家族信託の重要な登場人物「信託監督人」「受益者代理人」とは?

民事信託・家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回は、家族信託の登場人物であり、かつ重要な信託監督人と受益者代理人のお話です。

家族信託はご自身(委託者)の大切な財産を信頼のおけるご家族(受託者)に託して、その財産の管理・処分を受益者の為に行ってもらう制度です。

ご自身の財産を託すわけですから、委託者と受託者は通常、特別な信頼関係があり、受託者はきちんとその任務をまっとうするでしょう。

ところが、場合によっては受託者としての仕事をあまり行わず、そればかりか託された財産を受益者の為に使わず、私的に流用してしまうかもしれません。

また、受託者がそのような事を行うおそれがないにしても、自分の財産を何の制限も無く託す事は、委託者にとって不安になるかもしれません。

そのような時に受託者を監督する制度が家族信託にはあります。

それが、「信託監督人」と「受益者代理人」です。

1.信託監督人

① 信託監督人とは?

信託監督人とは、分かりやすく説明すると、受託者が信託契約等に基づいて日々行っている財産管理が、きちんと適切に行われているかをチェックする人です。

文字通り、信託『監督人』です。

信託監督人は、信託法にきちんと規定されています。

信託法 第131条1項
信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

受益者は、受託者に対する監督権限を有しているのですが、受益者が高齢等でその監督権限を十分に発揮する事が出来ない場合があります。

そのような時に、信託監督人となる人を指定する定めを信託契約書等に盛り込み、実際に信託監督人を指定する事で、受託者に対して適切に監督を行う事が可能となります。

なお、信託契約書等に信託監督人となる人を指定する定めが無かったとしても、利害関係人が裁判所に請求する事により、信託監督人を選任してもらう事ができます。

② 信託監督人になれない人

信託監督人になれない人は以下のとおりです。

・未成年者
・成年被後見人
・被保佐人
・受託者

逆を言えば、これらに該当しなければ誰でも信託監督人になる事ができます。

弁護士や司法書士と言った専門職はもとより、ご家族の方でもなる事が出来ます。

③ 信託監督人の権限

信託監督人は、受託者が行っている信託契約等で定められた仕事の監督を行いますが、主なものとして下記のような権限があります。

・受託者が権限違反行為をした場合の取消権(信託法27条)
・受託者の利益相反行為をした場合の取消権(信託法31条)
・受託者の信託事務の処理状況に対する報告請求権(信託法36条)
・信託に関する帳簿等の閲覧等請求権(信託法38条)
・受託者の法令違反行為等の差止請求権(信託法44条)

2.受益者代理人

① 受益者代理人とは?

受益者代理人とは、本来の受益者が信託法や信託契約等の中で持っている一切の権利を行使する事が出来ます。

信託監督人が受益者が持っている受託者に対する監督権限だけを取り出しているのに対して、受益者代理人は受益者がもっている全ての権限を行う事が出来ます。

文字通り受益者の『代理人』です。

受益者代理人も、信託法にきちんと規定されています。

信託法第138条1項
信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

信託監督人以上の権限を持っていますが、信託監督人と大きく異なる部分は、裁判所に対して受益者代理人の選任請求ができない事です。

つまり、信託契約書等で受益者代理人の指定に関する事を明文化していなければ、受益者代理人を選任する事が出来ないのです。

② 受益者代理人になれない人

信託監督人と同様、未成年者、成年被後見人、被保佐人、受託者は受益者代理人になる事は出来ません。

つまり、これら以外の人は誰でも受益者代理人になる事が出来ます。

③ 受益者代理人の権限(注意点)

受益者代理人は、受託者への監督権限はもちろん、受益者が持っている全ての権利を行使する事が出来ます。

なお、受益者代理人が選任された場合、本来の受益者は信託法第92条に定められた事しか出来なくなります。

この点は要注意です。

3.まとめ

「信頼している家族が不正をするなんて考えられない!」

確かに一般の感覚からすると、家族があなたの大切な財産を横領する事は、通常考えられないかもしれません。

しかし、成年後見の例を挙げると、実際に成年後見人に就任した家族が、成年被後見人の財産を横領する事件が一定数存在します。

家族を信頼しているからこそ、お金や財産の事はしっかりと管理・監督を行う必要があるのではないでしょうか?

また、受託者の仕事に対して監督する人間がいれば、他の家族も安心するでしょう。

その為、信託契約書等の中で事前に信託監督人等を指定したり、事前に指定しないのであれば、後日指定する事が出来る事を定めていた方が望ましいでしょう。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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