認知症対策の家族信託(民事信託)で問題点となる事

民事信託・家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

先日、とある書店に行ったのですが、法律関連の棚に家族信託(民事信託)に関する書籍が沢山販売されていました。

一昔前までは家族信託の書籍は数えるくらいしかなかったのですが、それだけ家族信託が世間に認知されてきた証拠と言えるでしょう。

一方、身近になったからこそ、きちんと検討すべき本質的な部分がないがしろになったり、将来発生する可能性があるリスクを踏まえていない、不完全な家族信託になった例も耳にしています。

そこで今回は、特に認知症対策として家族信託の利用をお考えの方に対して、その問題点となる事を解説していきたいと思います。

1.子供の方から家族信託を利用したいと考えている事

我々専門家のところにまず最初にご相談される方のほとんどが、「親の財産を管理したい」と思われている子供からです。

子供としては親が認知症になる事が心配で、でも成年後見はあまり良い噂は聞かないし・・・・と考えていて、家族信託の利用を検討しているのだと思います。

一見すると何ら問題が無いように見えますが、何が問題かと言いますと、それは「親が本当に家族信託を利用したいのかが分からない」と言う点です。

認知症の問題が現実になろうとしている時に、その対策を考えるのは子供の方が多いでしょう。

子供の方が当然若いですし、色々な事を調べる能力も上でしょう。

だから子供が主体となって家族信託の事を進めるのですが、そもそも家族信託は、原則として契約が必要です。

つまり、親の「家族信託をやろう!」と言う意思が必要になります。

家族信託を利用したいと言う親の意志が無く、子供が勝手に行うのであれば、それは家族信託ではありません。

子供が主体的に動く事自体は何ら問題はありませんが、親の意思もしっかりと確認するようにしましょう。

2.親が高齢で判断能力・意思能力が不十分な場合がある

認知症対策として家族信託を利用したい場合、親が高齢である確率が高いでしょう。

その為、判断能力や意思能力が不十分な場合、家族信託の利用が難しい事もあります。

また、認知症ではなくとも、高齢の為に話しの理解力が低下していれば、同様に家族信託の利用は難しいかもしれません。

上述したとおり、家族信託は基本的に契約で行います。

親が契約の内容を理解出来ないのであれば、家族信託の利用は出来ません。

3.受託者の財産管理に対する事

家族信託は信託の目的とした財産(信託財産)を受託者が管理していくのですが、家族信託の利用は基本的に専門家ではない、法律に詳しくない一般の方が行う事が想定されています。

受託者も一般の方が行う事になるのですが、その為、最初の段階で信託財産の管理方法等、家族信託のやり方を明確にしておかないと、時間の経過とともに受託者が行う財産管理が曖昧になっていくと言う問題点が出てきます。

信託銀行等が行う信託は明確なマニュアルが定められており、そのマニュアルによって信託財産の管理や処分等が行われます。

しかし、一般の方が行う家族信託では実際の財産管理方法について明確な指針やマニュアルが作成されるのは稀であり、その結果、家族信託を利用する本来の目的とは異なる財産管理が行われる可能性が出てきます。

その為、家族信託を有効に機能させる為にも、信託財産の管理方法についても、明確に決める必要があります。

4.既存の家族信託契約書を利用する際の問題点

その他、インターネット上や書籍等で紹介されている既存の家族信託契約書を利用する場合の問題点を挙げてみます。

① 信託の目的が曖昧である

信託の目的は家族信託によって達成しようとする目標、目的で、受託者の行動の根拠・指針となる大変に重要なものになります。

家族信託の契約書のひな型として良く紹介されている例を挙げてみましょう。

第○条 委託者は、別紙財産目録記載の不動産を受益者の為に管理し、または処分をする事を目的として受託者に信託し、受託者はこれを受託した。

シンプルですが、ぱっと見ると何ら問題がないように見えます。しかし、信託の目的は受託者の行動の根拠・指針となるものです。

つまり、「受益者の為に管理し、または処分をする事を目的とし」では、この家族信託が最終的にどのような目的で設定され、受託者がどのように財産を管理・処分を行っていけば良いのかが分かりません。

その為、信託の目的はもう少し具体的に定める必要があります。

【例】

第○条 本信託の信託目的は下記のとおりとする。
委託者の主な財産を受託者が管理・処分等を行うことにより、委託者の財産管理の負担を軽減させ、委託者が、従前と変わらない生活を続けることにより、安心・安全・快適な生活を送れるようにすること。

② 家族信託が終了した場合に、信託財産をどうするのか?

例えば「委託者(親)が死亡した場合、信託が終了する」と契約の中で定める事があるのですが、その場合、信託されていた財産は相続財産とはなりませんので、信託が終了した場合、信託財産を誰のものとするかを定める事が一般的です。

しかし、現時点で誰の物とするか決める事が出来ないので、

「残余財産は受益者の相続人の協議によって、その帰属を決める」

等と言った趣旨の文言が盛り込まれた家族信託契約書を拝見する事がありますが、これには注意が必要です。

なぜなら、相続財産であれば、相続人の協議が整わなければ最終的に遺産分割調停や審判と言った法的手続きで強制的に解決する事が出来ます。

しかし、信託財産は相続財産ではありませんので、もし相続人間で協議が整わなければ、その解決方法は現状ではありません。

つまり、もうどうする事も出来なくなってしまうのです。

その為、家族信託が終了した場合、信託財産を誰の物にするのかは明確にしておいた方が良いでしょう。

5.まとめ

家族信託は「究極の財産管理のツール」と言われており、想像力と創造力を働かせる事により、その可能性は無限大になると言われています。

しかし、まだまだ新しい制度であり、思わぬ落とし穴、リスクも沢山ある事も事実です。

その為、家族信託を利用される場合は、専門家の協力を仰ぐようにする事をお勧めします。

【本サイトでは、相続手続きや家族信託について網羅的に解説しています。今後のご参考にもなる情報でもありますので、よろしければブックマーク等を行い、後からでも閲覧できるようにする事をお勧めします。】

 

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この記事を書いた専門家

横浜市泉区の司法書士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から、自分らしい人生を送る為の認知症対策、相続対策をご提案します。元俳優/福岡県北九州市出身/梅ヶ枝餅、かしわめし弁当が大好き/趣味は講談/

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横浜相続困りごと相談室(司法書士甲斐智也事務所)
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