墓地の名義変更をしたい場合

こんにちは。横浜市泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、墓地の名義変更についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
 Q:現在、数ヶ月前に亡くなった父の相続手続きをしているのですが、父名義になっている墓地を発見しました。

その為、兄がその名義変更の手続きを行う為に司法書士に依頼したのですが、司法書士から、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書および遺産分割協議書に署名し、実印を押印するように言われました。

墓地は確か遺産にはならないはず、と不審に思い、駅前の無料法律相談会で弁護士の方に確認したところ、やはり墓地は相続の対象にはならないので、遺産分割協議書に押印等必要ないと言われましたので、司法書士から送られてきた書類はそのまま無視しようと思っています。

A:例え墓地でも、場合によっては相続の対象となり、遺産分割協議が必要になる事があります。

 

1.墓地は相続財産に該当するのか?

通常墓地はお寺や霊園等で管理されているのですが、田舎の方では個人で管理されている墓地も存在します。

この墓地が相続財産になるのか、と言う点に関しましては、民法に明確にその答えが出ています。

(相続の一般的効力)

第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

(祭祀に関する権利の承継)
第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

つまり、墓地等の祭祀に関する権利は、

⑴ 遺言による指定、または被相続人の生前の指定(口頭でも可能です)。
⑵ 被相続人の遺言等による指定がない場合は、その地方の慣習に従って決める。
⑶ その地方の慣習も明らかでなく、承継者が決まらないときは家庭裁判所による調停か審判で決定。

この順番で決まる事になります。その為、最初に確認するべきは遺言の有無の確認です。

遺言に「お墓は○○が相続する」とあれば、その内容に従う事になりますし、遺言書がない場合でも、生前に口頭で指定していれば、その指示に従う事になります。

遺言書がなく、生前に口頭で指定していない場合は、その地方に伝わる慣習に従います。慣習も曖昧だという場合は、親族で話し合って、後々トラブルにならないようにしっかりと決める必要があります。

話し合いでもまとまらない、さらにはもめてしまった場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用する事で祭祀の承継者を決める事になります。

このように墓地等の祭祀の権利を取得する者を決めるのですが、民法の条文のとおり、墓地は相続財産とはなりません。

 

2.墓地を『相続』を理由とする名義変更を行う事例

しかし、例外的に墓地が相続財産となり、遺産分割協議で相続する者を決めなくてはいけない場合があります。その一つの例が、「自分の土地を墓地として、他人に使用させている場合」です。

 

つまり、単に自分の土地を他人に貸して、そこに他人のお墓がある場合、祭祀に関する権利には該当しません。この場合は、原則どおりその墓地は相続財産となり、遺産分割協議を行う必要があるのです。

事例の墓地は、もしかするとこのケースである可能性もあります。その為、司法書士が遺産分割協議書が必要と言っているのかも知れません。

なお、実際の登記実務も、登記上の地目が「墓地」であっても遺産分割協議書を添付し、相続を原因とする所有権移転登記申請を行っても受理されます。

 

3.墓地が相続財産とならない場合の登記申請の方法

 

墓地が原則どおり相続財産とならず、慣習等で墓地を承継する者がいる場合、その承継者へ名義変更を行います。相続とは異なり、相続人全員を登記義務者、承継者を権利者として共同申請を行います。原因日付は、

「平成○○年○月○日民法第897条による承継」とします(日付は被承継人が亡くなった日です)。

※「平成○○年○月○日祭祀物承継」と言う原因日付もあるようですが、専門誌(登記研究156号)でこの登記原因は使用すべきではないとされているようです。

 

4.まとめ

このように、墓地であったとしても実際に祭祀に関する権利か否かによって、その後に必要な書類や手続きが変わってきますので、実際にどのような使われ方をされているのかを、きちんと確認するようにしましょう。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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