連絡を無視している相続人に対して、裁判以外で相続の話し合いに応じてもらう方法

こんにちは。横浜のもめない相続専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、相続人の中に連絡が取れない(連絡を無視されている)人がいて、相続について話し合いが出来なくて困っている方向けの記事です。

相続の話し合い『遺産分割協議』って、とても大変じゃないですか?

一応、法律では「法定相続分」と言うのが決められていますので、そのとおりに遺産を分けていけば良いのですが、実はそれ以前の問題があります。

そう、本日のテーマである、相続人の一人がどんなに連絡をしても連絡を無視していたり、拒否しているケースです。

そもそも相続人間で話し合いが出来ない環境であれば、法的な主張をしたり、その後の相続手続きを進める事は出来ません。

その為、最終的には遺産分割調停や審判と言った裁判所を利用する手続きを選択する方もいらっしゃいます。

ところが、

「裁判所を利用した事で、さらに相続人間の仲が悪くなってしまった」

「調停は半年から1年かかると聞いていて、そんなに時間をかける事ができない」

「弁護士に調停をお願いしたいけど、遺産の総額から見ても、弁護士費用はものすごく負担になる」

このような事がありますので、遺産分割調停や審判の手続きを選択する事を決断できない事だってあると思います。

そのような方に対して、相続手続きについて連絡を無視している、非協力的な相続人に対して、法律の面だけではなく感情面も考慮して、相続手続きに協力してもらえる方法をお話ししていきたいと思います。

 

1.相続人の中に行方不明者がいる場合

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります(なお、全員が一堂に会するのではなく、郵送等で書面のやりとりを行い、全員の合意を形成するやり方でも大丈夫です)。

その為、もしどこにいるのかが分からない相続人がいたとしても、その者を除いて遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議は無効となります。

「連絡がとれない相続人なんて関係ないじゃん!」と言ってもダメですよ。

したがって、相続人の中に行方が分からない者がいる場合、下記の制度を利用し遺産分割協議を進める必要があります。

① 不在者財産管理人

本来住んでいた場所から失踪し、簡単に戻る見込みがない不在者について、家庭裁判所が申立てにより選任する不在者の法定代理人です。

不在者財産管理人が本人の代理人として、遺産分割協議に加わります。

② 失踪宣告

上記の不在者について、その生死が7年間明らかではない時(普通失踪)、又は震災等の死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、その生死が1年間明らかではない時(危難失踪)家庭裁判所が申立てによりその生死不明者に対して、法律上死亡したものとみなす失踪宣告をする事ができます。

その結果、他の相続人だけで遺産分割協議を行ったり、生死不明者の相続人が協議に加わる事により手続きが進行する事になります。

 

2.連絡を無視している相続人への基本的な対応方法 -デメリットを伝える-

相続人の行方が分からない状態であれば上記の不在者財産管理人や失踪宣告と言う制度が利用できますが、単純に無視をされていたり、相続手続きを拒否されている場合はこの制度は利用できません。

その為、このような場合の基本的な対応方法は、その相続人に対し、遺産分割協議を行わない事のデメリット、つまり『相続手続きに協力しない事で、あなた自身にも不利益が起こる』事を正確に、丁寧に伝える必要があります。

なお、このデメリットを伝える方法は直接会う、もしくは電話で話すのではなく、状況をより正確に伝える事ができる手紙等の文章の方が良いでしょう。

① 相続放棄ができなくなる。

被相続人に多額の借金があった場合、相続放棄ができる期間内に相続放棄を行えばその支払いを免れる事ができます。

しかし、何も関与したくない、家族からの連絡を一切断っている場合、相続放棄ができる期間が過ぎてしまう事があり、想定外の借金の支払いを行う必要が出てきます。

② 相続税の納税義務を負う可能性がある。

相続税の基礎控除を超えた場合、相続税の申告・納税の義務が発生するのですが、それには期限があります(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)。

