遺産分割協議で孫に遺産を相続させたい場合

遺産分割協議・調停

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、遺産分割協議において孫に遺産を相続させる方法についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:数か月前に他界した祖父の遺産分割協議についてご相談です。

父の遺産は不動産と預貯金があり、それを相続人である長女(私)と次女でどのように分けるか話し合いをしていました。

ところがある日、祖父が生前、「預貯金の内、1,000万円を孫(次女の息子)にあげたい」と言っていたのを思い出しました。

祖父が言っていた事ですので私は特に反対はありませんし、次女もそれについて同意しているので、1,000万円を孫にあげたいのですが、どのような手続きを行ったら良いのか分かりません。

祖父は遺言書を残していませんので、遺言書による手続きは出来ません。

また、孫は祖父の相続人ではない為、遺産分割協議を行うのも違う気がします。

遺産を孫に相続させたい場合、どのような方法があるのでしょうか?

1.相続人の確認

相続が発生した場合、相続人になれる者は民法で定められています(民法第887条、889条、890条)。

・第1順位 子供(子供がいない場合は孫)
・第2順位 父母、祖父母等、被相続人より上の世代の方
・第3順位 兄弟姉妹※配偶者は上記の第1順位~第3順位の相続人と同順位で常に相続人となります。

上記の条文から、子供が孫よりに先に亡くなっている場合は孫が相続人となりますが、それ以外の場合は孫は相続人にはなりません。

被相続人が遺言書を残していれば遺産を相続する事は可能ですが、そうでなければ、孫は遺産分割協議に参加する事は出来ませんので、原則として孫は遺産を相続する事は出来ません。

なお、子供が相続放棄をした場合は、相続する権利が第2順位の相続人に移動するだけですので、上記と同様、孫は遺産を相続する事は出来ません。

2.孫に遺産を相続させる方法

① 贈与を行う

相続人である長女、次女が全ての遺産を相続して、その中から孫に贈与を行う方法です。

被相続人の祖父の立場から見ると、正確には相続させた事にはならないのでスッキリしないかも知れませんが、結果的には孫に遺産を残す事が出来ます。

なお、通常の贈与と変わりませんので、贈与税の対象になる事に注意が必要です。

② 相続分の譲渡を行う

相続分の譲渡とは、相続人が自己の相続分の全部(もしくは一部)を、他の相続人や第三者に譲渡する事です

相続分を譲渡した人は、相続分を譲渡された人は、相続人と同様の相続権を有するメリットがあります。

事例の場合ですと、長女や次女が自己の相続分を孫に譲渡する事で、孫が遺産分割協議に参加出来る事になり、遺産をそのまま取得する事が出来ます。

この方法であれば被相続人の遺志にも合致すると思います。

ただし、この場合も孫に税金が発生する事に注意が必要です。

(無償で相続分の譲渡を第三者に対して行った場合は、譲受人に贈与税がかかります。有償で相続分の譲渡を行った場合は、譲渡人に対して譲渡所得税がかかります。)

③ 相続分の譲渡の方法

特に法律上の形式はありませんが、その後の不動産や預金の相続手続きにおいて、相続分の譲渡が行われた証拠が求められます。

その為、相続分譲渡の証明書を作成する事が一般的です。

3.まとめ

相続人以外の者へ相続分を譲渡する場合、贈与税等の問題が発生します。

そうすると贈与と相続分の譲渡、どちらを選択してもあまり違いがないように感じられます。

しかし、例えば不動産の相続の場合、相続人へ相続登記を行った後に、相続人以外の者に対して贈与による所有権移転登記を行えば、登録免許税を2回納付する必要があります。

さらに贈与による登録免許税は相続よりも高くなります。

そうであれば、相続登記を1回納付すれば良い相続分の譲渡を行う事も検討する必要があるかも知れません。

このように相続手続きにおいては、トータル的に考えてどの選択肢がベストなのかを意識する事が重要になります。

遺産分割協議や相続分の譲渡の事でお困り、お悩みの場合はお気軽に当事務所にご相談下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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