した事をご家族に伝えない事も多く、その調査に手間暇がかかる可能性がありますが、後から遺言が出てくると色々と大変な事になりますので、その存在の有無をしっかりと調査するようにしましょう。
遺言は大きく分けて、『自筆証書遺言』と『公正証書遺言』の二つがあります。
① 自筆証書遺言
自筆証書は遺言者がその全文を手書きして押印する事で成立する遺言です。
※平成31年1月13日より、財産目録に関しては自筆しなくても良い事になりました。
良くあるパターンとして、自筆の机の中や貸金庫の中、知り合いの弁護士等に預けていたりします。
遺産の調査と同じようにしっかりと調査しましょう。
もし自筆証書遺言を発見した場合、家庭裁判所で『検認』の手続きを行うようにしましょう。
被相続人が亡くなった住所地を管轄する家庭裁判所に対する手続きです。
遺言の有効無効を判断する手続きではなく、遺言の現状等を家庭裁判所が確認し、以後の偽造・変造等を防止する為の手続きです。
【注意点】
自筆証書遺言は法律に定められた条件を満たしていない無効になります。
その為、その条件を満たしていない遺言も良く出てくるのですが、だからと言って勝手に捨てたりしないようにして下さい。
遺言としては無効かもしれませんが、他の法律行為(死因贈与契約とか)としては有効になるかもしれません。
その為、「こんな遺言、無効でしょ?」と思われても、必ず家庭裁判所での検認を行うようにして下さい。


え?そうなんですか?例えば、チラシの裏に書かれたような遺言のようなものでも、検認が必要ですか?


そもそも自筆証書遺言は、どのような紙に書いても良いのです。チラシの裏でも良いですし、封筒にいれなくても良いのです。
② 公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人が作成する遺言です。
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されており、遺言者には正本が渡されます。
その為、自筆遺言と同じようにその公正証書遺言の正本がないか調査を行いましょう。
なお、もし被相続人が公正証書で遺言を作成していた場合、お近くの公証役場で検索をする事ができます。
こちらも併せて利用すると良いでしょう。
5.残高証明書、登記事項証明書及び相続手続きに必要な書類の取得
① 金融機関の場合
遺産の調査が終了したら、各金融機関に連絡して被相続人が亡くなった事を伝え、残高証明書と各金融機関が用意している相続手続きに必要な書類を入手しましょう。
事前に被相続人の通帳を記帳し、その後に各金融機関に連絡を行い、被相続人が亡くなった日時点の残高証明書を入手します。
これを行う事で、被相続人が亡くなってから引き出されたお金の流れが明確に分かりますので、万が一他の相続人が勝手に預金等を引き出していた場合に、それを証明する一つの証拠となります。
なお、通帳が無い場合は、取引履歴等を入手しましょう。
また、金融機関等に残高証明書の発行を依頼する場合は、被相続人が他の支店に口座を持っていなかったか、他のサービスを利用していなかったか(貸金庫等)も確認するのを忘れないようにしましょう。
② 不動産の場合
不動産は最寄りの法務局で必ず登記事項証明書(昔の呼び方で『登記簿謄本』)を取得して、不動産の権利関係を確認しましょう。
登記事項証明書の取得方法は法務局所定の用紙に不動産の所在、地番(建物であれば家屋番号)等を記入し、窓口に提出します。
なお、不動産の地番(家屋番号)と住所は全く異なるものです。住所をもとに申請書を記載しても登記事項証明書を取得できない事があります。
その為、事前に不動産の地番(家屋番号)を権利証や固定資産税納税通知書を参考にして把握するようにしましょう。
万が一、不動産の地番が分からない場合は、法務局で住所から地番を検索する事ができます。電話でも回答してもらえますので、地番が不明確な場合は利用するようにしましょう。
登記事項証明書を取得したら、現在の所有者が被相続人になっているか(先代の名義のままになっていないか)、抵当権等の担保権が設定されていないかをチェックするようにしましょう。
6.限定承認、相続放棄の検討(三ヶ月以内)
遺産の調査を行い、被相続人が亡くなってから三ヶ月以内に相続するか、限定承認するか、相続放棄を行うかを決めます。
① 限定承認とは?
限定承認とは、被相続人のプラスの財産からマイナスの財産を支払い、もし仮にマイナスの財産が残ったとしても、相続人がそれ以上の支払いを免れる事が出来る法律上の制度です。
本来、マイナスの財産である借金等も相続人に引き継がれ、相続人にその支払義務が残るのが原則です。
しかしながら、相続人が想定出来ないような高額な借金を被相続人がしていた場合や、プラスの財産がいくらあるのかが把握するのが難しい場合に、被相続人のプラスの財産の中からマイナスの財産のみを支払えば良いと言う制度が限定承認です。
デメリットは手続きそのものが非常に煩雑であり、弁護士であっても受任してくれる人が中々いないと言う点です。
なお、限定承認は被相続人が亡くなってから三ヶ月以内に行う必要があります。
限定承認については、こちらもご覧下さい。

