親が認知症になる前に絶対に行うべき認知症対策の基本とは?

相続対策・認知症対策

こんにちは。

現在、65歳以上の方の約7人に1人が認知症患者と推計されています。

つまり、「誰にでも起こり得る、身近な病気」であり、実際に当事務所にも認知症に関連したご相談を承ることがあります。

認知症と一口に言っても、やらなくてはいけない事、考えなくてはいけない事は沢山あるのですが、今回は、

「ご自身の親が認知症になる前に、絶対に考えるべき、行うべき事」をお話したいと思います。

大きく分けて、「今後の住む場所」と「財産管理」についてです。

1.住む場所について -自宅-

まずは考えなくてはいけないのは、住む場所の事です。

現在親が実家に暮らしている場合、その他の家族が同居しているのであれば、当面の心配はないでしょう。

しかし、親が独り暮らしをしている場合、認知症の症状が進行するにつれて、独り暮らしをするのが難しくなるかもしれません。

その場合にどうするのか?今のうちに考えておきましょう。

具体的には、

・家族の誰かが面倒を看るために親を引き取る。
・高齢者施設への入所を検討する(下記参照)。

等が考えられます。

また、その際に空き家になった自宅をどうするのか?と言う点もしっかりと考えておきましょう。

建物を空き家にしていると傷みが激しくなり、近隣住民に迷惑をかけるかもしれません。

さらに、毎年の固定資産税の負担もあります。

その為、売却等を行い施設への費用に充てると言った事も検討すべきです。

「思い出が沢山ある我が家」だと思いますが、どんな状況になっても、いずれはお別れをしなくてはいけないのです。

その時に備え、事前に準備しておきましょう。

2.住む場所について 高齢者施設(介護が必要ない場合)

介護が必要な状態ではないけれど、親を独り暮らしさせるのは心細い。

でも、家族が自分達の家に親を呼ぶのは、なかなか難しい。

そのような場合に入居ができる高齢者施設があります。

以下に代表的なものを挙げてみます。

① 有料老人ホーム(健康型)

有料老人ホーム(健康型)とは、家事手伝いなどのサポートを受けられ、日常生活を楽しむための設備が充実している施設です。

有料老人ホームはそのサービスの違いにより、健康型、介護型、住宅型の3種類に分類されます。

健康型有料老人ホームは食事の提供や生活支援サービス(部屋の掃除、洗濯、安否確認等)があり、「独り暮らしの心細さ」をカバーする事ができます。

【費用】
初期費用が0~数百万円(数千万円と言うのあります)、月額費用はおよそ10~40万円で、費用負担は高額ですが、レクレーションが充実しているのが特長です。
介護サービスが付いていないので、介護が必要になった場合は退去しなくてはいけません。
また、健康型有料老人ホームの数は非常に少ないのも注意点の一つです。

② 軽費老人ホーム

軽費老人ホームとは、老人福祉法第20条の6に規定された、

「無料又は低額な料金で、老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設」です。

一見して低所得者向けの施設のように思えますが、様々な生活課題を抱えている方の入居が増えています。

【費用】
有料老人ホーム等と比べると、費用は低額です。
利用対象者が各都道府県の条例によって決められていますので、その要件に一致する必要があります。

③ サービス付き高齢者向け住宅

バリアフリー化され、入居者の状況把握と生活相談サービス等の提供が必須となっている、高齢者向けの賃貸住宅です。

サービス付き高齢者住宅では、日中の見守りサービスと生活相談サービス(食事や健康に関する事等)は必ず提供され、ほとんどの住宅で食事サービスのオプションが付いています。