もしこの期限内に遺産分割協議がまとまらなくても相続税の申告・納税義務は消えません。

遺産分割協議がまとまらない場合、法定相続分で相続したとみなして相続税の申告・納税を行う必要があります。

その後、遺産分割協議がまとまった場合に、再度相続税の申告をし直す必要があります。

「なんだ。相続税の修正が出来るんであれば、話し合いをまとめるのはいつでもいいんじゃないか」と思われるかもしれませんが、実はそれは間違いです。

遺産分割協議がまとまっていない場合の相続税の計算は、配偶者の税額軽減や小規模宅地評価減等と言った相続税が安くなる特例を利用する事が出来ませんので、本来の税額よりも多くなります。

さらに、これらの特例については、申告時に申告期限後3年以内の分割見込書を提出し、3年以内に分割がまとまって再度申告すれば、その時に適用することができます。

つまり、3年を超えてしまえば特例そのものを利用する事が出来なくなります。

このように遺産分割協議がまとまっていない場合には、納付すべき相続税が多くなってしまい、かなり不利になってしまいます。

③ 遺産の処分が出来なくなる

預金や不動産等、遺産の相続手続き(名義変更)には原則として相続人全員の印鑑証明書が必要になります。

その為、相続手続きを放置すれば被相続人名義の預金を解約したり、不動産の売却等が出来なくなってしまいます。

④ 子供や孫の代に迷惑がかかる

相続人が亡くなった場合、その相続人が地位を引き継ぐ事になります。

その為、相続人が膨大な人数に膨れ上がり、相続手続きが事実上不可能になる事もあり得ます。

つまり、相続手続きを放置していると自分の子供や孫の代に非常に迷惑をかける事になります。

⑤ 最終的に裁判所の手続きを行う必要がある。

それでも無視を続けていると、最終的に他の相続人から遺産分割調停の申立てが行われる可能性があります。

また、この家庭裁判所からの呼出状を無視すると審判と言う手続きに移行される事になります。

ここでも裁判所に出頭しなければ、本来主張できた事(寄与分や特別受益)が無視されて手続きが終了します。

また、欠席者に対しては5万円以下の過料に処せられる条文もあります(ただし、実際に過料が科せられたという例はほとんどないと聞きます)。

つまり、連絡を無視していても結局は法律上の手続きで強制的に解決する事になりますし、本来主張できた事、主張しなくてはいけなかった事も行えないまま、一方的に手続きが終了してしまいます。

その為、結局のところ、相続手続きの連絡を無視する事は全く意味がない事になります。

これ以外にも相続手続きを放置するデメリットは沢山あります。

何もしないと言う事は問題を予想以上に大きくしてしまい、結果として取り返しのつかない損害が発生する可能性も出てきます。

その為、問題を解決する為に、遺産分割協議を先延ばしにするデメリットをしっかりと伝え、今すぐ行動を起こすように働きかける事が重要になってきます。

 

3.連絡を無視している理由もきちんと考慮する

相続の連絡を無視すると言う事は、それなりの理由があります。

例えば、子供の頃に虐待等、親から酷い目にあった場合、例え自分の親の相続であっても関わりたくないでしょう。

また、兄弟間で子供の頃から確執があれば、もう二度と会いたくないと思っても不思議ではありません。

あなたは連絡を無視する相続人に対して、「皆が困っているのに、なんて非常識な人間だ!」と怒っているでしょう。

一度会って文句を言いたいと思っているでしょう。

しかし、相手にもこのような「連絡を無視する理由」が必ずあります。

もしかするとあなたの事を「連絡を無視する理由があるのに、何度も何度も連絡しやがって。何て非常識な人間だ!」と思っているかもしれません。

人間は「自分が絶対に正しいし、常識的だ。相手が絶対に間違っているし非常識だ」と思いがちです。

これは心理学でも有名な話です(これを『フォールス・コンセンサンス効果』と言います)。

でも冷静になって考えてみると、自分と同じ人間は一人もいません。

その為、物事の考え方、価値観等は人によって様々です。

「正しさ」「常識」も人それぞれなんです。

だからこそ、「連絡を無視する理由」にきちんと耳を傾けるべきです。

そのような事を行わず、法律の力だけで問題を解決しようとすると、絶対に長期間続く泥沼の争いに発展します。

相続の問題は法律だけでは根本的に解決はしません。

心の問題にもきちんと目を向けるべきです。

 