② 相続放棄とは?
相続放棄とは、相続人としての地位を喪失させ、初めから相続人ではなかった事にする制度です。
被相続人のプラスの財産を相続する事が出来なくなりますが、借金等のマイナスの財産の支払義務も免れる事が出来ます。
限定承認よりも簡易な手続で、「プラスの財産もいらない!」と決断した時に有効な制度です。
相続放棄も被相続人が亡くなってから三ヶ月以内に行う必要がありますが、事情によっては三ヶ月経過後でも相続放棄が出来る場合があります。
相続放棄については、こちらもご覧下さい。


③ 三ヶ月の期間の延長の検討
限定承認、相続放棄は被相続人が亡くなってから三ヶ月以内に行う必要がありますが、相続手続きでバタバタしていると三ヶ月なんてあっと言う間です。
その為実は、家庭裁判所に対してこの期間の延長を行う事が出来る制度もありますので、事情によっては検討してみても良いかも知れません。
7.準確定申告(四ヶ月以内)
被相続人が生前確定申告をしていた場合(確定申告が必要な場合)、被相続人が亡くなってから四ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。
準確定申告とは亡くなった人の確定申告のことです。
確定申告は毎年1月1日から12月31日までの所得状況を申告するものですが、準確定申告では1月1日から亡くなった日までの所得状況を申告します。
「準」と言う言葉がついていますが、通常の確定申告と作成すべき書面や流れはほぼ同じです。
つまり、準確定申告が必要な場合、被相続人が生前に確定申告を行ってたはずであり、その生前行っていた通りに行えば大丈夫と言う事です。
もし手続上の事で分からない事が発生した場合は、最寄りの税務署や税理士にご相談をするようにして下さい。
8.遺産の評価を行う
相続人や遺産の調査が終了し、相続する事を決めたら、遺言が無い場合、若しくは遺言があっても相続人全員が遺言とは異なる遺産の分け方を行いたい場合、全ての相続人で遺産の分け方を決める「遺産分割協議」を行います。
その遺産分割協議の事前準備として、遺産の評価(つまり、金銭に換算)を行う必要があります。
どの財産が金銭に換算していくらなのかを明確にしておかないと、いざ遺産を分けようとしても、その基準が分からず手続が止まってしまいます。
その為、遺産を評価する事が遺産分割協議の事前準備として重要になってきます。
なお、どの時点での評価を行うかですが、家庭裁判所の遺産分割調停の運用は「遺産分割協議時」の評価で行われております。
その為、通常の遺産分割協議もこれにならって遺産分割協議時の評価を算出するのが通例です。
① 現金の評価
現金は価値の変動はよほどの事が無い限りあり得ませんので、そのままの金額で計算します。
② 預金、証券会社について
預金や証券会社については事前に残高証明書を発行してもらっているはずですので、そこに書かれている金額を使用します。
なお、被相続人が亡くなっている時点と評価証明書発行時の2つの評価証明書を取得しているはずですので、評価証明書発行時の証明書を使用して下さい。
③ 不動産について
問題は不動産です。
不動産は様々な評価が有る為、どの評価を使用するのかを相続人間で事前に話し合う必要があります。
不動産の評価についての詳細はこちらをご覧下さい。

