相続手続きはめんどくさい?相続のストレスから開放される為の司法書士の活用

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

相続手続きってめんどくさいって良く聞くのですが、本当ですか?

私は各所で相続に関する相談会を行う事があるのですが、このような質問を受ける事があります。

確かに、相続手続きを経験する事はごくまれですので、その大変さはイメージしづらいですし、書籍等を読んでも具体的にどの程度めんどくさいのかが良く分からない部分もあると思います。

そこで今回は、相続手続きがめんどくさい理由と、司法書士が行う事が出来る相続手続きについてお話ししていきたいと思います。

1.相続手続きはなぜ面倒なのか?

① 民法等の法律の勉強が必要

相続は難しい言葉で言いますと、亡くなった方の財産や権利・義務を相続人に引き継ぐ手続きです。

財産を引き継ぐ相続人の範囲や財産の範囲、法定相続分等、相続手続きに必要な知識は「民法」と言う法律の第五編「相続」に記載されています。

民法の相続の条文は第882条から始まり、第1044条まであります。その数として約160の条文があります。

全てを把握する必要はありませんが、それでも相続手続きにおいてポイントになる条文は多い為、ある程度の勉強は必要になります。

さらに、相続による不動産の名義変更(相続登記)を行う場合は、「不動産登記法」及び関連法規に則った手続きを行う必要があります。

最近では各法務局で登記相談が充実していますが、それでも勉強を行わなければ、相談担当者が言っている言葉が理解出来ないでしょう。

このように、相続手続きを行う為には、民法等、相続に関連する法律の勉強が必要不可欠なのです。

② 亡くなった方の戸籍謄本等の取得が必要

相続手続きで一番最初に行う事が、亡くなった方の全ての戸籍の取得です。

戸籍謄本を取得された事が無い方は「全ての戸籍?戸籍は一つじゃないの?」と疑問に思われるかもしれませんが、実は戸籍は結婚したり、本籍地が変わったり、果ては法律の改正により新たに作成されるのです。

その為、人が生まれて死ぬまでに同じ戸籍である事はほぼないと言っても良いでしょう。

亡くなった方の出生から死亡時までの戸籍を収集する意味は、亡くなった方の相続人を戸籍上で確定させる為です。簡単にですが、具体例を見てみましょう。

① 山田さんの本籍地は川崎市です。山田さんには娘が一人いましたが、結婚されて山田さんの戸籍から除かれました(これを「除籍」と言います)。

② その後、山田さんは横浜市に引越し、本籍地も横浜市に変更しました。

さてこの時に、山田さんの現在の戸籍(横浜市)を取得した場合、結婚された山田さんの娘の名前が戸籍上に表記されるのでしょうか?

実はその答えは「No」です。

娘は本籍地が川崎市の時に除籍されました。

川崎市の戸籍謄本(川崎市の戸籍は、戸籍そのものが除かれています。

その為正確には「除籍謄本」といいます)には娘が除籍された事の記載はあるのですが、横浜市で新しく戸籍が作成される際、既に除籍されている記載事項は新しい戸籍には記載されません。

その為、現在の戸籍だけを取得しても、相続人が誰なのかが確定出来ない為、亡くなった方の出生から死亡時までの全ての戸籍を取得する必要があるのです。

なお、戸籍は昔に遡れば遡るほど、文字が崩れて読みにくいものとなり、文字を解読するのにも一苦労します。

昔の戸籍を読み解くにはある程度の経験が必要ですが、一般の方は昔の戸籍を見る機会がほとんどない為、その崩れた文字はほぼ解読不可能となります。

③ 遺産の調査

遺産分割協議や相続税の申告・納税が必要なのかどうかを判断する為に、遺産の調査を行う必要があります。

しかし、基本的には亡くなられた方は自分の財産についてきちんとまとめていない為、相続人としてはどこにどんな遺産があるのかが分からない事が多く、その結果一つ一つ地道な遺産調査を行う必要があります。

預貯金等は通帳から調査をするのですが、亡くなられた方が通帳を残していない事もあります。

その場合は全ての銀行に対して調査が必要になる事もあり、それには非常に手間と時間がかかります。

④ 遺産分割協議ってどうすれば良いの?

