相続した不動産に抵当権が設定されていた場合

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、相続した不動産に抵当権が設定されている事についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

相続が開始され、遺産に不動産があれば、その不動産を誰が相続するのかを相続人間で話し合い、それが決まれば相続人に名義変更を行う、と言う流れが一般的です。

ですが、その不動産に抵当権が設定されていた場合にはどうすれば良いのか、疑問に思う事はありませんでしょうか?

今回はその相続と抵当権に関する素朴な疑問を解説していきたいと思います。

1.抵当権とは?

例えばあなたが、知り合いにお金を貸したとします。

知り合いがお金をきちんと返してくれれば問題無いのですが、もしお金を返してくれなかったらどうでしょうか?

裁判をして、最終的には強制執行を行わなくてはいけません。

強制執行まで行うのには手間と時間がかかりますし、さらに他にも債権者がいた場合、借金を回収できる確率がグンと下がります。

そうするとあなたとしてはとても困ると思います。

そんな時に、

「裁判手続きを行う事なく、他の債権者よりも優先的に支払い受ける事ができる権利」

があれば、あなたとしてみればお金を貸しやすくなるのではないでしょうか?

この他の債権者より優先的に支払いを受ける事が出来る権利を、「抵当権」と言います。

2.抵当権の特徴

① 抵当権設定の対象物の引渡しを受けない。

主に抵当権は不動産に設定されるのですが、この不動産は所有者がそのまま使用出来ます。

これが同じような担保権である「質権」との大きな違いです。

② 付随性

抵当権の目的である借金が完済された場合、抵当権も消滅します。

借金の担保の為の権利ですので、借金が無くなれば抵当権も消滅するのは当たり前ですね(でも、抵当権設定の登記は勝手に消えないので、抹消登記を行う必要があります)。

③ 随伴性

抵当権の目的である借金の債権者が変わる事があります。

その時に抵当権も同様に新しい債権者が権利者となります。

抵当権は、このような特徴があります。

3.抵当権付き不動産を相続出来るのか?

たまにご質問を受ける内容です。

ある方が亡くなった事により、自宅を相続したが抵当権が設定されており、このまま相続しても何も問題無いのか?と言うご質問です。

① 相続について

抵当権付き不動産である事をきちんと認識した上であれば(債務者が債務の支払いが出来なくなった場合、不動産が競売にかけられて所有権を失うと言うリスクです)、抵当権付き不動産を相続しても問題はありません。

② 抵当権者(債権者)への連絡の要否

不動産の所有者が亡くなった事を、抵当権者に通知する必要があるのか?と言う疑問もあると思います。

法律上は不動産の所有者が亡くなった事を通知する義務は無いのですが、ほとんどの場合、「不動産の所有者=抵当権の目的である借金の債務者」ではないでしょうか?

このようなケースであれば、抵当権者側の内部処理や借金の相続等の手続きがあると思いますので、債務者が亡くなった事を抵当権者(債権者)へ伝える必要があると思います。

③ 団体信用保険付き住宅ローンを利用していた場合

団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡したときや高度障害状態になったときに、住宅ローンの残金の分の保険金が金融機関に支払われ、住宅ローンを清算することができる保険です。

その為、住宅ローンがまだ残っていて、住宅ローン利用者(不動産の所有者)が亡くなった場合は、保険会社に連絡するのを忘れないようにしましょう。

4.相続と抵当権抹消

抵当権の目的である借金を完済したので、抵当権の登記を抹消したい。

しかし、不動産の所有者が亡くなっている場合はどうすれば良いのか?

抵当権の登記を抹消する前提として、不動産の相続登記を行う必要があるのでしょうか?

実はこれは、二つのケースで考える必要があります。

① 借金を完済した後、不動産の所有者が亡くなった場合

抵当権が消滅したのが、不動産所有者が亡くなる前ですので、前提として相続登記を行う必要はありません。

② 不動産の所有者が亡くなった後に、(相続人が)借金を完済した場合

抵当権が消滅したのが、不動産所有者が亡くなった後ですので、前提として相続登記を行う必要があります。

5.まとめ

このように、相続と抵当権を関連させてみると、色々と疑問が出てくると思います。

抵当権の一般的な注意事項となりますが、上述のとおり、抵当権設定登記は勝手に消滅しないので、抹消登記を申請する必要があります。

例え借金を完済したとしても、抵当権設定登記が残っていれば、その不動産の処分が事実上出来ません。

なお、抵当権に良く似た「根抵当権」と言うのがあるのですが、こちらは相続に関して抵当権とは違う、独特な論点があります。詳しくはこちらをご覧下さい。

根抵当権付き不動産を相続した時に実務上必要な事
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なお、抵当権の抹消登記を行わずそのまま放置していると、抹消登記に必要な書類を紛失したり、抵当権者そのものが消滅したりする事で、抹消登記が出来なくなる可能性があります。

このような問題が起きる前に、抵当権抹消登記は速やかに行いましょう。

なお、当事務所は色々なパターンの抵当権抹消登記を行っており、その実績は豊富です。

抵当権の抹消についてお困り、お悩みの場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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