遺産分割協議がまとまらない場合の解決方法

遺産分割協議・調停

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、どうしても遺産分割協議がまとまらず、その解決方法についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

相続手続きの中で、一番大変なのが、被相続人が残した相続財産を、相続人間でどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」です。
 
TVドラマ等で遺産をめぐる相続人間のドロドロの紛争劇がテーマにされた物がありますが、実際に普通の家庭でも遺産分割協議がまとまらず、トラブルに発展する事は十分有り得ます。

事実、裁判所が発表している資料(司法統計)では、遺産分割調停や審判で年間1万件以上の申立てがあり、さらにその約75%は、遺産総額が5,000万円以下です。

さらに、1,000万円以下の遺産額でも約30%の割合となっています。

このように、「ウチは財産なんてないよ」と言っている普通の家族でも、十分に遺産相続をめぐる紛争へと発展しうるのです。

では、実際に遺産分割協議がまとまらない場合、どのようにしてその問題を解決すべきか、法律論やそれ以外の事も踏まえて解説していきたいと思います。

1.最終的には遺産分割調停や審判で解決出来るけど・・・。

結論から先に申し上げますと、どんなに遺産分割協議でもめたとしても、遺産分割調停や審判と言う裁判所を利用した手続きで、問題そのものは解決出来ます。

遺産分割調停は調停委員が相続人当事者の話を聞いて、調停案をまとめて相続人がそれに合意すれば問題解決です。

遺産分割調停で相続人の合意が成立しなくても、審判に移行すれば、裁判所が強敵的に遺産分割をしてくれます。

その為、遺産分割調停や審判を利用すると遺産分割協議がまとまらない、と言った問題は解決するのですが、それでは本当に問題は解決するのでしょうか・・・・?

遺産分割調停は当事者間の話し合いですが、実際には調停委員が対立している相続人の話を交互に聞いて、調停案をまとめる方法を取っている場合があります。

つまり、当事者双方が現実に話し合わない事もあり、結果として感情的なすれ違いが生まれる事もあります。

さらに、遺産分割調停に関する情報が氾濫しており、中には

「調停委員に良い印象を持ってもらい、調停を自分の有利なように進めましょう」

と言った事を指導している専門家もいる事から、話を非常にややこしくしているケースもあります。

なお、審判の場合は、個別の事情を考慮せずに、一般の民事事件と同様に法律による一刀両断な判断がされますので、相続人間の感情的対立が解決する事はまず無いと言っても良いでしょう。

このように、裁判所の手続きを利用すれば、「遺産分割協議がまとまらない」と言う問題は解決するのかも知れませんが、相続人間の関係性が修復される事は難しく、むしろ悪化する可能性もあるのです。

2.まずは冷静に話し合う為に、状況分析を

遺産分割調停や審判は最終的な手段と考え、まずは相続人間で冷静に話し合えるように状況分析しましょう。

「遺産分割協議がまとまらない」と言っても、その理由は様々だと思いますので、まずはその理由を明確にするのです。

① 遺産の分け方でもめている場合

例えば、寄与分に該当するとまではいかなくても、被相続人の身の回りの世話を常日頃から行っていた相続人がいた場合、具体的にどれぐらいの期間、どのような事を行っていたのかを明確にしてあげるべきです。

他の相続人の方も、例え寄与分に該当しないと言う理由だけで、それを頭から排除しないできちんとその思いを聞いてあげるべきです。

② 元々仲が悪く、人間性を否定している場合

「あいつが気にいらないから、あいつの提案はどんなモノでも否定する」と言うパターンです。子どもの頃のとあるきっかけで仲が悪くなった等、理由は様々あります。

このケースは遺産分割の内容がどのようになっていても、相手を否定する事が目的となっていますので、当事者同士で遺産分割協議をしてもまとまらない可能性が高いです。

そんな時は、相続人の事を良く知っている親族の方に、遺産分割協議に立ち会ってもらうのはどうでしょうか?

どこの家庭にも、必ず「世話好きのおじさん」はいるはずですので、その方に協力をお願いするのです。

ただし、話し合いはあくまで相続人同士で行う事。

「世話好きのおじさん」は話がそれたり、議論が平行線になった場合の調整のみを行い、話し合いに参加しない事が重要です。

③ 遺産の使い込みが指摘されている場合

特定の相続人が遺産の使い込みをした可能性があるケースです。

まずは、本当に使い込みがあったのかを客観的な証拠等をもとに検証する必要があり、本当に遺産の使い込みの事実があるのであれば、民事事件等で使い込んだ遺産の返還請求を行います。

3.まとめ

上述したとおり、遺産分割調停や審判を利用する事で「遺産分割協議がまとまらない」と言う問題は解決します。

しかし、それには時間が非常にかかりますし、弁護士を代理人に選任した場合、弁護士費用もかかります。

何よりその後の家族間の感情的なすれ違いにより、その関係性が修復不可能な状態に追い込まれる事もあります。

遺産分割協議はまずは他の親族や専門家を利用して、皆さんで納得出来るまでお話する事をお勧めします。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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