
こんにちは。司法書士の甲斐です。
「相続」を検索キーワードで検索すると、相続を専門とする様々な専門家のホームページがヒットします。
「横浜市泉区」と範囲を絞って検索してもかなりの量のホームページに遭遇します。
司法書士、弁護士と言った「士業」から、「相続○○アドバイザー」と言ったその実態が良く分からない謎の資格まで様々です。
こんなに多くの専門家が相続に関して関与していれば、ご自分の相続手続きをどの専門家にお願いすれば良いのか?
非常に悩まれると思います。そこで今回は、各専門家が相続についてどのような事ができるのかを解説したいと思います。
このページを最後までご覧になって頂けますと、「どこに相談すれば良いか分からない」と言った疑問が解消し、間違いがない相続専門家の選択が可能となります。
1.そもそも、相続手続きとは?
そもそも、相続手続きとは一体何なのでしょうか?
相続手続きは沢山の種類がありますが、簡単にまとめてみますと下記のようになります。
① 相続財産に対する手続き
被相続人の相続財産を、相続人固有の物とする手続きです。
具体的には、相続人確定の為の戸籍の収集、相続財産の調査、相続人間の遺産分割協議(協議書作成)、各遺産の名義変更の一連の流れです。
最近はご自分で相続手続きを行う為の書籍等も豊富にあり、しっかりと勉強して順序立てて手続きを行う事により、ご自分でも十分に相続手続きを行う事が可能でしょう。
しかし、書籍等で記載されている事は、非常に基本的な事であり、応用が効かない事も良くあります。
例えば、両親が自宅を共有していて、両親とも亡くなった場合の相続登記のやり方や、兄弟姉妹の相続で、さらにその相続人の中に亡くなっている方がいて代襲相続が発生している場合等は難易度が高い手続きとなりますので、ご自身が行うには相当骨が折れるでしょう。
② 家庭裁判所に対する手続き
・相続放棄を行いたい場合の、相続放棄の申述
・相続人に認知症者、未成年者がいる場合の、後見申立て、特別代理人選任申立て
・相続人が行方不明の場合の、不在者財産管理人選任申立て
・遺産分割調停
等、通常の相続手続きを行うに際して、困った場合の手続きです。
③ その他、民事裁判の手続き
相続人の一人が相続財産を使い込みしていた場合等は、最終的には民事裁判で問題を解決する必要があります。
このように相続手続きは大きく分けて三つに分ける事が出来ます。それでは、各専門家がこの相続手続きについてどのような事を行う事が出来るのかを見ていきましょう。
2.司法書士
① 司法書士が出来る相続手続き
司法書士が行う相続手続きの代表格としては、相続による不動産の名義変更である「相続登記」です(司法書士法第3条1項1号)。
ご依頼者の方を代理して相続登記を行う事が出来るのは、司法書士と弁護士のみです。
行政書士や税理士等が、ご依頼者名義の書類を作成し、相続登記を行っているケースが見受けられますが、これは明らかな違法行為となります。
相続登記を司法書士、弁護士以外の専門家に依頼をしないようにして下さい。
また、司法書士は裁判所へ提出する書類の作成も行う事が出来ます(司法書士法第3条1項4号)。
その為、相続放棄の申述書、後見申立書等の作成も可能です。
なお、ご依頼者の方を代理して裁判所へ提出する書類の作成を行う事が出来るのは、相続登記と同様に司法書士と弁護士のみです。
さらに、不動産以外の名義変更もご依頼者の方を代理して行う事が出来ます(司法書士法施行規則第31条)。
すなわち、上記の相続財産に対する手続きをご依頼者の方を代理して行う事が出来ます。
② 司法書士が出来ない相続手続き
相続財産について相続人間で争いがある場合は、遺産分割協議に関与する事ができません。
また、遺産分割協議において一人の相続人を代理して、他の相続人の方と交渉を行うのも不可です。
さらに、相続税の分野も司法書士が行う事が出来ない相続手続きです。
3.弁護士
① 弁護士が出来る相続手続き
相続の分野に関しては、オールマイティーに活躍できます。(遺言書の作成アドバイス~遺産分割協議~遺産の名義変更)
さらに、相続人の一人若しくは数人を代理して、他の相続人と交渉を行う事が出来ます。
