
こんにちは。司法書士の甲斐です。
当サイトもそうですが、相続の知識について書かれたホームページはインターネット上に星の数程あります。
弁護士、司法書士、行政書士、税理士と言った士業、不動産会社や銀行、はては相続コンサルや相続コーディネーターを名乗る者まで、まさに様々な専門家(と称する者も含む)が、日々インターネット上で情報発信を行っています。
これらの専門家が書いたホームページやブログがインターネット上には沢山ありますので、相続の事について悩みを抱えた方にとってみれば、ご自分の悩みを解決する為の知識を簡単に手に入れる事が出来ます。
このように、インターネット上に公開されている相続の情報は、一般の方にとってみれば非常に便利なのですが、使い方には注意が必要な事をご存知でしょうか?
それは「インターネット上で公開されている相続の情報は、常に正しいとは限らない」と言う点です。
1.インターネット上の情報が常に正しいとは限らない理由
ホームページやブログは比較的簡単に始める事ができ、情報の発信も簡単に行う事が出来ます。
その為、相続の事が書かれた沢山のホームページやブログが存在するのですが、その記事を書いた全員が相続の実務を経験しているとは限らないのです。
中にはGoogle等の検索エンジンで自分のホームページやブログを上位表示させるSEO効果だけを狙い、実務経験が無い人間が書いた記事も山ほどあります。
つまり、情報の正確さが非常に怪しいページも星の数程あるのが現状です。
インターネットで入手した情報を信じ、その情報を使用する事はあくまで自己責任です。
間違った記事が書かれていて、その事であなたが損害を被ったとしても、誰も責任を取ってくれません。
それが、インターネットの世界なのです。
2.専門家はインターネット上の知識を鵜呑みにしない
ところで、相続の専門家であっても分からない事は山ほどあります。
そのような分からない事を調べるのにインターネットは非常に便利であり実際に利用しているのですが、相続の専門家は一般の方とはインターネットの使い方が根本的に異なります。
相続の専門家は、専門家となるまで沢山の時間を費やし勉強を行っています。
つまり、一般の方と比べはるかに知識の積み上げがあり、そして「考える力」があるのです。
分からない事についてインターネットで調べ、ある答えにたどり着いたとします。
しかし専門家はそれを「答え」と思いません。あくまで、「仮説」と位置付けるのです。
そして相続の専門家は、この「仮説」が正しいかどうかを判断する為の「考える力」があります。
だから、本当か嘘か分からないインターネット上の知識に振り回される事がありません。
この「考える力」こそ、一般の方と専門家を分けるの決定的な違いなのです。
3.法律上の手続きは、常に正確さが求められる
一般の手続きは「多分これで大丈夫だろう」と言うレベルの出来具合でも、何とかなる事があります。
しかし、法律上の手続は「多分大丈夫」と言うレベルが通用しません。
「多分大丈夫」と思い手続をしたところ失敗し、二度とその手続を行う事が出来なくなるケースも存在し、回復不可能な損害を被る事だってあるのです。
例えば相続放棄です。相続放棄は失敗してしまえば(家庭裁判所から却下されてしまえば)、やり直しをする事がほぼ出来ません。非常にシビアな手続なのです。
失敗が絶対に出来ない法律手続を行う場合、その手続きはしっかりとした根拠を持って「大丈夫」である事が求められます。
その根拠とは、相続の分野であれば条文であったり、判例です。
相続の専門家はこの条文と判例に関して多くの時間をかけて、勉強をします。
だからこそインターネット上の本当か嘘か分からない情報を読み解き、その情報が正しいのかを根拠を持って判断する事が出来るのです。
その結果、根拠を持って間違いがない法律手続を行う事が出来ますし、万が一失敗をしたとしても、致命的な損害を回避する事が出来るのです。
4.まとめ -メディア・リテラシーの重要性-
インターネットを含む様々なメディアの情報の正しさを見抜き、活用する力を「メディア・リテラシー」と呼びます。
日本はまだまだメディア・リテラシーの重要性が浸透しておらず、私の事務所にも「インターネットではこう書かれていた」とおっしゃる相談者の方が多くいらっしゃいます。
「その情報は間違いです。なぜならこうだからです」と根拠を伝える事で納得して頂けるのであれば良いのですが「だってネットでこう書いていた。先生がおかしいんじゃないの?」と思われる方も少なくありません。
それだけインターネットの影響が大きいと言えるのですが、常に「この情報は本当に正しいのか?」と考える事こそ、法律上の手続きを失敗しない為の重要なポイントといえます。