こんな相続はかえって夫にマイナスだ

【事例】
Q:先月、夫の父親が亡くなり、相続が発生しました。法事も一段落し、夫が他の相続人と相続の事で話し合ったそうなのですが、それが非常に納得がいかないのです。

義父の相続人は義母と夫、それに夫の弟の3人なのですが、義母と義弟に財産の全てが渡り、夫は一切相続をしない話し合いをしたそうなのです。義母はこれからの生活があるので仕方が無いのかもしれませんが、義弟が法定相続分以上にもらう事がどうしても納得出来ません。

夫は「弟は精神的な疾患があり、働く事がなかなか難しい。俺は安定した会社で給料もそれなりにあるので、相続を辞退するようにお袋から言われた。多分、親父が生きていれば同じように言うと思う」と言っているのですが、私から見れば義弟は少し変な性格なのですが、とても精神疾患があるように思えず、ただのニートにしか見えません。義弟は楽してお金を得ようしているのがミエミエで、それがどうしても納得がいかないのです。

また法律上、夫も相続人ですので、法定相続分があるはずです。それを主張しないとのはおかしい、と夫に言ったのですが、「ウチの相続の事はウチで決める。部外者は口を出すな」と言われました。

別にお金が欲しいわけではありません。ただ、このような不公平な遺産分割協議が納得できないのです。それに、夫は優柔不断な性格で、もしかしたら義母から言いくるめられているのかも知れません。それなのに、法律上の正当な権利を主張する事は間違っているのでしょうか?

A:法律上の権利を主張する事は何ら間違ってはいません。しかし、それが絶対に正しい訳ではないのです。

 

1.正しさVS.正しさ

世の中には色々な法律問題が存在しますが、相続ほど、正しさと正しさがぶつかり合う場面が多いと感じます。特に、「法律上はこうだから」と、取りあえず法定相続分の主張をするのは、相続では当然に行っている事だと思います。

特に、夫の相続については妻は客観的に見る事が出来ます(夫の家庭の事情を子供の頃から見ていたわけではありませんので)。その意味では、妻は夫の相続について、法律上正しい視点で見る事が出来るのだと思います。

でも、夫の相続を直接行う側としては、別の正しさがあるのです。
 
「父の介護をしていたから遺産が多くもらえるはずだ」
「○○は父からお金を沢山もらったはずだ」

このような寄与分や特別受益を主張出来そうな事から、
 
「私は父から子供の時に虐待を受けていたから、遺産が多くもらえるはずだ」
「私は専業主婦として、好きでもない夫を何十年も支えてきた。だから遺産が多くもらえるはずだ」
「私は兄とは違って大学に行かせてもらっていない。だから遺産が多くもらえるはずだ」

・・・等、とても法律では解決しない問題ですが、それでも当事者本人としては正しいと思っているのです。このような事情がある家庭の相続に対し、『法律論』だけを振りかざしても根本的な問題は何も解決しないのです。

 

2.法律は公平ではない

法律で定められている相続人の権利としまして、各相続人の法定相続分及びその法定相続分を修正する寄与分、特別受益がありますが、それ以外はありません。つまり、寄与分や特別受益に該当しなければ、どんなに相続人が正しいと思っていても、法律上は認められない事になります。

家庭ごとの様々な事情があるにも関わらず、法律を機械的に当てはめてしまえば、確かに遺産分割協議と言う話し合いは終了するかもしれません。しかし、相続人のその後の生活はどうでしょうか?きっと遺恨が残り、家族としての付き合いが断たれてしまうでしょう。

法律上の主張を行う事は、けっして間違った事ではありません。しかし、一歩間違えば、夫の家族関係を破壊してしまう事にもなりかねないのです。その点は考慮しないくてはいけないでしょう。

※寄与分とは?
共同相続人の中に、被相続人の事業に関して無償で働いた、被相続人にお金をあげた、被相続人の療養看護を行った等によって、被相続人の財産の維持又は増加について、特別な寄与(貢献)をした場合、その相続人の相続分を修正(多くする)する制度です。

※特別受益とは?
被相続人の生前に行われた、被相続人から相続財産の前渡しのような贈与が相続人に行われた場合、その相続人について相続分を修正(少なくする)する制度です。

 

3.まとめ

夫の家庭の相続について、口を出したくなるお気持ちは分かります。しかしながら、あなたは夫の父(義父)について、そもそも相続人ではありません。その為、夫の家庭の相続について何らかの意見を行う事が出来るわけでは有りません。

また、夫の家庭の事情について、一番理解しているのは、夫自身です。夫自身が法律的な話だけではなく、実質的に公平になるにはどうすれば良いか、そのゴールに向かって努力をされているのであれば、それを最大限尊重してあげるべきではないでしょうか?

・法律論を語るのは正しいけれど、絶対に正しいわけではない。
・実質的に公平にするには、そのご家庭の細かい事情を考慮する必要がある。
・遺産分割調停や審判を行えば、遺産分割と言う問題は解決するけれど、相続人のその後の人生に大きな影響を及ぼす事がある。

このように相続も多面的に考えて、夫にとって一番良い相続を考えてあげるべきでしょう。

 

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー
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