4.絶対に感情的にならない

「心の問題にもきちんと目を向けるべき」ですが、だからと言って感情的になるのはNGです。

感情的になれば当然ながら話し合いは進みませんし、問題が解決するまで長期間を要する事になります。

とは言え、散々連絡を拒否されているため、あなた自身も相手に色々と言いたい事があり、ついつい感情的になってしまう事もあるでしょう。

その為、感情的にならない為のコツを一つお話したいと思います。

それは、「分析グセを身に付ける」と言う方法です。

どうして相手は連絡を無視しているのか?

・嫌がらせをしたいだけなのか?

・マウンティング(相手より自分が上だとアピールする)して、自尊心を満たしたいのか?

・ただのめんどくさがり屋なのか?

等々、相手の発言・態度について、「どうして相手はそのような行動をするのか?」を分析してみて下さい。

一歩引いた状態で分析・考える事で、客観的になる事が出来ますし、冷静にもなれます。

是非、頭に血が上りそうな時は、この「分析する」と言う事を実践してみて下さい。

 

5.連絡を無視している相手への文章例

それでは、

「相続手続きを行わない事のデメリット」と「連絡を無視している相手への配慮」をまとめた文章の例をご覧下さい。

被相続人山田太郎(父)が亡くなり、その子供である長男が次男の山田太郎宛に送った書面の例です。

なお、実際にご使用する際は各ご家庭のご事情にあわせて変更するようにして下さい。

山田 太郎 様

拝啓 陽春の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。

お変わりありませんか?体調等崩されていませんか?

今回このお手紙を送ったのは、父親の相続手続きについて、太郎に協力をお願いしたい為です。

確かに父親の人間性には問題があり、私があなたに行った対応も適切なものでは無かったと思います。

太郎にとって、この相続に絶対に関わりたくないと言う気持ちも十分理解できます。

ところが、太郎が私と同じく父親の相続人である以上、相続手続きを行う、もしくは遺産を放棄する等を行わない限り、この問題は一生太郎に付きまといます。

仮に太郎が亡くなった場合であっても、太郎の奥さんや子供にこの問題が引き継がれ、問題が解決する事はありません。

しかし、適切な相続手続きや遺産の放棄を行った場合、今後は父親の事を考える必要性はなくなります。

つまり、相続手続きは、今後関わりたくない人物との関係性を清算する事ができる最後の場面なのです。

以上の事を踏まえ、まずは太郎が今後どうしたいのか、気持ちを聞かせて下さい。

お手数かけますが、本書面をご覧になられましたら、私に電話を下さい。

本件は太郎の今後の生活にとって非常に重要な事になります。ご連絡をお待ちしております。

これから季節の変わり目となります。お体にはくれぐれもお気を付けください。

敬具

 

※ポイント
書面を送る場合は、まずはこちらから「相続についてこうしたい」と言う提案ではなく、「相手の考えている事をまずは聞きたい」と言うスタンスにしましょう。

こちらから先に提案してしまうと、「勝手に決めるな!」と言う展開にもなりかねません。

 

6.専門家が関与すれば連絡を取る事が出来るか?

「どうしても当事者間での話し合いが難しく、誰か専門家に間に入って欲しい!」

そう思われた場合、弁護士や司法書士に依頼する事が考えられますが、弁護士や司法書士のような第三者である専門家が連絡を無視している相続人に対して連絡を行う事で、状況が変わるのでしょうか?

