遺産分割協議で借金を放棄したけど・・・。

こんにちは。横浜・泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、相続した借金についてご相談されたい方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、非常に良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q.数ヶ月前に亡くなった父について、相続人全員で遺産分割協議を行いました。相続人は子どもである長男と次男である私の二人です。目ぼしい遺産は不動産しか無く、また父は生前、銀行から約1,000万円程の借金をしていた事が分かりました。二人で話し合い、遺産である不動産は長男が相続する、その代わり借金も長男が相続する事にしました。その後しばらくして私は銀行から父の借金の半額の返済を迫られました。その為、遺産分割協議で長男が借金を相続した事を伝えたのですが、それでも支払義務があると返済を迫られています。借金は放棄したはずなのに、どうして私は返済を迫られているのでしょうか?

A.被相続人の借金は原則として各相続人に法定相続割合で相続されます。遺産分割協議の合意内容は、相続人間では有効ですが、債権者に対してはその合意内容を対抗する事はできません。

 

1.相続債務は遺産分割協議の対象にはならない

相続が発生すると、原則的に被相続人が有していた権利や財産が相続人に引き継がれます。この『財産』については、不動産、預貯金のようなプラスの財産だけでは無く、借金等のマイナスの財産も含まれます。その為、遺産分割協議で相続人の中で借金を相続する者を決める事も良くあり、借金を相続しなかった他の相続人が安心しきっていたところに、債権者から突然「借金を返せ!」と迫られて混乱される相続人の方がいらっしゃいます。

なぜこのような事が起きるのかと言いますと、実は上述したとおり、被相続人の借金は判例上、原則として各相続人に法定相続割合で相続されるからです(最高裁判所昭和34年6月19日判決 )。つまり、被相続人の借金は遺産分割協議の対象とはならないのです。借金を相続人の一人に相続させる遺産分割協議の合意内容は、相続人間では有効ですが、債権者に対してはその合意内容を対抗する事はできません。

 

2.被相続人に借金がある場合の対応策

① 相続放棄

事例のように、全ての相続財産を相続人の一人に相続させる旨の合意が相続人全員で整っているのであれば、財産を相続しない相続人は家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行う事で、結果的に遺産分割協議の内容と同じ状況を作り出す事ができますし、借金の支払義務も免れる事ができます。

② 遺産分割協議の内容を債権者に承認してもらう

何らかの事情があり相続放棄ができない場合、相続人の一人が借金を相続する事について、債権者に事前、もしくは事後に承認してもらう事で、他の相続人の支払い義務を免れる事ができます。この場合、借金を支払う相続人の財産状況を明確にしておくと、債権者に承認をして貰いやすくなるでしょう。

③ 生前に債務整理を行う

生前に借金がある事が分かっているのであれば、債務整理を勧めるのも一つの方法です。

 

3.まとめ

上記は本当に間違えやすい部分ですのでご注意下さい。遺産分割協議で借金を相続する者を決めても、それはあくまで相続人間のみに有効な合意であって、債権者には対抗するにはその協議の内容を承認してもらう必要がある事は、是非頭の片隅にでも覚えていておいて下さい。
なお、上記の事例は遺産分割協議でしたが、遺言で借金の支払いを指定された場合も同様です。

 

 

【このブログの著者】

司法書士
甲斐 智也(かい ともや)
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