遺産分割協議書を公正証書で作成した方が良い場合

遺産分割協議・調停

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、遺産分割協議書の作成方法についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。
(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
 Q:私の父が亡くなった件で、昨日相続人全員が集まって遺産分割協議を行いました。

その際にある相続人から「遺産分割協議書を公正証書で作成した方が良い」と指摘を受けました。

遺言を公正証書で作成する事は良く聞くのですが、遺産分割協議書を公正証書で作成するなんて聞いた事がありません。

そもそも、遺産分割協議書を公正証書で作成する事は可能なのでしょうか?

また、遺産分割協議書を公正証書で作成した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?

1.公正証書の特長

公正証書とは、公証人法に基づき、公証人が私法上の契約や遺言等の権利義務に関する事実について作成した証書の事です。

公証人とは、裁判官・検察官・法務局長等、法律に関連する職業を永年勤めた方がなる事が出来る法律の専門家であり、準公務員です。

公正証書は契約や遺言などの一定の事項を公証人に証明させることにより、国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化・安定化を図る事を目的として作成され、一般の方が作成した書面と比べ、様々な特徴があります。

① 証拠力

公正証書は、法律のプロである公証人が、公正証書を作成したい当事者の本人確認や意思確認を行う事で、当事者の法律関係について法令違反が無いかを確認して、公正証書を作成します。

その為、一般の契約書等の書面より証拠力が高く、公正証書の内容について裁判で無効を主張する事が、非常に厳しくなっています。

また、公正証書は公証役場に原本が保管されますので、紛失の恐れが無く、偽造・変造もされにくいとされています。

② 執行力

本来、当事者の一方が法律上認められている権利を強制的に行使したい場合、裁判を行わなくてはいけないのが原則です。

しかし、金銭の支払いに関する法律関係について、例えば金銭消費貸借契約書を公正証書で作成し、かつ強制執行認諾条項が入っていれば、債務者の支払いが滞った時に裁判を行う事なく、強制執行を行う事が出来ます。

③ 確定日付の効力

公正証書には変更が出来ない確定した日付けが記載されていますので、その日にその文書が存在していた事を証明する事が出来ます。

上記の特徴から、遺言を公正証書で作成される事が良くあります。

紛失の恐れが無く、偽造・変造も防止でき、確定日付がある為、公正証書は遺言に最適なのです。

では、遺産分割協議書は公正証書で作成する事が出来るのでしょうか?

実は、遺産分割協議書も公正証書で作成する事が出来ます。

しかし、公正証書を作成するには、ある程度の手間と時間、お金がかかります。

その為、相続人間で特にもめていないのであれば、わざわざ公正証書にする必要は無いと思われますが、事情によっては遺産分割協議書を公正証書で作成した方が良い場合があります。

2.遺産分割協議書を公正証書で作成した方が良い場合

① 相続人間でもめていた場合

もとも相続人間でもめており、長い時間をかけてようやく話し合いが成立したのであれば、後日の蒸し返し(例えば、相続人の〇〇に強迫された、等)を防ぐため、証拠力がより高い公正証書で作成した方が良いかも知れません。

② 代償分割を行う場合

代償分割とは、相続人の一人が遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う、遺産分割の方法の一つです。

例えば、相続人Aさんが遺産である不動産を取得する代わりに、相続人Bさんに代償金を支払う約束をしたとします。

Aさんがきちんと代償金をBさんに支払えば良いのですが、色々と理由をつけて代償金を支払わなかったら、どうでしょうか?

代償金の支払いをしていないので、債務不履行により遺産分割協議を解除して・・・と言う事が出来ないか考えてしまいますが、判例上、遺産分割協議は成立と同時に終了しますので、解除の余地は無いと解されています(ただし、相続人全員による合意解除は可能です)。

Bさんの立場にたって見ると、その状況は非常に困ります。

では、代償分割を行った場、遺産分割協議書を公正証書で作成するとどうでしょうか。

ここで、上記の公正証書の特徴を思い出して下さい。公正証書には「執行力」があります。

つまり、強制執行認諾条項が入った遺産分割協議書を公正証書で作成していれば、BさんはAさんが代償金を支払わない場合、強制執行を行う事が出来るのです。

これは、Bさんにとって非常に便利ですし、Aさんにとっても相続した不動産に抵当権を設定されなくてすみます(その為、金融機関から不動産を担保に融資を受けやすくなります)。

3.番外編:遺産分割協議書は手書きでも良いのか?

少しお話しは変わりますが、たまに「別にもめているわけではないので、遺産分割協議書はキチンとした物ではなく、手書きでも良いですよね?」とご相談を承る事があります。

申し訳ございませんが、手書きの遺産分割協議書は百害あって一利なしです。

まず、遺産分割協議書に書くべき内容は多岐に渡ります。

被相続人の情報、遺産の種類、どの遺産をどの相続人が相続するのか・・・等、沢山の情報を記載する必要があります。

その為、これらの情報を手書きで正確に記載する為には、多くの時間がかかってしまいます。

さらに、遺産分割協議書は、相続手続きの為に銀行や法務局等に提示する書面です。

手書きで書いた場合、第三者の目からは文字が判別出来なかったり、その意味が不明になる事もあります。

そのような遺産分割協議書では、相続手続きを行う事は当然出来ません。

また、文字が判別出来なかったり、その意味が不明になる事で、後々相続人間でトラブルになる可能性も否定出来ないでしょう。

つまり、遺産分割協議書を手書きで作成すると言う事は、土砂降りの雨の中を新聞紙を傘にして歩くようなものです。

「もめないから」と言う理由で遺産分割協議書を安易に考える事は、大変危険なのです。

4.まとめ

このように、状況によっては手間と時間とお金をかけてでも、遺産分割協議書を公正証書で作成するメリットがある場合があります。

将来問題が発生する事が予測出来るのであれば、遺産分割協議書は公正証書で作成される事をお勧めします。

【本サイトでは、相続手続きや家族信託について網羅的に解説しています。今後のご参考にもなる情報でもありますので、よろしければブックマーク等を行い、後からでも閲覧できるようにする事をお勧めします。】

 

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この記事を書いた専門家

横浜市泉区の司法書士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から、自分らしい人生を送る為の認知症対策、相続対策をご提案します。元俳優/福岡県北九州市出身/梅ヶ枝餅、かしわめし弁当が大好き/趣味は講談/

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