相続で遺産分割協議書に実印を押してと突然言われた場合

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、遺産分割協議書に実印を押す事を突然迫られている事についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:私の父が亡くなり、あっと言う間に9ヶ月が経過したある日、父と同居していた兄から「相続の事で話しがある」と突然呼び出されました。

父が亡くなって今までそのような話はした事がなく、不審に思っていたのですが、自宅を訪ねてみると、兄と「相続コンサルタント」と名乗る人物がいました。

私が席につくと、兄は色々な書類を出してきて、「これに実印を押して、印鑑証明書を貰いたい」と突然言ってきました。

目の前の書類には「遺産分割協議書」と書かれており、父の財産を全て兄が相続する内容になっていました。

私は訳が分からず兄に説明を求めたのですが、相続コンサルタントを名乗る人物から「お父様は生前、自分の財産を全て兄に譲ると言っていた。この遺産分割協議書はお父様の意志を尊重して作られた物である。お父様もきっとお兄さんが財産を相続する事を望んでいるはず」と言ってきました。

私はその様な事は聞いた事はありませんでしたし、父は遺言も残していません。

その場は取りあえず考えると言って自宅を出たのですが、この場合、私は遺産分割協議書に実印を押すべきなのでしょうか?

A:現時点では実印を押すべきではないでしょう。

疑問点をきちんと説明してもらい、納得の上で実印を押すべきです。

1.遺産分割協議書と実印

ご家族の方が亡くなり、葬儀等が落ち着いたら相続人間で遺産分割協議を行います(だいたい、四十九日後が多いです)。

通常は相続人全員が集まって話し合ったり、全員が集まる事が難しい場合は個別に連絡を取り合い情報を共有の上、話し合いをまとめるのが一般的です。

しかし、中には事例のように相続人の中の一人が、他の相続人に対して何の前触れも無く、突然遺産分割協議書に実印を押す事を迫るケースがあります。

明らかに様々な思惑がある為、このような事を行っていると思うのですが、このようなケースでは、ご自分が納得しないのであれば、どんなに急かされてもすぐに実印を押すのは控えるべきです。

2.事例の検討

① 被相続人の死後、9ヶ月経過後に突然話しを持ちかけている

相続税の申告期限は、被相続人の死亡した日の翌日から10ヶ月以内です。

事例のように相続税申告期限のギリギリになって突然遺産分割協議を持ち出したと言う事は、考える時間を与えずに自分の有利な相続を行いたいと言う考えがあるのかも知れません。

② 遺言書が無い 

生前にどんなに「自分の財産を全て兄に譲る」と言っていても、その遺言書が無ければ兄の話に従う必要はありません。

③ 相続財産の調査をきちんと行ったのかが不明

兄側には、自称相続コンサルタントがいますが、この人物がきちんと相続財産の調査を行ったのが不明です。

上記以外にも様々な疑問点がありますので、その疑問点がきちんと納得出来るまで、遺産分割協議書に実印を押すのは控えるべきです。

3.まとめ -相続は財産だけの問題ではない-

もしかすると、お兄さんとしてみれば、父の思いを生前に聞いていたのでその通りの相続をしたかっただけかも知れません。

「父の気持ちは明らかなのだから、弟も納得してくれるはずだ」と。

だから早めに遺産分割協議を行わず、相続税申告ギリギリの時になったのかも知れません。

ですが、お兄さんは肝心な事を忘れていました。

それは、弟も相続人であり、一人の人間であると言う事です。

他の相続人の感情に配慮しない行動、態度は相続が「争族」になる典型的な例です。

相続は財産の事だけを話し合うのではなく、感情面の話しもきちんと行う必要があるのです。

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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