また、生活支援サービス(部屋の清掃、洗濯等)、夜間緊急通報サービス(救急車の手配等)が付いている場合もあります。

【費用】
初期費用として0円~数十万円(敷金含む)、月額費用で10~30万円が必要になってきます。

利用対象者の条件があります。
・60歳以上の高齢者、あるいは要介護者認定を受けた60歳未満の方。

同居できる者は、
・配偶者(事実婚含む)
・60歳以上の親族、要支援・要介護認定を受けている親族
・特別な理由により同居させる必要があると知事が認める者

なお、サービス付き高齢者向け住宅は施設ではなく、「住宅」であり、賃貸借契約を締結する必要があります。

さらに、入居にあたっては連帯保証人・身元引受人を必要とするところがほとんどです。

3.高齢者施設(介護が必要な場合)

① 有料老人ホーム(介護型・住宅型)

介護型有料老人ホームは、介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。

住宅型有料老人ホームは、生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。

【費用】
施設により異なりますが、初期費用が0~数百万円(数千万円と言うのあります)、月額費用はおよそ10~40万円程です。
入居一時金を支払わない場合、月々の利用料が高額になるのが一般的です。

② 特別養護老人ホーム

身体上又は精神上著しい障害がある為に常に介護を必要とし、かつ自宅においてこの介護を受けることが困難な方等を入所させ養護することを目的とする施設です。

入所期間に制限はなく、高度な医療が必要にならない限り、最期まで住み続ける事ができます。

【費用】
特別養護老人ホームでは負担は入居後の月額費用のみであり、入居一時金などの初期費用は必要ありません。月額費用は10万円~30万円程です。

待機者が多く、申し込んでも直ぐに入所する事が難しいです。

また、介護の必要性がより高い中重度の要介護者を支える機能を重視する観点から、平成27年4月より新規に入所する方を、原則として要介護3~5の方に限られるようになりました。

③ 認知高齢者グループホーム

介護保険法によって規定された施設で、食事・入浴等の介護や、その他の日常生活上の世話や機能訓練を行う共同生活の住居です。

入所期間は特に決まりはありませんが、共同生活ができなくなった段階で、退去せざるを得なくなります

【費用】
施設によって異なりますが、初期費用で0~数百万円、月額費用でおよそ15~30万円程度かかります。
要支援2以上の認知症の方が対象です。

なお、共同生活を行いますので、寝たきりや周囲の人に危害を及ぼす方、医療面のケアが必要な方は入居ができません。

4.預貯金等、親が認知症になると具体的に困る財産管理の事とは?

親が認知症になると困る事、それは親自身の財産を動かす事ができなくなるという事です。

例えば、銀行の窓口でお金をおろす時に、本人確認や意思確認が出来なければ、お金をおろす事ができないでしょう。

キャッシュカードを預かったとしても、暗証番号が分からなければ同じ事です。
(そもそも、他人のキャッシュカードで勝手にお金を引き出す事自体がダメですが・・・。)

子供が親の生活費を立替えると言った方法も考えられますが、どこかの施設へ入所する必要が発生した場合、まとまったお金が必要になってきます。

子供が立替えるとしても限界があるでしょう。

では、施設への入所費用として自宅を売却すればどうか?と言うアイディアが浮かぶかもしれませんが、これも難しいです。

自宅を売却すると言う事は、売主として買主と売買契約を締結する必要があります。

売買契約の内容が理解できないくらい、意思能力や判断能力が低下している場合、売買契約を締結する事もできないでしょう。

また、自宅以外にアパート等、親が投資用物件を持っている場合、その管理や必要な契約もできなくなってしまいます。

つまり、八方塞になってしまうのです。

では、どうすれば良いのか?

