お世話になった息子の嫁に相続させる方法

相続対策・認知症対策

【事例】
Q:私の一人息子は数年前に事故で亡くなりました。

息子が亡くなった時に既に私は高齢だったのですが、そんな私の面倒を看てくれたのは息子のお嫁さんでした。

私には息子以外には子供がいない為、もし私が亡くなった場合の財産を息子のお嫁さんに渡したいのですが、何か行った方が良いのでしょうか?

A:息子の嫁はあなたの相続人ではありません。その為、もし息子の嫁に財産を残したい場合は、絶対に何らかの対策を行う必要があります。

1.息子の嫁は相続人になれない

まずは大前提を確認しておきましょう。相続人は誰か?と言う問題です。

相続人になれる者は順位が決まっており、まずは被相続人の子供、子供がいない場合は被相続人の親や祖父母、子供や親もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

つまり、被相続人の息子(子供)の配偶者は相続人ではありませんので、このままでは被相続人の財産を引き継ぐ事が出来ません。

その為、事例のようにお世話になった息子の嫁に財産を残したい場合、絶対に何らかの対策が必要になります。

2.息子の嫁に財産を残す方法

① 生前贈与

生前に息子の嫁に財産を贈与する方法です。財産を確実に渡す事が出来ますが、贈与税の非課税枠を超えた贈与を行った場合、贈与税の納税義務が発生します。

贈与税は相続税よりも税率が高く、さらに非課税枠の金額も相続税よりも低い為、「どうしてもすぐに財産をあげたい」と言う特別な事情がない限り、生前贈与は行わない方が無難でしょう。

ちなみに、非課税枠(年間110万円)の範囲内で毎年贈与を行うと言う方法もありますが、ある程度の財産を渡す為には毎年贈与を行う手間がかかかります。

② 遺言を作成する

特定の財産を息子の嫁に贈与する遺言を作成する方法です。

遺言は相続人はもとより、相続人以外の赤の他人や知人にも財産を渡す事が可能ですので、当然息子の嫁にも財産を渡す事は可能です。

仮に他の相続人が存在してその最低相続分である遺留分を侵害している場合で、その相続人から遺留分を請求された場合はその請求に応じなければいけませんが、そもそも遺産分割協議を行う必要がないと言うメリットがあります。

なお、遺言は主に自分で作成する自筆証書遺言と公証人に作成してもらう公正証書遺言の二つがありますが、他に相続人がいる場合、後々のトラブルを防止する為に公正証書遺言を作成した方が良いでしょう。

③ 養子縁組を行う

息子の嫁と養子縁組を行う事で、法律上の親子関係になり、息子の嫁はあなたの相続人となる事ができます。

その為、養子縁組を行う事により、息子の嫁に財産を相続させる事が出来ます。

また、息子の嫁と養子縁組を行う事は、相続税の非課税枠を増やす事になり、相続税上も有効な対策になります。

ただし、息子の嫁以外にも相続人がいた場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がある為、元々相続人間で交流が無い場合は話がまとまらない可能性が出てくるのがデメリットです。

さらに、養子縁組は単独で行う事はできず、息子の嫁にも養子縁組をする意思表示が必要である事にも注意が必要です。

どんなにあなたが息子の嫁と養子縁組を行いたくても、息子の嫁側にその気持ちがなければこの方法を行う事は出来ません。

3.万が一何も対策を行わなかった場合、相続する方法はあるのか?

万が一上記の生前贈与、遺言、養子縁組を行わなかった場合、息子の嫁に財産を渡す手段はないのでしょうか?

考えられるのは寄与分を主張する方法が考えられますが、上述したとおり、息子の嫁はそもそも相続人ではない為、寄与分を主張する事は出来ません。

また、他に相続人がいない事が前提ですが、相続財産管理人の選任の申立てを行い、特別縁故者としての財産の分与を申し立てる方法があります。

しかし財産を分与するかしないかはあくまで申立てにより家庭裁判所が決める事であり、確実性がありません。

その為、確実に息子の嫁に財産を残したいのであれば、面倒くさがらず、必ず生前贈与、遺言、養子縁組等の対策を行う必要があります。

4.まとめ

法律上の手続きは非常にシビアであり、財産を残す側が認知症で意思能力・判断能力が低下した場合、「息子の嫁に財産を残したい」とどんなに強く願っても、その実現は不可能になります。

なお、相続法が改正され、相続人ではない一定の親族にも「特別の寄与料」が認められるようになりました。

しかし、特別の寄与料はあくまで該当の親族が相続人に対して請求するものであり、相続でもめる可能性があります。

だからこそ、相続人ではない息子の嫁に財産を残したい場合は、絶対に何らかの対策を行う必要があります。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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