
こんにちは。司法書士の甲斐です。
2019年、老後資金2000万円問題が非常に話題になりました。
2000万円問題に関しては
「そもそも、本当に2000万円が必要なのか?人それぞれなのではないのか?」
「年金があれば一生安泰なのではないのか?」
等々、様々な論点がありますが、基本的には『老後の資金をどうするのか?』
と言う視点に立つお話です。
潤沢な金融資産があれば良いのですがそうではない場合、どれくらいの老後資金が必要なのかを計算する事は重要であり、そこで老後の資金が足りない!と分かった場合、どのような対策を行うのかも重要になってきます。
老後の資金対策は様々な種類があるのですが、今回は自宅を利用したリースバックとリバースモーゲジのお話しをしたいと思います。
1.リースバックとは?
リースバックとは、
⑵ 元の所有者が新所有者に家賃を支払い、そのまま売却した自宅に住み続ける。
という不動産取引です。
元々は住宅ローンの支払いが難しくなった自宅所有者が、任意売却(住宅ローンが残ったまま自宅を売却)をした後も自宅に住み続ける為のスキームなのですが、老後の資金対策でも活用する事が可能です。
メリット
【引越しを行わずそのまま自宅に住み続ける事が出来る。】
自宅の売却と同時に新所有者と賃貸借契約を締結しますので、引越しを行う必要がなく、そのまま住み続ける事が出来ます。
【売却によって、まとまった現金を取得する事が出来る】
売却代金は一括で支払われますので、老後の為のまとまった資金を取得する事が出来ます。
デメリット
【一定の賃料を支払う必要がある。】
所有者が変りますので、一定の賃料を支払う必要があります。
【一生涯自宅に住み続ける事が確約されているわけではない】
借主としての権利は保護されますが、あくまで賃貸借契約ですので、一生涯自宅に住み続ける事が保証されているわけではありません。
その他、新所有者にとって利益が無い限り(自宅購入額に対してそれを上回る賃料が入ったり等)、リースバックが成立する事が難しいと言った問題もあります。
例えば、通常よりも売却額が低くなったり、通常よりも賃料が高くなる可能性も出てきます。
2.リバーズモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、
⑵ 事前に決まった金額を一括または年金の形として金融機関等から定期的に受け取り、
⑶ 自宅所有者が亡くなった時に、担保にした不動産を売却し残債務を返済する(毎月の元本の返済は必要ない)。
また、金融機関によっては、毎月金利のみ返済を行う必要があったり、対象者に年齢制限があったり等のルールがあります。
なお、リバースモーゲージと住宅ローンの違いとして、住宅ローンは最初に一括でお金を借りて、毎月一定額の金額を返済しますが、リバースモーゲージは毎月一定のお金を借りて、死後にまとめて返済を行うと言う違いがあります。
メリット
【自宅を売却することなく融資を受ける事が出来る】
リースバックとは異なり、自宅を売却する事なく生活資金を手に入れる事が出来ます。
また、月々の返済も金利のみで月々の支出を抑える事が出来ます。
【利用時の収入要件等が通常の融資より緩やか】
いわゆるシニア世代を対象としたサービスのため、住宅ローンとは異なり高年齢でも比較的借りやすくなっています。
デメリット
【利用者が長生きする可能性がある。】
そのため、事前に決まった最大融資金額までお金を使ってしまう可能性があります。
【不動産価値が下落する可能性がある】
不動産の価格、特に土地に関しては価格が下落する事があります。
土地の価値が下落してしまうと、最大融資金額の見直しがされる事があり、既に最大融資金額以上のお金を借りていた場合、差額を返済する必要性が出てきます。
【金利が上昇する可能性がある】
リバースモーゲージの金利について、金融機関が変動金利を採用している場合、時勢に応じて金利が変動します。
金利が大幅に上昇してしまうと、毎月の金利支払額が増加する事があります。
【推定相続人の同意が必要な場合がある】
金融機関によって、子供等の推定相続人全員の同意が必要になる事があり、一人でも拒否する場合などは利用できないことがあります。
将来の相続も見据えて、推定相続人に丁寧に説明する必要があります。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか?
リースバックもリバーズモーゲージも自宅を活用する老後資金対策ですが、その内容は全く異なります。
その為、ご自身が置かれた環境を丁寧に分析しどちらの活用がより効果的なのか?あるいは全く他の方法が良いの?等の複数の視点からの検討が必要になってくるでしょう。