
こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回の記事は、空家を相続した事ついて、ご相談されたい方向けの記事です。
空家を放置していると、その敷地の固定資産税が増える・・・。
このような話を聞いた事はありませんか?
住宅用の土地については固定資産税の軽減措置があるのですが、その空家が「特定空家」に該当し、市町村から空家の所有者に対し、「適切に管理しなさい」、と勧告がされる場合があります。
それを放置していると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、支払う固定資産税が増える、と言った話です。
空家になる理由は様々なのですが、例えば、
・そもそも相続人がおらず、空家になってしまった。
・認知症等で施設に入居しなくてはならなくなり、結果として空家になってしまった。
等々、様々な理由が挙げられます。
でも、ここで一つの疑問が生じませんか?
そもそも「特定空家」とは一体何なのか?と。
空家を所有している方にとっては、特定空家に該当すれば固定資産税が上がるわけですから、気が気でないと思います。
その為今回は、相続においても考える必要がある、空家に関する諸問題を解説していきたいと思います。
1.空家の何が問題なのか?
最近様々なメディアで取り扱われている「空家問題」ですが、何が問題なのか?いまいち分からない方もいらっしゃると思いますので、その問題を簡単に挙げています。
① 防災性の低下(倒壊、崩壊等)
例えば、台風や積雪等による建物の倒壊、崩壊。屋根・外壁の落下。火災発生のおそれ、等です。
皆様のお近くに、今にも倒壊しそうな空家はありませんでしょうか?
家は管理されていないと痛んできて、最終的には倒壊する可能性がでてきます。
② 防犯性の低下
少し前に、刑務所より脱獄した受刑者が空家に潜伏して事がニュースで流れました。
警察でも空家の所有者に許可を得ない限り、勝手に空家に入る事が出来ません。
その為、空家は犯罪者が隠れる絶好の場所となるのです。
③ ごみの不法投棄による衛生の悪化、風景、美観の悪化
このように、空家がもたらす問題は多岐に渡ります。
さらに空家の所有者又は管理者の特定が困難な場合が多いのが現状です。
また、平成25年に総務省が実施した調査によりますと、全国の総住宅数6,063万戸に対し、空家の総数は820万戸、その割合は13.5%となっております。
今後、少子高齢化が進む事により、その割合がますます増加する事が予測されており、その対策が急務となっております。
その為、空家がもたらす問題に総合的に対応する事を目的として、
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家対策特別措置法)が、
平成27年に施行されました。この法律の中で、「空家」や「特定空家」が定義されているのです。
2.空家対策特別措置法による「空家」とは?
空家対策特別措置法では「空家」を次のように定義しています。
(空家対策特別措置法2条1項.。)
この法律において「空家等」とは建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。
つまり、
「人間の住居や店舗として使用する等、意図をもって建築物として使用していない事が、長期間にわたって継続している状態」
である事を意味します。その為、次のような家屋は「空家等」には該当しません。
・現実には住んではいないが、週末や連休等で過ごしている別荘。
・遺品当の物品が置かれ、時々遺品等の整理のために出入りしている家屋。
→居住その他の使用がなされていると考えられる為です。
さて、所有している家屋が、この「空家等」に該当する場合、所有者にどのような影響があるかをお話しします。
まず、空家等の所有者は、空家等が周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理を行う努力義務があります(空家対策特別措置法3条)が、それ以上、何か不利益になる事は基本的にはありません。
冒頭の固定資産税の話も実は今まで通りです。
問題は所有している家屋が「特定空家等」に認定された場合です。
3.空家対策特別措置法による「特定空家」とは?
特定空家は次のとおり定義されています(空家対策特別措置法2条2項)。
②適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態の空家。
③その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると
認められる空家等
要するに、
・壁や屋根がボロボロになって今にも崩れ落ちそうな空家
・ゴミ屋敷で多数のネズミやハエが発生している空家
・庭の木が近隣の道路にはみ出し、歩行者に危険が生じる可能性がある空家
等です。
そして、市町村から空家がこの特定空家と認定された場合、上述したとおり、固定資産税の軽減措置の対象外となり、固定資産税が増額されるのです。
その他、市町村は特定空家等に対する措置として、特定空家を適切に管理するように、所有者等に対して助言や指導を行う事ができ、最終的には行政代執行として特定空家等を除去し、その費用を所有者等に請求する事ができます。
4.相続した空家を売却した場合の譲渡所得の特例
相続した空家が「特定空家」に該当しない限り、基本的には問題はないのですが、それでも適切な管理責任や固定遺産税の納税義務は発生します。
その管理の手間が大変な為、最終的には相続した空家の売却を検討する事もあるでしょう。
空家等の財産を売却し、譲渡した事による利益が発生した場合、所得税として譲渡所得が課税されます。
この譲渡所得について、相続した空家の特例があり、
・平成28年4月1日から令和元年(2019年)12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるとき
譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
「相続した空家に今後住む事はない」のであれば、この特例が利用出来るうちに空家を売却する事も一つの方法でしょう。
5.まとめ
特定空家等に該当すると認定されなければ、固定資産税の軽減措置はそのままなのですが、適切な管理を行わなければ、いずれは周囲に悪影響を及ぼす特定空家になります。
空家問題を未然に防止するためには、自分の財産である家屋をきちんと管理、処分する事が重要となります。
当事務所では、積極的に空家に関するご相談を承っております。
その中でもし空家の売却をご希望の場合は、信頼のおける不動産会社をご紹介できますので、お気軽にご相談下さい。