相続と婚姻届の関係性

こんにちは。横浜・泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、相続人である事を主張する人物が突然現れて困っている方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:先日、父が80歳で亡くなりました。母は既に20年前に他界しており、相続人は子どもである私(長女)と、弟の二人だけです。

父は一人暮らしをしていたのですが、どうも数年前からとある女性(Aさん:30代)とお付き合いをしていたようです。父から「最近友達になった女性がいる」とは聞いていたのですが、その方の年齢や、お付き合いをしていた事は知りませんでした。

父が亡くなった時、Aさんはどこからか父が亡くなった事を知り、どうしても父の通夜と告別式に参加したいと私達に連絡がありました。私は父からAさんの事は聞いていたので特に問題は無いと思い、通夜・告別式の日取りを教え、私と弟は通夜の時に初めてAさんとお会いしました。

それから数日後、Aさんは再び私のもとを訪れ、父の遺産の請求をしてきました。実は父とお付き合いをしており、夫婦のような関係性であった事。その証拠として父の署名と押印がされた婚姻届を私に見せ、自分は妻に相当すると主張してきたのです。

まだ婚姻届は提出されていないのですが、これが提出、受理されると、Aさんにも遺産を受け取る権利が発生するのでしょうか?なお、父は特に遺言を残してはいません。

A:お父様が既にお亡くなりになっている以上、婚姻届の届出の効力は発生しないため、Aさんはお父様の相続人ではありません。

 

1.相続人の範囲

相続人となれる者(相続人の範囲)のおさらいをしてみましょう。相続人の範囲は下記のとおりとなります。

・第1順位:子(子どもがいない場合は孫等、下の世代)
・第2順位:父母、祖父母といった上の世代
・第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合はその子)

なお、配偶者は第1~第3順位の相続人と同順位で相続人になります。

事例のAさんは、まだ婚姻届を提出していないため、上記の相続人にはなりません。

 

2.婚姻届が受理されるのか?

では、Aさんが相談者のお父様が亡くなった数日後に婚姻届を市区役所に提出した場合、お父様の死亡前に遡ってその効力が生じるのか?と言う疑問点が出てくると思うのですが、届出受理時に当事者が死亡していた場合、届出の効力は生じません(大判昭16.5.20)

つまり、婚姻届は受理され審査をされるがその効力は生じない為、夫婦の新しい戸籍等が編製される事はありません。なお、(あってはならない事ですが)当事者の一方が死亡している事を見逃され、夫婦の新しい戸籍が編製された場合は、裁判手続等で婚姻の無効を主張する必要があります。

その為、事例のAさんは婚姻届をまだ提出していない為、例え今から婚姻届を提出したとしても、相談者のお父様の相続人とはなりえません。

なお、届出人が生存中に婚姻届を郵送していた場合は、死亡後であっても届出は受理され、届出人の死亡時に届出があったものとみなされます(戸籍法第47条)。

 

3.まとめ

相続は多かれ少なかれ、遺産を取得する権利が発生します。その為、本来は相続人ではないにも関わらず権利を主張してくる者が現れる事があります。

葬儀直後等は肉体的、精神的疲労がピークになっており、上記のような無権利者の言い分をそのまま聞いてしまいがちになりますが、今一度冷静になって対処して頂きたいと思います。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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