家族信託の信託契約書は公正証書で作成した方が良い3つの理由

民事信託・家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

家族信託(信託契約)を利用する場合、様々な内容を契約として決める必要があります。

その契約の内容が確定すれば、信託契約書を作成し、委託者と受託者が信託契約書に署名・押印を行いますが、実はこの信託契約書に関しましては、特に法律上の決まりはありません。

信託の内容として法定されている事項はありますが、信託契約書はどのような形式で作成しても自由ですし、そもそも契約書を作成しなくても契約自体は有効です。

とは言え、信託契約書は委託者、受託者以外の第三者(銀行等)が関与する事がありますので、信託契約がしっかりと行われた事を証明する為に、信託契約書を作成する事が事実上当然になっています。

問題は、その信託契約書について、普通の契約書にするのか、それとも公正証書で作成するのか、と言う点があります。

家族信託は法律に詳しくない、一般の方が行う、身近な財産管理である事を前提としています。

その為、家族信託を利用しているご家庭の中には、「わざわざ厳格な公正証書を作成する必要は無いのでは?」と言う理由で、普通の契約書にとどめているケースがあります。

しかし、家族信託は様々な理由から、公正証書で作成した方が望ましいのです。

今回は、その家族信託の信託契約書を公正証書で作成した方が良い理由をお話していきたいと思います。

1.公正証書とは?

そもそも公正証書とは何なのでしょうか?まずはこの点を明確にしたいと思います。

公正証書とは、公証人法に基づき、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書の事です。

公証人とは、ある事実の存在や契約等の法律行為が適法に成立した事等について、証明してくれる人です。

(なお、公証人は裁判官や検察官、弁護士経験者が多いです。)

公正証書は公文書であり、法律のプロである公証人が本人確認や意思確認をしっかり行い、契約の成立を証明してくれますので、一般の方が作成した契約書よりはるかに証明力が高いのが特徴です。

その為、後々もめる可能性がある契約や、遺言書等について公正証書で作成される事も多く、家族信託の信託契約書も公正証書で作成する事が出来ます。

2.信託契約書を公正証書で作成した方が良い理由

① 任意後見契約が公正証書での契約を義務付けられているから

家族信託のように他人の財産を管理する制度として、「任意後見」と言う制度があります。

これは、ご自分が認知症等になった場合に備えて、予め後見人となる人間を決めておき、その後見人予定者と契約を行い、実際に認知症等で意思能力が低下した時に、財産管理や身上監護を行ってもらう制度です。

この任意後見契約は公正証書で行う必要があり、一般の契約書で任意後見を利用する事は出来ません(無効になります)。

任意後見は他人にご自身の重要な財産の管理や身上監護をお願いする意思表示が必要になります。

しかし、実際に任意後見が開始された場合、ご本人の意思能力が低下する為、そもそもその契約の有効性が争われる事があります。

その時に任意後見契約は一般の契約書でも良いとした場合、契約の無効を巡って紛争が多発する事が予想されます。

そのような紛争を防止し、法的な安定性を確保する為に、任意後見契約は公正証書で行う事が義務付けられているのです。

家族信託も(身上監護は含まれませんが)、ご家族の財産を管理すると言う点で言えばその本質は全く同じです。

その為、後々の紛争を防止すると言う点では、信託契約書は公正証書で作成された方が良いでしょう。

② 信託口口座の開設のため

家族信託における受託者は、信託された財産について自分の財産とは区別して管理する必要があります。

その為、信託財産を金銭とした場合、金融機関で信託専用の口座(信託口口座)を開設して、その信託口口座で信託財産を管理する事になるのですが、実は金融機関はこの信託口口座の開設に消極的です。

その理由は様々なのですが、本当に信託契約が成立しているのかと言った観点から、疑わしい取引を拒否してリスク回避を行いたいと狙いがある事が理由の一つと考えられます。

その為、公証人が関与して本人確認、意思確認がしっかりと行われた信託契約書を作成し、客観的な証拠して金融機関に提示する事で、信託口口座の開設を行ってもらえる確率が高くなりますので、その意味でも信託契約書を公正証書で作成した方が良いでしょう。

③ 公正証書である信託契約書の原本が公証役場で保管されるため

一般の契約書であれば、仮に盗難にあったり紛失した場合、それでお終いです。

新しく契約書を作成する等の手段を取る事は可能に見えますが、委託者が認知症等で意思能力が低下していればそれも不可能になります。

信託契約書を二度と入手する事は出来ません。

つまり、第三者に対して信託契約が行われた事を証明する事は不可能になります。

その為、新たな信託口口座の開設や、不動産を信託財産とした場合の、その処分が不可能になります。

しかし、信託契約書を公正証書で作成した場合、その原本は公証役場で保管されます。

公正証書で信託契約書を作成した場合、その正本が当事者にそれぞれ交付されますが、その正本を例え紛失したとしても、原本が公証役場で保管されていますので、その謄本をいつでも請求する事が出来ます。

その為、信託契約書を公正証書で作成する事により、その紛失のリスクを回避する事が出来ます。

3.信託契約書を公正証書で作成するデメリット

一方、家族信託の信託契約書を公正証書で作成するデメリットも存在します。

一つ目は、公証人に対する手数料が発生すると言う点です。

費用は財産の価額によって変化しますが、数万円程度必要になってきます。

また、公正証書を作成する為、委託者、受託者等の関係者が集まらなくてはいけないと言う点もデメリットです。

4.まとめ

家族信託は文字通り、家族間、つまり身内で行う信託である為、極力厳格な部分は排除しがちになります。

しかし、家族信託が行われた事を全然関係がない第三者に証明する必要が出てくる場合があります。

その時に、せっかく委託者・受託者が何度も話し合いを重ねて決めた信託契約の内容について普通の契約書で作成していた場合、その後の信託財産の管理・処分について必要な手続きが進まない事も十分に予想されます。

無駄な労力やコストをかけずに、法的な安定性を保つためにも、信託契約書は公正証書で作成する事をお勧めします。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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