戸籍も全てそろえて、遺産の調査も終了すれば、いよいよ相続人間で遺産を分け合う遺産分割協議を行います。

遺産分割協議のやり方ですが、基本的には相続人の自由です(相続税の節税の問題は発生しますが)。

その為、極論を言ってしまえばどんな分け方をしても良いのですが、だからこそ非常にストレスを感じられる方もいらっしゃるのです。

・好きにすれば良いと言われても、実際問題良く分からない。

・後からもめるのも嫌なので、法律上適切な方法でやりたい。でも、法律上適切な方法って一体何?

・お金の事を話すと人間関係が壊れるって聞いた事がある。今まで仲が良かった家族とそんな事で関係が悪くなったら嫌だな・・・。

等、ある程度のお金が動く事ですので、遺産分割協議について心配な事をどうしても考えてしまうのですが、考え出したらキリがなくなってしまい、ストレスを感じる方もいらっしゃるのです。

⑤ 各種遺産の相続手続きが大変

遺産分割協議が終了すれば、後はその協議の内容に従って遺産の相続手続き(名義変更)を行うだけです。

ところが、この段階でも苦労をする事があります。

遺産の代表的なものは銀行等の預貯金です。銀行の相続手続きは、

⑴ 銀行にご家族の方が亡くなった事を伝え、相続手続きに必要な書類をもらう。
⑵ その相続手続きに必要な書類を記入する。
⑶ その相続手続きに必要な書類と、その他指定された書類を併せて銀行に提出する。

と言った流れになります。

つまり、必要な書類をもらって、それを提出と言ったように、最低でも2回は銀行との対応を行う必要があるのですが、基本的には郵送でのやり取りは行ってくれず、最寄りの支店に必ず行かなくては行けません。

(私の経験上ですが、JAバンクや信託銀行は郵送でもOKな所があったのですが、通常の銀行は最寄りの支店に行く必要があります。)

銀行は平日の15時までしか窓口が開いておりませんので、平日の日中仕事をしている人は、相続手続きの為に仕事をお休みする必要があります。

この点で相続手続きが進まない事も良くあるのです。

また相続登記も同様で、管轄する法務局は平日しか開庁していません。

相続登記をご自分で行う場合、法務局で相談を行うと思うのですが、最低でも2~3回は行う必要があります。

相続登記も平日の日中仕事をしている人は非常に大変な手続きとなります。

⑥ スケジュール管理が大変

相続手続きの中には、期限が決められてものがあります。

例えば、準確定申告(4ヶ月以内)、相続税の申告・納税(10ヶ月以内)なのが有名ですが、これらの期限を守る為に、相続手続きのスケジュール管理をしっかりと行う必要があります。

10ヶ月なんて意外にあっという間です。

遺産分割協議も終わっていないのに、気が付いたら10ヶ月過ぎそうになった、なんて事も良くあります。

2.司法書士が行う相続手続き「遺産承継業務」

① 司法書士が相続手続きを行う事が出来る根拠

司法書士は相続人の方を代理して、相続手続き(遺産の名義変更)を行う事が出来ます。

不動産の相続登記は勿論、預貯金の相続手続きも司法書士の名前で手続が出来ます。

その為、依頼者の方はめんどうな相続手続きを行う必要がなく、普段通りの生活を送る事が出来ます。

フルタイムでお仕事をされている方にとってみれば非常に良い制度でしょう。

しかし、そもそも司法書士がなぜ相続人の方を代理して相続手続きを行う事が出来るのでしょうか?

相続手続きは相続人の方に重大な影響を及ぼします。

そのような重大な事について、法令上の根拠、責任の所在が明確になっていないと安心出来ないのではないでしょうか?