9.相続分の修正を行う
① 相続人の法定相続分について
各相続人の相続分は法律上決まっています。
通常はこの法定相続分に従って遺産の分け方を決めるのですが、これに絶対に従わなくてはいけないと言う訳ではなく、全ての相続人が合意しているのであれば、どのような分け方を行っても構いません。
・配偶者と子供(被相続人の下の世代)が相続人である場合。
配偶者2分の1、子供2分の1×子供の人数
・配偶者と両親(被相続人の上の世代)が相続人である場合。配偶者3分の2、両親3分の1×両親の人数
・配偶者と兄弟姉妹(若しくは甥姪)が相続人である場合。
配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1(例外あり)
なお、配偶者がいない場合は、相続人の人数で均等で割った数字が相続分になります。
② 法定相続分の修正 -寄与分と特別受益-
上記のとおり、各相続人の相続分は法律上決まっているのですが、この法定相続分を修正する(増減させる)制度があります。
それが寄与分と特別受益です。
【寄与分】
例えば、
・被相続人に対して金銭を援助したり、負担した。
・被相続人の療養看護等を行った。
そのような事情により、被相続人の財産の維持又は増加について、特別な貢献をした相続人がいた場合、その相続人を財産について貢献しなかった相続人と同じ相続分として取り扱う事は不公平です。
その為、その貢献に相当する金額をその相続人の相続分に加算する事により、結果として各相続人間の公平を図る制度が寄与分です(民法第904条の2)。
寄与分に関しての詳細はこちらをご覧下さい。

【特別受益】
特別受益とは、被相続人から遺言によって財産を譲り受けた場合や、被相続人の生前に遺産の前渡しと認められるような多額の贈与を受けた相続人がいる場合、他の相続人と同じ相続分であれば不公平になります。
その為、遺産分割において、被相続人から貰った財産を遺産に持ち戻して(これを「特別受益の持戻し」といいます。)、具体的な相続分を算定する事により、相続人間の不公平さを無くし、実質的な平等を図ることを目的とするのが特別受益の制度の趣旨です。
特別受益に関しての詳細はこちらをご覧下さい。



相続分も色々難しいんですね。絶対にこの通りにやらなくてはダメなんですか?


良く勘違いされる部分なのですが、相続分は絶対に法律通りに行う必要はありません。相続人間で合意が調えば、どのような分け方をしても良いのです。臨機応変に対応しても大丈夫です。


