(このブログの内容は動画でもご視聴できます。)

こんにちは。司法書士の甲斐です。
最近電車に乗っていると、「お年寄りの方が多いな」と言う印象があるのですが、実際の数字上でもこの感覚は間違ってはいなかったようです。
実はこんなニュースがありました。
高齢者人口の割合が過去最高になった、と言うニュースです。
90歳以上、初の200万人超え 高齢者割合も過去最高
65歳以上の高齢者人口(15日現在)は推計で3514万人となり、総人口に占める割合が27・7%にのぼった。前年より57万人(0・5ポイント)増え、いずれも過去最高。90歳以上は初めて200万人を超え、206万人となった。18日の「敬老の日」に合わせ、総務省が公表した。
朝日新聞デジタルより http://www.asahi.com/articles/ASK9J4W7ZK9JUTFK001.html
これに伴い、働く高齢者も年々増えているようです。
労働力調査によりますと、昨年の就業者は過去最高の770万人にのぼっています。
65~69歳では男性の53・0%、女性の33・3%が就業していました。
また、世界の多くの研究者が医療技術の進歩から、2045年に人間の平均寿命は100歳に到達しているかもしれないと予測しています。
つまり、かつては「人生80年」と呼ばれていたものが、さらに20年間伸びて、その結果人生設計そのものを見直す必要がある状況になってきているのです。

もちろん、これはあくまで予測値とか統計上のお話しで、各個人の寿命は人それぞれでハッキリとは分かりません。しかし、だからと言って人生プランを軽視しても良いと言う訳ではないのです。
特に寿命が延びる事によって問題になってくるのは、認知症対策と相続対策です。
本ブログ内で様々な相続対策や認知症対策をご紹介してきましたが、今一度、認知症対策と相続対策の必要性と具体的内容をお話ししていきたいと思います。
1.認知症対策
① なぜ認知症対策が必要なのか?
簡単に言いますと、認知症になった場合に問題になる事は、意思能力・財産管理の問題です。
何も問題がない時は、
・子供がマイホームを購入する時に資金の援助をする。
・建物の賃貸借契約を結んだり、不動産を売却する。
「自分の老後の事は息子達に任せた」と思っていても、何も対策を行っていなければ、ご自身が認知症になってしまった場合、残された家族はどうする事も出来ません。
「父は預金を管理してほしいと言っていた」「自宅を売却したいと言っていた」と、どんなに周りに説明しても、何も出来なくなってしまうのです。
このようなケースでは、家庭裁判所に後見の申し立てを行い、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わり預金やその他の財産の管理を行う事になります。
しかし、この成年後見制度(法定後見)はご本人の財産の管理・処分について柔軟性がなく、元々ご本人が希望していた事が出来なくなる可能性も出てくるのです。
意思能力が無くなった人(成年被後見人)の事を「制限行為能力者」と言いますが、これは文字通り人生の重要な事柄について「制限」される人になるのです。

厳しい言い方になりますが、この瞬間、あなたの人生プランは失敗したと言えるでしょう。
② 具体的な認知症対策
【任意後見】
任意後見とは、
・本人がまだ元気で意思能力、判断能力がある内に、
・将来自己の判断能力が不十分になった時に備え、
・後見人となる人(任意後見人と言います。)とその後見の内容を、
・ご本人と任意後見人予定者との契約で決めておく制度です。
(契約書は公正証書で作成する必要があります。)
任意後見の内容は、通常の成年後見制度と同様に、財産管理に関する事(不動産の処分、賃貸借契約の締結、預金の管理等)と身上監護(生活又は療養看護)に関する事に分けられますが、その具体的な内容をご本人と任意後見人予定者とで決める事ができます。
なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督する事になります。
任意後見に関して詳しい内容は下記のページをご覧下さい。