実は、司法書士が相続手続きを行う事が出来る法令上の根拠はきちんとあります。

それではその根拠を見てみましょう。司法書士法施行規則第31条に根拠があります。

(司法書士法人の業務の範囲)
第三十一条  法第二十九条第一項第一号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一  当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二  当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
三  司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
(四号以下省略)

「法第二十九条第一項第一号」とは、司法書士法に定められた、法令等に基づきすべての司法書士が行うことが出来る業務の事で、司法書士法施行規則ではその具体的な内容が明記されています。

司法書士法施行規則第31条1号で、「当事者その他関係人の依頼」により「他人の財産の管理若しくは処分を行う業務」が行う事が出来るとされています。

これが司法書士が相続手続きを行う根拠であり、すなわち、

「当事者その他関係人」=相続人の依頼により、
「他人の財産の管理若しくは処分を行う業務」=相続財産の管理若しくは処分(売却等)

が司法書士として行う事が出来るのです。

② 司法書士が行う相続手続きの具体的内容

⑴ 戸籍謄本等の取得

相続人の方を代理し、亡くなった方の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本等を取得する事が出来ます。

本籍地が遠方であっても郵送での請求を行う事でスムーズに戸籍謄本等を取得します。

また、司法書士は戸籍の読み方についてはきちんと熟知しておりますので、亡くなられた方がどんなに複雑に本籍地を変更していても、必要な戸籍謄本等を見落とす事なく正確に取得する事が出来ます。

なお、昔の戸籍で文字が崩れて判別が難しいものがありますが、司法書士はそのような文字もきちんと判別するコツと経験を持っていますのでご安心下さい。

⑵ 遺産の調査

遺産の調査は、相続税の申告・納税にも関連する事ですので、正確に調査を行う必要があります。

司法書士は基本的に亡くなられた方が残された資料をもとに、遺産の調査及び残高証明書の取得を行います。

また、仮に資料がない場合であっても調査を行う事が出来るケースもありますので、相続人の方が把握していなかった遺産の確認も行う事が可能です。

⑶ 遺産分割協議のアドバイス

「遺産分割協議の行い方が分からない」「どのようにすれば良いか自分達では決められない」その様な相続人の方の為に、遺産分割協議のアドバイスを中立的な立場で行います。

⑷ 各種遺産の名義変更

不動産の相続登記を含め、各遺産の相続手続き(名義変更)を相続人の方を代理して行います。

手続き完了まで、法務局や各銀行とのやり取りは全て司法書士が代理して行います。

3.相続手続きにおける司法書士の活用方法

① 一般的な相続手続き

司法書士は遺産承継業務として、相続人の方を代理し相続手続きを行う事が出来ます。

その為、平日にお仕事をされているお忙しい方でもお仕事を休む必要がなく、相続手続きにストレスを感じる事なく普段の生活を送って頂く事が可能です。

また、相続税の申告・納税が必要になった場合、不幸にも相続人間で紛争になってしまった場合は税理士、弁護士のご紹介が可能です。

② 遺産分割協議のアドバイス

遺産分割協議のやり方は法律上特に決まっていません。

各相続人が納得出来るように自由に行っても何も問題はないのですが、それでも後々もめたり問題になったりする事もあります。

司法書士は後々トラブルになる事を未然に防止する為、各相続人のご意向をお伺いし、将来想定されるリスクを回避出来るような適切なアドアイスを行います。

③ 難しい相続手続きも対応

一般的な相続手続きの他、

・相続人の中に相続手続きに非協力的な人間がいる
・相続人がどこにいるのかが分からない、一度も会った事がない相続人がいる
・そもそも相続人がいない等、

このような難しい相続手続きも対応が可能です。

④ 家庭裁判所へ提出する書類も対応可能

例えば、相続放棄の為の申述書作成、遺言書の検認申立書作成等、家庭裁判所へ手続を行う為の書類の作成も行う事が可能です。

4.まとめ

相続手続きは一生に一度経験するかしないかの出来事です。

その為、一般の方は慣れていない、何から行うのかが分からないのが当然の状態から一つ一つ勉強を行い、手続きを行っていく必要があります。

しかし、それは時には普段の生活を犠牲にする必要があり、大変なストレスになる事があります。

司法書士はご依頼者の方にストレスにならないよう、普段の生活を送って頂くための相続手続きを行う事が出来ます。

相続手続きの事でお困り、お悩みの場合はお気軽に当事務所にご相談下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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