10.遺産分割協議の具体的な方法
① 単純に分け合う「現物分割」
相続人間で遺産をそれぞれ単純に分け合う遺産分割協議の方法です。
「自宅は長男××に」「○○銀行の預貯金は次男の××に」と言ったように単純明快に分け合います。
・遺産を個別にそれぞれ分け合いますので、複雑な法律関係が発生せず、非常に分かりやすい遺産分割協議となります。
【デメリット】
・遺産によってはその価値が全く違う場合がありますので、相続人間で不公平を生じる事があります。
なお、遺産を単独所有ではなく、共有で相続する事も可能ですが、不動産等の分けにくい遺産を共有で相続する事は、その後の処分等で問題が発生する事もありますので、あまりお勧めしません。
≪現物分割による遺産分割協議書の記載例≫
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目
地 番 123番45
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目123番地45
家 屋 番 号 123番45
構 造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 78.34平方メートル
2階 78.20平方メートル
2.次男 山田次郎は次の遺産を取得する。
○○銀行××支店 普通預金 口座番号123456789
② 分けにくい遺産の為の「換価分割」
不動産のような分けにくい遺産を、売却等の処分を行って金銭に変え、その金銭を相続人で分配する遺産分割協議が換価分割です。
遺産は欲しいけど、不動産は欲しくないと言った場合に用いられます。
・結果的に分けやすい財産となるので、相続人間の公平を保つ事が出来る
【デメリット】
・売却までに時間がかかる場合がある。また、必ず売却が出来る保証がどこにもない。
≪換価分割による遺産分割協議書の記載例≫
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目
地 番 123番45
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目123番地45
家 屋 番 号 123番45
構 造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 78.34平方メートル
2階 78.20平方メートル
2.山田太郎は、上記1に記載した遺産を売却後、その売却代金から、不動産仲介手数料、登記手続費用及び必要な経費等を控除した後の金員を、共同相続人それぞれに、下記の割合で分配する。
山田太郎 3分の1
山田次郎 3分の1
山田花子 3分の1
※ポイントは、「換価、売却の為に」等の記載を入れて、この遺産分割協議が換価分割である事を明確にしましょう。換価分割である事が明確でなければ、換価後の金銭について贈与税が課せられる可能性があります。
③ 相続人間の公平を保つ「代償分割」
被相続人の主な遺産が自宅不動産のみであると仮定します。
その自宅に相続人の一人が住んでおりそのまま自宅を相続したいと考えているのですが、他の相続人も遺産が欲しいので、自宅を売却してお金にしたい、と言った利害対立関係が生じる事があります。
そのような時に、不動産を相続する相続人が他の相続人に代償金を支払う事で、相続人間が公平になる遺産分割協議が代償分割です。
・遺産を相続したい相続人が、確実に遺産を取得する事が出来る。相続人間に不公平が生じにくい。
【デメリット】
・場合によっては遺産を相続する相続人が、多額な代償金を用意する必要があり、その代償金を用意出来なければ代償分割を行う事が出来ない。
≪代償分割による遺産分割協議書の記載例≫
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目
地 番 123番45
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目123番地45
家 屋 番 号 123番45
構 造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 78.34平方メートル
2階 78.20平方メートル
2.山田太郎は、上記1に記載した遺産を取得する代償として、山田次郎に対し、代償金として金1,000万円を平成〇年〇月〇日までに支払うものとする。
※換価分割の時と同様、代償分割である事を明記しておかないと、代償金を貰う相続人に贈与税が課せられる可能性がありますので注意が必要です。
11.遺産の名義変更 -銀行、信託銀行、証券会社-
① 銀行、信託銀行、証券会社の場合
一般的な相続手続き
銀行等の金融機関の相続手続きを行う場合、被相続人が口座を解説していた支店もしくは最寄りの支店に対して、口座名義人が亡くなった事と、相続手続きに必要な書類を請求するところから手続きがスタートします。
ただし、これは残高証明書の発行依頼と同時に行っているはずですので、この段階では新たに行う必要はありません。
なお、銀行等の金融機関はそれぞれ相続手続きに関する書類を独自に用意しているのですが、銀行によって郵送でも送ってもらえる場合と、最寄りの支店に一度行かないと書類が貰えない場合の2パターンがあります。
郵送でも対応可能か必ず確認しましょう。
必要書類の用意
銀行等によって多少の違いがあると思いますが、相続手続きについて必要な書類は下記のとおりです。
・被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・相続人の戸籍謄本(抄本)
(相続人が父母等の第2順位の相続人の場合)
・被相続人の子どもが全員亡くなっていた場合は、その子どもの死亡の記載がある戸籍謄本等
(被相続人が兄弟姉妹当の第3順位の相続人の場合)
・被相続人の子どもが全員亡くなっていた場合は、その子どもの死亡の記載がある戸籍謄本等
・被相続人の上の世代の死亡の記載がある戸籍謄本等
・遺言書(被相続人が遺言書を残していた場合)
・遺産分割協議書(実印押印)
・相続人の印鑑証明書(銀行によっては発行期限があります)、等が必要となります。
手続き完了
銀行等が用意した書類を記入し、必要な書類を全て揃えたら、最寄りの支店等に提出します。
問題がないようであれば、数週間で手続きが完了します。
② 口座名義人が死亡した場合の各銀行の具体的な相続手続き
三菱東京UFJ銀行
⑴ 相続手続きを一元管理している相続センターに連絡をします(電話番号はUFJ銀行のHPをご参照下さい)。
⑵ 相続届を最寄りの支店で(もしくは郵送にて)受け取ります。
⑶ 相続届とその他必要書類を最寄りの支店に提出します。
⑷ 書類の不足が無ければ、届出後10日前後で指定口座に払戻金が入金されます。
みずほ銀行
⑴ 被相続人が取引していた支店若しくは最寄りの支店に相続が発生した事を連絡します。
⑵ 取引店若しくは最寄りの支店で相続手続き用の「相続関係届出書」を受け取ります。この時に来店者が相続人である事を証明する為、被相続人の死亡の記載がある戸籍や、相続人の戸籍等が必要となります。
忘れずに持参するようにして下さい(なお、銀行側でコピーを取って、原本は返してもらえます)。
⑶ 相続関係届出書を記入し、その他必要な書類が揃ったら、取引店若しくは最寄りの支店に連絡をして、相続関係届出書を提出の為の予約を取ります。
⑷ 予約をした日に相続関係届出書とその他必要な書類を提出します。
⑸ 書類の不足等、問題が無ければ数週間で指定口座に払戻金が入金されます。
みずほ銀行の相続手続きは、こちらも併せてご覧下さい。