次の項目で、財産管理の面においての対処方法をご紹介します。

5.財産管理の面において、認知症に備える方法

① 成年後見(法定後見)

新聞等のメディアで良く取り上げられていますので、ご存知の方も多いと思います。

成年後見は、精神上の理由等により、意思能力・判断能力が無くなった方の代わりに、裁判所が選任した成年後見人が、本人に代わって身上監護や財産管理を行う制度です。

(※身上監護・・・施設との入所契約や介護保険の申請等、本人の人の生活・治療・療養・介護などに関する事です。)

成年後見であれば、上記に挙げた問題の一部は解決する事ができるのですが、良い事ばかりではありません。

まず、成年後見人は誰が選ばれるかは分かりません。

親族がなりたいと言っても、専門職(弁護士や司法書士)が選ばれる可能性があります。

その場合、報酬が発生します(月3~5万円程)。

なお、本人の自宅の売却については家庭裁判所の許可が必要になり、売却する事についてきちんとした理由がない限り、許可は出ません。
(単純に「空き家の管理が面倒だから売ってしまおう!」では許可は降りないでしょう。)

なぜかと言いますと、成年後見の財産管理の方針は、基本的には「現状維持」であり、自由な処分が事実上難しいからです。

さらに、売却ができたとしても、専門職後見人への報酬が別途発生します(数百万円)。

また、成年後見制度は基本的には本人が亡くなるまで続きます。

「成年後見人の弁護士の態度が気に食わない」等の理由では、成年後見人は解任する事はできませんので注意が必要です。

② 任意後見

成年後見とは異なり、自身の意思能力や判断能力が不十分になった時に備え、事前に後見人(任意後見人)を決めておく制度です。

実際に本人の意思能力や判断能力が不十分になった時に、任意後見がスタートします。

成年後見とは異なり、事前に任意後見人を決めておく事ができる事が最大のメリットですが、こちらも良い事ばかりではありません。

任意後見をスタートするには、家庭裁判所に対して、任意後見人の仕事をチェックする「任意後見監督人」を選任してもらう必要があり、監督人には専門職(弁護士・司法書士)がつく事がほとんどです。

その場合、専門職への報酬が発生します(月1~3万程)

なお、自宅の売却等は事前に決めていれば監督人の許可は必要ないのですが、実務上は大きな財産の処分等は、監督人と相談して行う事がほとんどです。

このように、成年後見よりも財産の処分等は比較的自由なのですが、それでも限界があります。

任意後見の詳しい説明はこちらをご覧下さい。

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今回は任意後見制度のお話しです。【事例】Q:私は今年、70歳になります。意思能力はちゃんとしており、特に病気も無く健康なのですが、将来の事を考えますと、どうしても不安になります。今のうちに成年後見の制度を利用する事はできないでしょう...

③ 家族信託(民事信託)

自分の財産を信頼できる家族に託して、託された家族は事前の決め事に従って、託された財産を管理したり、処分をする事ができる制度です。

分かりやすく言えば、成年(任意)後見の仕事のうち、「財産管理」のみを取り出したイメージだと思って下さい。

事前に決めておけば、本人が意思能力・判断能力が不十分になったとしても、託された家族が適切に財産の管理・処分を行います。

成年後見、任意後見と比較して、より自由な財産管理が可能になります。
(それでも何でも出来るわけがなく、限界がある事は当然ですが。)

家族信託の詳しい説明はこちらをご覧下さい。

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6.まとめ 

以上、親が認知症になった時に絶対にやるべき事、考えるべき事を簡単にまとめました。

ここで重要になってくるのは、「親の意思能力・判断能力の状況によっては、任意後見も家族信託も不可能になる」、と言う事です。

任意後見は本人と任意後見候補者と、家族信託は本人と財産を託される人との契約が必要になります。

つまり、契約を締結する事ができるぐらいの意思能力・判断能力が本人に無ければ、取りうる手段は成年後見(法定後見)のみと言う結論になります。

その為、後になって親の住居の事、財産管理の事で困る事がないよう、早急に動く事が必要になります。

当事務所で認知症に関してご相談される方の大多数が、

「親が認知症の症状が出始めて・・・」

と言う方なのですが、出来る事であれば、もう少し早くご相談されますと時間的な余裕が生まれ、じっくりと考える事ができ、取りうる手段が増え、より良い解決策が生まれてくるのです。

その為、認知症対策に関する事は、お早めのご相談をお勧めします。

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