確かに、相続に関して法律家が関与する事により、連絡を無視していた相続人が連絡をしてくる可能性もありますが、これには注意が必要です。

つまり、 法律家が関与する=相手にとってみれば自分の『敵』から連絡が来た事にもなるのです。

その結果、ますます心を閉ざしてしまう危険性があり、場合によっては弁護士・司法書士が原因で「もめる相続」に発展する可能性があります。

確かに、弁護士・司法書士は法律の専門家です。

相続に関連する法律を日々使いこなし仕事をしていますし、法律の事を沢山勉強しています。

しかし、法律と同じレベルで(学問として)コミュニケーション、人間関係の事を勉強した弁護士・司法書士はほとんどいないでしょう。

(そもそも、コミュニケーション、人間関係を重要と考えていないのかも知れません。)

あなたは、弁護士や司法書士に相談を行った時に横柄な態度、見下された態度をされた事はありませんか?

つい先日、札幌の弁護士がタクシーの運転手に対して暴行を行ったニュースがありました。

これもコミュニケーション、人間関係の事を軽視している表れかもしれません。

そのような専門家が何も考えずに連絡を無視している相続人にアプローチした場合、もめる事が容易に想像出来るのではないでしょうか?

法律のプロとコミュニケーション、人間関係のプロは全く異なります。

もめない相続の為には、コミュニケーションや人間関係についての技術が必要になります。

この点はきちんと押さえておきましょう。

 

7.私が行っている解決方法

参考までに、私が行っている、連絡を無視している相続人の方へのアプローチ方法をご紹介します。

私は該当の相続人の方について、最終的にお電話やご自宅に訪問してお話しする事があります。

ただそれは、あくまで他の相続人の方の意向をお伝えし、対象の相続人の方のお話をお伺いする「連絡係」としての役割で行っています(他の相続人の代理となり、交渉を行うのは弁護士しか出来ません)。

この「連絡役」と言うのが実は対象の相続人にとってみれば重要なようで、「代理人」であれば対象の相続人の方にとってみれば私の事は「敵」となるでしょう。

しかし、代理人ではない事、交渉する為にお話ししているわけではない事、あなたのお話もお伺いしたい事等を時間をかけてしっかりとご説明する事により、対象の相続人の方も私に色々なお話をして下さいます。

そして、私は代理人ではありませんので、対象の相続人の方のお話をしっかりと聴く必要があります。

相続に関する想いや他の相続人に関する感情等、相続人全員の方に正確にお伝えする為、私は全身全霊で聴きます。

だからこそ、非協力的になっていた相続人の方にも喜ばれているのだと思います。

その結果、相続人全員の方が相続の話し合いが出来るようになった事が実績としてあるのです。

 

8.最終手段

上記の方法を試してみて、それでも状況が一向に改善されないのであれば、最終手段として遺産分割調停や審判の申し立てを行う事を検討すべきです。

確かに手間や時間、弁護士を代理人にした場合にはお金がかかりますが、何も行動をしなければ問題は解決しませんので、覚悟を決めるべきです。

なお、ある特定の状況がそろった場合のみですが、遺産分割調停ではなく通常の民事訴訟(しかも1回の期日だけで)で、「相続人から連絡を無視されて困っている」と言う問題を解決する事が可能です。

この例外パターンはまた機会があればお話したいと思います。

 

9.まとめ

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

連絡を無視している相続人に対しては、書面にて無視を続けても有利になる事は無い事を丁寧に伝え、かつ連絡を無視している理由にも耳を傾け、相続手続への協力を促しましょう。

連絡を無視している相続人も、相続人である事には変わりません。

その方を無視して相続手続きは出来ませんし、かといってこのまま何もしなければ相続手続きは出来ず、二次相続等が発生するともっと事態がややこしくなる為、早急な対応が必要であると言えます。

まずは相続人間で複雑に絡み合った感情の問題について、ひとつひとつ丁寧に解きほぐし、客観的に相続の話し合いが出来るような環境を作る事が最優先で行うべき事です。

このポイントをしっかりと押さえ、相手とコミュニケーションを行う事で、きっと良い結果が得られます。

「相続人が連絡を無視している」と言う問題は、どのような形であれ必ず解決方法はあります。

ただし、それは「行動する事」が大前提です。

まずは行動してみて、それでもダメだった場合や、「そもそもそんな事難しいからムリ!」と思われた場合は、当事務所に一度ご相談下さい。

様々な解決策をご案内させて頂きます。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

 

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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