三井住友銀行
基本的に上記2行と流れは同じです。
被相続人が取引していた支店若しくは最寄りの支店に相続が発生した事を連絡し、「相続に関する依頼書」を受け取り、「相続預金の支払手続等に関するご案内」を参考にしながら必要な項目を記入します。
その後、必要書類(戸籍謄本等)を揃えて、相続に関する依頼書を最寄りの支店に提出し、問題が無ければ数週間で指定口座に払戻金が入金されます。
ゆうちょ銀行
⑴ 最寄の店舗で相続が開始した事を告げ、「相続確認表」「相続貯金等記入票」等、相続手続きに必要な書類を入手します。
⑵ 「相続確認表」「相続貯金等記入票」に必要事項を記載、その他必要な書類(基本的には被相続人の戸籍謄本、書類を提出する相続人の戸籍謄本)を最寄の店舗に提出します。
なお、被相続人の口座が不明な時や口座の有無が不明な時は「貯金等照会書」も併せて提出しましょう。
⑶ 相続確認表の提出後およそ1~2週間後に「相続手続きに関するご案内」と一緒に解約等手続き書類がご自宅に送付されます。
「相続手続きに関するご案内」に含まれる解約手続書類及びその他必要書類揃え、最寄りの窓口に再度訪問して提出することで解約手続きの受付がされます。
【※ゆうちょ銀行の相続手続きの注意点】
・口座解約払戻金は、ゆうちょ銀行の口座に対してのみ振替が可能です。
他の金融機関への送金は出来ません。その為、ゆうちょ銀行の口座を相続する相続人がゆうちょ銀行で口座を持っていない場合、口座を開設するか、「払戻証書」による換金を行う必要があります。
払戻証書は、換金性のある有価証券で、署名捺印をしてゆうちょ銀行の窓口に訪問をして持ち込むことで、現金を受領することが出来ます。
③ 銀行、信託銀行、証券会社の相続手続きの注意点
各書類の有効期限
銀行によって、戸籍謄本や印鑑証明書の有効期限(取得から〇ヶ月以内)が定められています。
その期限を確認するのを忘れないようにして下さい。
予約の必要の有無
銀行によっては相続担当者が決まっており、事前に電話をして予約を行わないと対応出来ない可能性があります。
その為、銀行の窓口に訪問する時は、必ず予約が必要か確認しましょう。
書類の提出方法
書類の提出は、基本的に最寄りの支店の窓口に直接出向いて提出する必要があり、郵送での提出は不可である銀行が多いです。
この点も必ず確認するようにしましょう。
相続に関する書類について
相続手続きは各銀行が用意している書類を記入する必要がありますが、各銀行によってその形式が異なっています。
必ず記入例を参考にして記入するようにして下さい。
相続手続きの流れ、必要書類の確認
実際の相続内容により、上記に記載した相続手続きの流れや必要書類が異なる事があります。
必ず事前に確認するようにして下さい。
その他、各銀行、信用金庫の詳細な相続手続きは下記をご覧下さい。





