
こんにちは。司法書士の甲斐です。
相続の専門家は依頼を受任する前に必ず、有料無料を問わず相談会を行っています。
どの専門家もだいたい同じだと思いますが、60~90分前後の時間をかけて、専門家が相談内容をしっかりとヒアリングします。
その上で、各相談者毎にどのような手続きが必要となるのか、一連の手続きの流れと注意点について丁寧にお伝えしています。
また、どのようにすれば余計な手間や無駄な税金を省略できるか等、相談者の立場にたって分かりやすくお伝えするでしょう。
相続対策のコンサルティングを業務として行う場合、いわゆる「手続きありき」の考え方はNGですからね。
相談者の話を良く聞かない段階で、遺言だ家族信託だを勧めるのは三流以下と言う事です。
でも、
「相談者の話を良く聞く」
とは、具体的に何をどの程度聞けば良いのか、分かりますか?
逆に言えば、相続の専門家が相談者からどのような話しをどの程度聞けば、専門家として価値有るオーダーメイドの提案ができるか、と言う問題です。
これをいい加減に行いますと、間違った結果を提示してしまいますので、結構重要なんです。
専門家によっては違いがあると思いますが、私は大きく分けて
「人に関する事」
「財産に関する事」
について、モレなくダブりがないように、しっかりとヒアリングを行っています。
1.人(被相続人・相続人等)に関する事
① 財産を残す側(被相続人)について
財産を残す側の方について、重要な要素は下記のとおりです。
・本人の父母等、近しい方の病歴
本人が大きな病気(特に三大疾病)を患った経験がある場合、また同様の病気になる可能性もありますし、その場合の財産管理等についても検討しなくてはいけません。
また、何かしらの病気をきっかけに認知症になると言う事も考えられます。
認知症対策も検討しなくてはいけないでしょう。
本人の父母等の病歴をヒアリングするのは、病気の中には遺伝性の病気もあるからです。
本人が現在元気でも、父母が重い病気を患っていた事がある場合、注意をしなくてはいけません。
② 財産を託される側(相続人について)
続いては、財産を託される側の方についてです。
こちらは考えるべき事が結構あります。
・居住地
・職業(年収)
・性格
・配偶者の有無
・他の家族との関係性
・その他
・相続人の年齢
相続人自体が高齢であれば、認知症のリスクや代襲相続の可能性が出てきます。
・居住地
相続対策は家族間で何度も話し合う事が必要になりますが、家族全員がすぐに会いに行く事ができるかどうかが相続対策が成功するポイントの一つになります。
また、親の介護が必要になった場合、誰が面倒を看るのかと言う点にもつながります。
・職業(年収)
相続はお金が絡む問題ですので、相続人の経済状況によっては「もっと欲しい!」と思う方が出てくるかもしれません。
特に勤務先がブラック企業で長時間勤務を行っていて、精神的に疲弊をしている場合、論理的な話し合いが出来ない可能性もあります。
相続対策で考えるべき視点の一つは、推定相続人の仕事(勤務先)。
・ブラック企業で精神的に病んでいる→論理的な話し合いが出来ない事も。
・勤務先の経営が悪化して倒産(リストラ)の可能性あり。
→お金が無く、遺産を多く欲しがり揉める。今は良くても、相続でもめる可能性は十分あります。
— 甲斐智也@司法書士×問題解決思考 (@tomoya_kai) July 3, 2019
・性格
几帳面、大雑把、楽観的、神経質、バカ正直等、人の性格は千差万別で、この性格を把握しないと話し合いが中々進まない事があります。
・配偶者の有無
相続人の配偶者にもしっかりと相続対策の事を伝える必要があるためです。
・他の家族との関係性
仲が良い悪い、その他何かしらの問題が発生しうる関係にないかをチェックします。
・その他
相続人が認知症や知的障がい等で意思能力が無い場合、相続人が行方不明等、相続人自体に問題がある時は、相続対策は必須です。
2.財産に関する事
① 財産の種類について
続いては財産に関する事です。
まずはどのような財産があるのか、財産の種類を正確に把握する必要があります。
・銀行口座
・有価証券
・生命保険
・その他
自宅以外に不動産を所有している場合、その用途によっては事前に売却する等、検討を行います。
・銀行口座
口座についても用途を確認し、引落し口座や貯蓄口座等以外で、特に何らの目的がない口座は、整理しても良いでしょう。
・有価証券
信託銀行等の投資信託で所有しているのか、それとも個人で所有しているのか(自社会社の株式等)によって対策が変わってきます。
・生命保険
基本的に相続財産ではありませんが、相続に関連する財産ですのでヒアリングを行います。
・その他
ゴルフ会員権、車、バイク、骨董品、宝石類、着物等。
② 相続税の問題について
場合によっては相続税の申告・納税が必要になり、その対策について検討が必要になる事があります。
お知り合いに税理士がいない場合、こちらから税理士をご紹介しています。
3.相談者の希望、問題点の抽出、解決策の提示
随分長くなりましたが、ここまでしっかりとヒアリングさせて頂いて、ようやく相談者の方の希望をお伺いし、その希望を叶えるための問題点とその解決策をご提案します。
「人に関すること」「財産に関すること」を正確に把握しないまま、いきなりこのステップに進んでも誤った前提で判断する事になります。
「家族信託をやりたいんです!」
と言われて家族信託に関する手続きを説明し、受任したとしても後から
・受託者候補者が全員委託者(受益者)と遠い場所に住んでいる。
・実は子供達の仲が悪く、残余財産の帰属で100%相続でもめるような信託契約書を作ってしまった。
・そもそも子供が1人なので家族信託を行わなくても、相続時精算課税制度を利用した生前贈与で十分に対応できた。
4.まとめ
「コンサルティング」業務を行うのであれば、少なくとも上記の細かい情報をヒアリングするのは必須です。
(個人的にはまだまだ足りないと思っています。)
もし、どこかの専門家に相続対策の事を相談される際は、最低でも上記の事を質問されるかはチェックして下さいね。
その専門家の本気度が、ズバリ分かりますので。