また、相続人間で遺産分割協議が整わない場合は、依頼人を代理して遺産分割調停等を行う事ができます。
さらに、条文上は相続税の申告も行う事が出来ます(実際は、相続税の申告は税理士にお願いしているケースが多いでしょう)。
このように、司法書士とは異なり、弁護士は全ての分野において依頼者の方を「代理」する事が出来ます。
その分費用面が非常に高くなりますが、相続手続きの全てをお任せする事が出来るのがその最大の特徴です。
② 弁護士が出来ない相続手続き
このように、弁護士は相続の分野において非常に幅広い事を行う事が出来るのですが、弁護士にも出来ない事があります。
それは、「遺産分割協議において、利害が対立する相続人全員の代理人となる事」は出来ません。
弁護士はあくまで「代理人」であり、依頼者の利益を最優先する事が求められる専門職です。
その為、例えば中立な立場で相続人全員の利害調整役をお願いしたくても弁護士倫理との関係上、受任をお断りされる可能性があります。
また「弁護士」と言うイメージから、他の相続人から、「ケンカを売られた」と勘違いをされる事もあります。
弁護士に相続手続きをお願いする場合、この点には十分注意して下さい。
4.税理士
① 税理士が出来る相続手続き
税理士と言えば税金の専門家であり、相続における税金と言えば相続税です。
税理士は依頼者の方の代わりに相続税申告書の作成を行う事が出来ます。
また、相続発生前であれば相続税対策の相談を行います。
相続税法が改正され、相続税の申告・納付が必要となる人が増えた為、相続手続きにおける税理士の役割はますます増えていくでしょう。
② 税理士が出来ない相続手続き
一般の方は「相続は税理士に相談しよう」とすぐに思いつくぐらい、相続=税理士と言ったイメージがあると思いますが、税理士はあくまで税金の専門家です。
相続財産に対する手続きを行う事が出来る法令上の根拠はありませんし、そもそも相続において重要な法律である民法が試験科目にありません。
また、相続税法が改正されたとは言え、税理士全体の人数に対してまだまだ相続税の申告件数は少ないですので、相続税法を得意とする税理士が少ないのも問題点です。
5.行政書士
① 行政書士が出来る事
行政書士は権利義務又は事実証明に関する書類の作成を行う事が出来ます(行政書士法第1条の2)。
「権利義務、事実証明に関する書類」は非常に抽象的で分かりにくいのですが、具体的には、相続発生前であれば、遺言書の原案の作成、相続が発生した後であれば、相続人間が合意した遺産分割協議の内容について遺産分割協議書にまとめる事ができます。
② 行政書士が出来ない事
行政書士はあくまで書類作成を行うのが法律上認められているだけですので、遺産分割協議後における遺産の名義変更に関しては、依頼人を代理して行う法令上の根拠がありません。
その為「代行」と言う形、つまり、遺産の名義変更に必要な書類の作成をご本人様名義で作成する事で、相続手続きに関与しています。
なお、あくまで代行ですので、書類に不備があった場合等に、行政書士は金融機関からの問合せに対応する事が出来ません。
6.その他の専門家
株式会社や相続○○センターと言った、あたかも公的な機関のような名称を付けた団体が、相続手続きを行う専門家として、最近多く存在しています。
相続に関する様々な相談業務や手続きを行っていると思うのですが、最終的には提携している弁護士、司法書士、税理士に仕事が振られる事が多く、結果として費用が割高になる事もあります。
(注意点)
上記のとおり、専門家につなぐ事を行っていればまだ良いのですが、団体によっては税理士資格が無いにも関わらず、具体的な相続税の相談を受け、間違った回答を行い、相談者に損害が発生する事もありますので十分ご注意下さい。
7.まとめ
どの専門家に相続手続きをお願いするかは、結局のところ、相続人の方の状況次第だと思います。
明らかに相続人間で争いが起こる事が目に見えているのであれば弁護士、相続人間で特に争いが無いのであれば司法書士、と言うようにその時の実情に合わせて選択すれば大丈夫だと思います。
それでも良く分からない、と思われる方はお気軽に当事務所にご相談下さい。皆様の状況に適した、一番最適な専門家におつなぎ致します。