12.遺産の名義変更 -不動産-
① 添付書類
相続を原因として不動産の名義変更を行う場合、必要な添付書類があります。
既に今までの相続手続きの中で取得しているものがあると思いますが、漏れがないか再度確認しましょう。
(添付書類)
・遺言書(存在する場合)
・被相続人の戸籍(除籍)謄本(出生から死亡までのもの)
※戸籍の代わりに、法定相続情報一覧図でも大丈夫です。
・被相続人の住民票の写し(本籍地入り)
・相続人全員の戸籍謄本及び印鑑証明書
※戸籍(除籍)と印鑑証明書は取得期間に制限はありません。
※戸籍に代えて、法定相続情報一覧図の利用も可能です。
・不動産を取得する相続人の住民票の写し
・相続関係説明図
※本来書面を原本還付してほしい場合、それぞれコピーを提出する必要があります。
しかし、戸籍謄本は場合によっては数十枚になる事もあり、コピーするのにも一苦労です。
その為、相続関係説明図を別途添付すると、戸籍謄本等のコピー等を添付しなくても、戸籍謄本等の原本を還付してもらう事が出来ます。
・遺産分割協議書(遺言書がない場合)
・固定資産評価証明書(若しくは固定資産税納税通知書)
② 申請方法
該当の不動産を管轄する法務局に対して、登記申請書と添付書類を提出します。
法務局での審査(2~3週間ぐらい。各法務局によって異なります)が完了すると、新しい権利証が発行され、不動産の名義変更が完了します。
また、申請時に登録免許税と言う税金を収入印紙での納付若しくは電子納付を行う必要があります。
登録免許税は固定資産税評価証明書上の評価額の1000分の4です。
不動産の相続による名義変更(相続登記)はご自分でも出来ますし、ご自分で行う為の書籍も豊富に揃っています。
しかし状況によっては非常に複雑な手続きを行う必要がある場合がありますので、必ず一度は管轄の法務局若しくはお近くの司法書士にご相談するようにして下さい。
(申請書の例) ※あくまで一例です。各ご家庭のご事情によってはこの申請書の内容が不適切である事もあります。
登 記 申 請 書
登記の目的 所有権移転
原 因 平成〇年〇月〇日 相続
相 続 人 (被相続人 山田 太郎)
横浜市泉区中田北南三丁目10番10号
山田 一郎 ㊞
連絡先 045-000-0000
添付書 類 登記原因証明情報 住所証明書
令和〇年〇月〇日 横浜地方法務局 戸塚出張所
課 税 価 格 金1,234万5,000円
登録免許税 金4万9,300円
不動産の表示
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目
地 番 123番45
地 目 宅地
地 積 120.19平方メートル
此価格金〇,〇〇〇万〇,〇〇〇円
所 在 横浜市泉区中田北南三丁目 123番地45
家屋番号 123番45
種 類 居宅
構 造 木造スレートぶき2階建
床 面 積 1階 62.31平方メートル
2階 60.24平方メートル
此価格金〇〇〇万〇,〇〇〇円
・登記申請書の上部に空白を作って下さい(この余白には、法務局が登記申請の際に受付番号等が記載されたシールが貼られます)。
・登記の目的
被相続人が有しているのが持分であり、その持分を全部移転させる場合は、『平成〇年〇月〇日(被相続人の名前)持分全部移転』とします。
・原因
被相続人が亡くなった日付けを記載します。
・相続人
被相続人の氏名、不動産を相続する相続人の住所(住民票通り記載)、氏名、連絡先を記載し、押印します(認印可)。
なお、複数の相続人が共有で相続する場合は、各持分も記載します。
・課税価格
登記申請を行う不動産の評価額(固定資産税納税通知書や評価証明書に記載されています)の合計を記載します(下3ケタは切り捨てします)。
持分を移転する場合は、評価額に持分をかけて計算します。
・登録免許税
課税価格に1000分の4を掛けて算出します(下2ケタは切り捨てします)。
・不動産の表示
登記事項証明書を参考にし、記載して下さい。
13.相続税の申告・納税(十ヶ月以内)
相続財産が相続税の基礎控除を超えた場合、相続税の申告・納税が必要になります(被相続人が亡くなってから翌日から十ヶ月以内)。
相続税に関しては非常に複雑でもありますので、ここでは一般論の話のみとさせて頂きます。
個別具体的なご相談はお近くの税理士にご相談下さい。
それでは、相続税の計算はどうやって行われるのかを、簡単にですが記載してみたいと思います(参考:国税庁ホームページ)
【事例】
夫が亡くなり、相続人は妻と子供の合計二人。
○相続財産
・自宅(土地・建物)4,000万円
・預貯金 3,000万円
○負債 300万円
○葬儀費用 200万円
遺産分割協議で、自宅を妻が、預貯金を子供が相続するとした場合の相続税です。
① 正味の遺産額を計算する
正味の遺産額は、遺産の総額から控除できるものを控除した後の金額です。
本事例で当てはめますと、
7,000万円(遺産総額)-500万円(負債+葬儀費用)=6,500万円(正味の遺産額)
② 相続税の総額を決める
次に相続税の総額を算出します。まずは課税する遺産の総額を算出します。
計算方法は、正味の遺産額ー相続税の基礎控除額です。
6,500万円(正味の遺産額)-4,200万円(基礎控除額)=2,300万円(課税遺産総額)
※基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の人数 × 600万円)平成27以後の相続
つまり、正味の遺産額が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告の必要はありません。
次に各相続人が法定相続分で取得したものとして、相続税の総額を算出します。
妻:2,300万円(課税遺産総額)×2分の1=1,150万円
子:2,600万円(課税遺産総額)×2分の1=1,150万円
この額に相続税の税率をかけます(相続税の税率は国税庁ホームページ等を参照して下さい)。
妻:1,150万円×15%ー50万円=122万5,000円
子:1,150万円×15%ー50万円=122万5,000円
よって、相続税の総額は245万円となります。
③ 各相続人の税額を計算する
各相続人が納付する相続税は、相続税の総額に対して、実際に相続した分で按分して計算します。
これを今回の事例に当てはまますと、
妻:245万円 × 4,000万円 ÷ 7,000万円 = 140万円
子:245万円 × 3,000万円 ÷ 7,000万円=105万円
これが、各相続人が納付すべき相続税の金額なのですが、相続税には様々な控除制度があり、この金額からさらに安くなる、場合によっては相続税がゼロになる事もあります。
14.まとめ -相続手続きは自分で出来るのか?司法書士等に依頼すべきか?-