【家族信託(民事信託)】
家族信託はご自身の大切な財産を、ご自身が信頼のおけるご家族等に託し、ご自身や第三者の為に財産管理を行ってもらう制度です。
託された財産の名義は形式上、託された人物の名義になります。
そして財産を託された者は、その財産の管理や処分等を行い、その財産から発生する様々な利益を特定の人に渡す事が信託の基本です。
任意後見制度とは異なり、ご自身が意思能力、判断能力があるうちから利用できる制度であり、任意後見よりも幅広い財産管理を行う事ができます。
また、身上監護については家族信託は範囲外となりますのでご注意下さい。
家族信託に関して詳しい内容は下記のページをご覧下さい。

2.相続対策
① なぜ相続対策が必要なのか?
相続対策が必要な理由は、相続人が相続でもめる事を未然に防ぐ為です。


いや、ウチは家族みんな仲が良いから、相続でもめる事はないわよ。
と思われる方が中にはいらっしゃるかも知れませんが、相続は何も遺産を巡って相続人間でもめるだけではありません。
相続でもめなくても、「困る」事が沢山あるのです。
例えば、
・自宅を誰も相続したがらず、また相続人が忙しくて遺産分割協議を放置していた結果、相続人の一人が亡くなったり、認知症になったりして、自宅の処分が困難になってしまった。
・相続人の中にいわゆるニートがおり、他の相続人との関係性が悪く、いつまでたっても遺産分割協議が行われる気配がない。
等々、例え遺産の取り合いで相続人がもめなくとも、相続では困る事は沢山あるのです。
だからこそ、相続対策はしっかりと行う必要があります。


一番多いのが何らかの理由で相続人の一人が相続手続きについて非協力的な態度を取って、いつまでたっても手続きが進まないケースです。
両親やその他の家族に対する憎悪とか、上記で挙げたニートとか、そもそもの性格の問題とか、例を挙げればキリがないのですが、このような理由で相続手続きがストップしている事例が沢山あります。
② 具体的な相続対策
【相続税対策】
相続税対策とは法律上の特例等を利用して、納税する相続税の額を低く抑えたり、場合によっては0円にする事です。
相続税対策には様々な手法があるのですが、その対策の方法を間違えますとかえって損をする可能性がありますので、税理士にしっかりと相談して進める必要があります。
【遺言】
自筆証書遺言や公正証書遺言を作成し、財産の分け方を決める事で、相続人がもめないようにする事ができるのが遺言です。
ただし、最低相続分である遺留分を排除する事ができない事(相続人が被相続人の兄弟姉妹は除きます)、遺言がある事でかえってもめる事がある点に注意が必要です。
具体的に遺言を残した方が良いケースは下記のとおりです。
(不動産は分けづらい遺産の代表格です。公平に相続しづらくなります。)
・子供がいない夫婦の場合
(子供も両親もいなければ、相続人は夫婦の兄弟姉妹になります。残された配偶者と被相続人の兄弟姉妹がきちんとコミュニケーションを取る事ができなければもめる原因となります)
・相続人ではない人に財産をあげたい場合
・相続人の仲が元々悪い場合
・相続人がいない場合
【生前贈与】
生前にご自身の財産を贈与する事で、相続対策にもなりますし、相続税対策にもなります。
注意点は非課税枠を超える贈与を行うと贈与税が発生すると言う点です。
贈与税の事をきちんと考え、計算して生前贈与を行う必要があります。
3.まとめ
認知症対策と相続対策は現在も重要なのですが、平均寿命が延びて高齢者割合の人口が増加する事を考えると、まずますその重要性が増してきます。
後から「こんな事になるなんて・・・」と後悔しないように、しっかりと認知症対策、相続対策を行いましょう。


とは言え、「ウチの場合は具体的にどんな事をやれば良いのか?」と思われる方も多いでしょう。
その場合はあなたのご希望をお伺いして、抽象度が高い内容をより具体的な相続対策・認知症対策としてご提案させて頂きます。
お気軽にお問い合わせ下さい。