不動産を売却して売買代金を取得させる内容の遺言「清算型遺贈」とは?

遺言

こんにちは。

もめない為の相続対策、その他様々な理由から活用されている、「遺言」。

遺言の方式は自筆証書遺言、公正証書遺言等様々あり、基本的には、

「ある特定の財産を特定の人に取得させる」趣旨の事が書かれています。

そして、ある財産(例えば不動産)を売却して、売却に関わる諸費用を差し引いた残りお金を特定の人物に取得させる、「清算型遺贈」と呼ばれるものがあります。

財産を取得する側にとってみれば住むかどうか分からない不動産をそのまま取得するより、売却してそのお金をもらった方が良い場合もあるでしょう。

しかし、この清算型遺贈は手続きを行う上でのポイントがいくつかあり、そのポイントを押さえなければ適切な清算型遺贈を行う事はできません。

そこで今回は、この清算型遺贈を分かりやすくお話していきたいと思います。

1.清算型遺贈とは?

もう一度おさらいしましょう。

「清算型遺贈」とは、遺産(相続財産)を処分して、その処分を行った事によって得られた金銭を分配する遺贈の事です。

※遺贈=遺言による贈与の事です。

例えば、

「下記不動産を売却し、売却代金から売却費用を控除した残りの金銭を〇〇、××に2分の1ずつ遺贈する。」

と言う内容の遺言です。

特定の遺産のみを処分しても良いですし、遺産全体を処分しても構いません。

このような遺言の内容を実現する為には、文字通り遺産を処分する必要があるのですが、ここでポイントがあります。

例えば遺産が不動産の場合、その不動産を清算型遺贈で処分する時に不動産の名義をどうするか?と言う問題です。

例えば法定相続人がA、B、Cの三人、遺贈を受ける人(受遺者)がDの場合を考えてみましょう。

A、B、Cは不動産を相続する事が出来ません。

その為、不動産の名義をA、B、Cの三名にする事は何か変な感じがしますよね?

では、被相続人名義から不動産の買主名義に直接変更をする事ができるのでしょうか?

2.清算型遺贈の進め方

① 法定相続人名義で相続登記を行う

結論から先に申し上げますと、被相続人名義から直接不動産の買主名義に変更をする事は出来ません。

なぜなら、被相続人が亡くなった事により、法律上、遺産は一旦相続人全員の共有状態になるからです。

その為、まずは法定相続人全員の名義で、法定相続分による相続登記の申請を行う必要があります。

なお、登記申請は遺言執行者が単独で行ったり、相続人の内の一人から行う事が出来ます。

ちなみに、相続人がいない場合は、相続財産管理人選任の申立てを行い、相続財産法人名義に登記申請を行います。

※自称専門家が、「清算型遺贈では、登記の名義を被相続人から遺言執行者名義に変更する事ができる」と相談者に説明している事がありますが、これは全くのデタラメです。

名義を変更出来るのは、あくまで相続人(もしくは相続財産法人)だけです。

② 遺言執行者が売主(相続人)を代理して、不動産の売却を行う

遺言が作成されたと言う事は、高確率で遺言の中で遺言執行者が指定されていると思います。

その為、相続登記が完了しましたら、遺言執行者が売主(相続人)を代理して、不動産の売却を行います。

(遺言執行者は、遺言の内容を実現する為の権限があり、その権限を持って遺産を処分する事が出来ます。)

不動産の売却が完了したら、売却代金を遺言に従って分配します。

なお、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員で遺言を執行するか、家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てます。

4.不動産の譲渡所得税について

不動産を売却した場合、売主については譲渡所得税が課税される事があります。

それでは、清算型遺贈では誰に譲渡所得税が課税されると思いますか?

元登記名義人の法定相続人?

それとも、遺贈を受けた受遺者でしょうか?

実は、清算型遺贈では、元登記名義人である法定相続人に対して、譲渡所得税が課税されます。

清算型遺贈は、形式上、相続人に一旦不動産の所有権が移転し、相続人名義で買主に対し売却します。

その為、売却代金も形式上、一旦相続人が取得してから受遺者に対して交付される事になるため、相続人に対して譲渡所得税が課税される事になります。

実務上は、譲渡所得税が発生する場合、売却費として売買代金から控除し、遺言執行者が納税時期に譲渡所得税を納付する、と言う方法を行っている事があります。

清算型遺贈を行う場合、譲渡所得税の事はしっかりと頭の中に入れておく必要があるでしょう。

5.清算型遺贈の注意点

清算型遺贈では遺産の処分を行う為、

「遺産がどれくらいの金額で売れるのか?」

は、遺贈を受ける方(受遺者)にとってみれば、非常に関心が高い事だと思います。

しかし、遺言執行者の中には、とっとと遺産を売却したいが為に非常に安い値段で売却を行っている者がいると、まれに耳にします。

特に不動産は高額であり、合理的な理由がなく相場よりも低い金額で売却を行った場合、遺言執行者としての責任が追及される可能性があります。

場合によっては遺言執行者の解任事由(民法第1019条)に該当する可能性がありますので、遺言の執行は慎重に行う必要があります。

6.まとめ

今後は遺言を作成される方が増え、遺言執行者も増えていくと思います。

それと同時に遺言執行時におけるトラブルもきっと増えていくでしょう。

専門家を遺言執行者として指定する=遺言の原案作成を依頼する、と言うケースがほとんどだと思いますが、遺言執行者を指定する場合はしっかりと考えて指定するようにして下さい。

遺言執行者としての適性は様々あるのですが、少なくも民法等の法律の知識があり、誠実で丁寧な仕事を行う事を判断基準として、遺言執行者を指定するようにしましょう。

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