ようやく終わりましたね。相続手続きって、こんなに大変なんですか?


実は、これでも簡略化した方なんですよ。


嘘でしょ!?こんなに大変だったら、私が手続きやるなんて絶対に無理です!!


相続の事について勉強する意欲があって、さらに平日に時間の余裕がある方であれば、ご自分で相続手続きを行う事ができるかも知れません。しかし、日中に仕事等を行っていて時間がない方は、相続手続きを司法書士のような専門家にお任せした方が良いかも知れませんね。


それはそうでしょうけど、専門家にお願いしたらそれなりに費用はかかってしまいますよね?


確かに費用はかかります。でも、相続人の方の貴重な時間を無駄にする事がなくなるのです。お金は取り戻せても、時間は取り戻す事はできませんよ。
相続手続きは一つ一つの手続きが非常に煩雑であり、相続税の申告・納税が必要な場合、これを十ヶ月以内に行う必要があります。
相続手続きは上述したとおり、一生のうちに何度も行う手続きではありません。
その為分からない事だらけになる事が当たり前です。
まずはご自身で法律の事、相続手続きの事を勉強して頂きたいのですが、そもそもそんな時間がなかったり、「勉強しても難しくて分からない!」と言う場合もあるでしょう。
そのような時は、一度専門家へご相談する事をお勧めします。
当事務所のように、相続・家族信託の相談を行っている専門家を上手く活用して、問題なく相続手続きを行うようにしましょう。
※現在、初期費用(前金)の負担を軽減する対応を行っています。
また、Skype等のオンライン面談も継続中です。