曾祖父名義の不動産を直接自己名義にしたい場合

相続登記

【事例】

Q:私の曾祖父(上記A)名義のままの土地があり、困っています。横浜のとある場所にある不動産をこの度売却したいと考えていたところ、その土地の名義が曾祖父のままである事が判明しました。

この土地を直接私(R)名義にして売却をしたいのですが、直接名義を変更する事は可能でしょか?また変更可能な場合、その方法を教えて下さい。

A:関係者全員が、その土地をあなた名義にする事に合意している事、それに伴って遺産分割協議書の書き方を工夫する事で、曾祖父から直接あなた名義に変更する事は可能です。

1.数次相続とは?

数次相続とは、ある方が亡くなりその遺産分割協議が行われる前に、相続人の一人が亡くなってしまい次の相続が開始される事を言います。

上記の事例で言えば、Aが亡くなった後、相続人であるB、C、Dがこの土地について本来遺産分割協議を行うべきだったところ、遺産分割協議を行う事なく全員が亡くなっています。

その為、B、C、Dの遺産分割協議を行う地位を、それぞれの相続人(E~I、J~K、L~N及びP)が引き継いでおり、さらにPが亡くなっておりますので、その相続人(O及びQ~S)がPの地位を引き継いでいる、と言う複雑な数次相続が発生しています。

登記の原理原則(権利関係を正しく公示する)から考えると、本来は相続が発生した毎に相続登記を行うべきです。
つまり、A→B、C、Dに法定相続で登記して、その後、B、C、Dについて各相続人の法定相続分で登記して・・・と言う流れで登記するのが原則です。

しかし、その原則を貫きますと、何度も相続登記を行う必要がありますし、登録免許税(数万~数十万)も何度も納付する必要があり、非常に不経済です。

そこで、曾祖父(A)名義の土地について、直接ひ孫(R)に名義を変更が可能であれば、登録免許税(数万~数十万)の節約になりますし、かなりの手間が省略出来ます。

そこで今回は、事例のような数次相続が発生した場合、どのように考え、どのような手順を踏まえれば、直接名義を変更する事が出来るのかを解説していきたいと思います。

2.直接名義を変更する方法 

① 直接名義変更が出来る根拠の先例

直接名義変更が出来る登記先例(法務局が登記を行う上でのルールの事です)として、下記の先例がありますので、まずは見てみましょう。

昭和30年12月16日民事甲2670号民事局長通達
『数次にわたって相続が開始している物件について相続による所有権移転登記を申請する場合、中間の相続が単独相続のときに限って、一個の申請で登記を申請することができる。』

例えば、甲が亡くなり、その唯一の相続人である乙が相続登記を申請しないまま亡くなった場合、乙の相続人丙は直接甲→丙名義に変更する事が出来る、と言う先例です。

ポイントは、「中間の相続が単独相続のとき」に途中の相続登記を省略出来ると言う点です。

「中間の相続が単独相続のとき」とは、元々相続人が一人の場合はもちろん、遺産分割協議によってその不動産を相続する者が一人になった場合や、他の相続人が相続放棄を行った結果、相続人が一人になった場合も含みます。

つまり、事例がこの先例に該当すれば、ひ孫名義に直接名義を変更する事が出来ます。

おそらく関係当事者は該当の土地について、ひ孫(R)の名義にする事に合意していますので、後は遺産分割協議書の書き方がポイントになります。

② 遺産分割協議書に記載すべき内容

もう一度、相続関係説明図をご紹介しましょう。

直接AからRに名義を変更する為には、先例によると、中間の相続が単独である必要があります。これは遺産分割協議でもOKですので、

⑴ B、C、DがD単独とする遺産分割協議を行い、
⑵ その後、L~N及びPが、P単独とする遺産分割協議を行い、
⑶ 最後に、O及びQ~Sが、R単独とする遺産分割協議を行ったと言う遺産分割協議書を作成すればOKです。

もう少し分かりやすく解説しますと、

⑴ B、C、Dは既に亡くなっていますので、それぞれの相続人
亡Bの相続人:E、F、G、H、I
亡Cの相続人:J、K
亡Dの相続人:L、M、N及び亡Pの相続人O、Q,R、S
が、亡Aの相続について、該当の土地を亡Dに相続させる合意をする。

⑵ 次は亡Dの相続について、該当の土地を亡Pに相続させる合意を行うのですが、この遺産分割協議の当事者(相続人)は、L、M、N及び亡Pの相続人O、Q、R、Sとなります。この全員で、該当の土地を亡Pに相続させる合意を行えばOKです。

⑶ 最後に、亡Pの相続人であるO、Q、R、Sで、該当の土地をRに相続させる合意を行えば終了です。

3.遺産分割協議書のサンプル

※実際に使用する際は、各自の実情に合わせた遺産分割協議書を作成して下さい。

※相続人の表記は一部省略していますが、実際は各相続についての相続人全員の記載が必要です。

⑴ Aについての相続についての遺産分割協議書

⑵ Dについての相続についての遺産分割協議書

⑶ Pについての相続についての遺産分割協議書

4.まとめ

今回、数次相続について直接名義変更する方法や、遺産分割協議書のサンプルをご紹介しましたが、数次相続は実際の事例よっては、相続の知識をフル活用して、様々な判断を行う必要があります。

その為、数次相続が発生し、不動産の名義変更を行う場合は、必ず司法書士にご相談するようにして下さい。

勿論、当事務所でもこのような複雑な相続登記のご相談を承っております。

お気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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