生前贈与(相続対策)の落とし穴「あげたつもり」「貰ったつもり」

パズルピースとサクラ相続対策・認知症対策

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、生前贈与の注意点について解説していきたいと思います。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:父が先日亡くなりました。

相続人は父の子どもである長男、長女、次男である私の3人です。

先日、自宅を整理していたところ、父の部屋の金庫の中から私の子ども(つまり、父にとって孫)名義の通帳が何通も出てきました。

この事は誰も知らず、その残高を合計すると2,000万円を超えていました。

どうやら父は孫名義の通帳を作成し、贈与税の非課税枠を利用して長い時間をかけて、その孫名義の口座に入金をしていたようです。

父は私の子を非常にかわいがっていましたので、このような通帳を残した理由は良く分かります。

その後、私達兄弟は父の遺産について遺産分割協議を行ったのですが、そこで問題が発生しました。

長男と長女は、孫名義の預金も遺産に含めるべきだと主張したのです。

私は通帳の名義は孫なので、この預金は私の子どもが父から貰ったものであり、遺産に含めるのはおかしいと言ったのですが、話し合いが平行線になり、結局遺産分割調停にまで発展しました。

このような、祖父が孫の為に残した預金は、遺産に含まれるのでしょうか?

A:事例のケースは、預金は孫のものではなく、被相続人の遺産として取り扱われる可能性が高いと思われます。

1.孫名義の口座を作成し入金する事は、生前贈与なのか?

銀行における本人確認が今より厳格では無かった時代は、祖父が孫名義の口座を開設する事は良く有りました。

また、本人確認が厳しくなった現代においても、未成年者の口座の開設が出来ないわけではありません。

祖父にとってみれば、かわいい孫の将来の為にお金を残すつもりで、孫名義の口座を開設し、そこに毎年入金を行ったのだと思いますし、実際にそのような方がいらっしゃいます。

しかしその優しい配慮が、相続において争いの種になる事があるのです。

このような形の預金は「名義預金」と呼ばれています。

口座名義は孫なので、祖父としてみれば孫の為にお金を「あげたつもり」で、口座に入金していると思われます。

これには問題があり、祖父が自分で管理している孫名義の口座に、祖父自身が入金を行っていますので、法律上、「贈与」とはみなされません。

結果として相続においては祖父自身の遺産として遺産分割協議の対象になってしまうのです。

2.孫の為にお金をきちんと贈与する為には?

贈与と言う法律行為を発生させる為には、「あげる意思表示」と「貰う意思表示」が必要です。

事例のケースでは、祖父には孫にお金をあげる意思はあったと思うのですが、孫にはお金を「貰う意思」がありませんでした。

その為、贈与は成立しておらず、この預金は遺産として取り扱われる事になるのです。

では、どうすれば良かったのか?孫にお金を「貰う意思」があれば良かったのです。

また、その意思を客観的に明確にする為、贈与契約書を作成すれば良かったのです。

ただし、贈与契約書は1回だけ作成するのではダメです。

口座に入金する度に、お互いに贈与の意思を確認し、贈与契約書を作成する必要があります。

こうすれば、その預金は孫独自の財産となる為、遺産分割協議時に相続人間で争う事が無かったのです。

3.まとめ

孫のように大切な家族の方に自己の財産を贈与する場合、面倒くさがらずに必ず客観的な書類を残すようにしましょう。

少しの手間をかける事で、結果として将来の大きなトラブルを未然に防ぐ事が出来るのです。

相続はやり直しが出来ません。「ウチの家族は仲が良いから」と言うのは通用しないと思って下さい。

当事務所では生前贈与に関するご相談を承っております。生前贈与についてお悩み、お困りの場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
(詳細なプロフィールは名前をクリック)

相続・家族信託の相談会実施中(zoom相談・出張相談有り)

『どこよりも詳しい情報発信をし、さらに人間味があるから。』
相続・家族信託についてご相談されたほとんどの方が仰られた、当事務所を選ばれた理由です。難しい法律の世界を分かりやすく、丁寧にお話しします。将来の不安を解消する為に、お気軽にお問い合わせ下さい。

相続対策・認知症対策
町田・横浜FP司法書士事務所
タイトルとURLをコピーしました